2009年08月31日

外国人による外国人のための「日本のゲーム業界で働く方法」 その3

続きでございます。

プラチナ・ゲームズに移る前、Jean Pierre Kellamsのキャリアはカプコンから始まる。そこで彼は、『ゴッドハンド』、『モンスターハンター』、『逆転裁判2』といったタイトルのローカライズに関わっていた。また、『バイオニック コマンドー』の初期ストーリーや脚本草案も担当した。プラチナ・ゲームズに参加してからは、『Mad World』(訳注:国内未発売)の脚本や編集、『ベヨネッタ』のローカライズが彼の仕事である。

彼のアドバイスはこうだ。


ゴッドハンド PlayStation 2 the Best 逆転裁判2 NEW Best Price!2000 BAYONETTA(ベヨネッタ) 特典 スペシャルサウンドトラック「RODIN'S SELECTION」付き


日本(語)は、「なるべくなら」というものではない。

日本にいるのなら、日本語を話せ。最初の一歩を踏み出そうとしているなら、日本人の条件に合わせて、日本の会社とコンタクトを取り、交流ができる環境を自身で作る必要がある。日本語を話せて、日本在住であれば、これは大変に役立つ。

より一生懸命、より良く、より速く、より強く働くこと。

日本の会社にとって、キミを雇うことは、特にキミが日本国外在住の場合、尋常ではない苦労がつきまとう。開発会社に就職するためには、何度も面接と試験を受けたうえに、ビザを取らねばならない。未取得の場合、キミがビザ取得にふさわしい人物であることを証明してくれる書類仕事に何ヶ月もかかるのだ。

このことを心に留めて、会社に対して何を頼めるのか、現実的に考えねばならない。会社がキミのために余分な努力をしなければならないということは、キミが、もっと楽に雇える誰かより明らかに秀でた人物でなければならないということだ。日本人は、常軌を逸した仕事好きだし、それに負けぬほど才能のある人々だ。確かに、キミの文化的な背景のおかげで、美学的にも技術的にも言語的にも、物事を違った面から洞察できるかもしれないというのは、キミの有利な点かもしれない。だが、似たような日本人の応募者よりもっと良い、あるいは同等のスキルで、この有利な点を補完する必要がある。究極、会社がキミを雇うために、しなくてもいい作業とリスクを負うだけの価値がある人材でなくてはならないのだ。

(これには例外がある。高レベルのプログラマーだ。リサーチや新技術の多くが西欧で進められたり、開発されているため、日本の会社は、いかなるマイナス点があろうとも、第一線の西欧のプログラマーにはより広く門戸を開けている。給与体系が異なるので、日本の産業全体として、西欧の才能あるプログラマーを惹きつけることにどれだけ成功しているのかはわからないが、日本の会社はおそらく、もっとスキルの高い、経験のあるプログラマーを、他のどんな職種より求めている。)

人生は、キミの期待通りには行かない。

日本に住むのならば、常に心に留めておかねばならない、ちょっとした暗黙の了解がある。キミのパスポートの国籍がどこであろうと、どれほど人々や国や言葉を知っていようと、キミは日本人には決してなれないということだ。本屋へ言っても、キミの母国語の本はさほど買えないだろうし、買い物へ行けば、店員がキミに接客できるのか迷う気まずい瞬間がいつもある(キミがアジア人に見えるのに日本語が話せない場合は、彼らがそのことに気づいた瞬間の気まずさ)。キミが自身のことを「違う」と感じていようといまいと、最初の「相違点」はオフィスの会話から始まるだろう。

これは悪いことではない。いろいろな意味で、新体験という生き生きとした興奮に繋がることだ。けれども、当時に、精神的にうんざりとさせられもする。その言葉が持つあらゆる意味において、キミが「アウェイ」であることを処理できなければ、おそらく、ここでは物事は進まない。

応募にオタクであることは必要ない。

できるかぎり日本人らしくあれば、日本での就職には良いだろうと考える人は多い。だが、ちがう。

キミがどんなにアニメ、JPOP、日本映画等々を愛していても、キミよりもっと知識のある日本人がいる。これは常識だ。彼らは、そうしたものに囲まれて、父母や祖父母の文化的影響を吸収しながら育ってきたのだ。

キミの第一のセールス・ポイントが、文化や知識の架け橋となり、似たような背景の人々でいっぱいの部屋に新鮮な風を送り込むことだというなら、キミがやるべきことは『ナルト』の膨大な知識をもつことだとか、アニメ風のデザインでいっぱいのファイルを見せることではない。商品の背景が違えば人々の反応はどう違うのかを知ることであり、様々な影響や変動を示すファイルをもつことなのだ。

違いを大事にし、溶け込むことに努力すること。

キミは、違っていることを期待されると同時に、同じであることも期待されるだろう。背景が違うために、若干の自由は許されるかもしれないが、一般的には、日本人社員に望まれていることは、キミにも望まれる。ときに「間違っている」と思われるエチケットやルールの混乱は、「きちんと」しなければならない。会議で書類を配る順番だとか、備品を買うのに何枚の書類が必要かとか、謝罪の際のマナーですら(直接、尋ねられない限り、何が失敗の原因だったのか説明してはいけない。ただ、謝ること)、キミの先輩の文化に基づいたやり方に沿わねばならないだろう。

けれども、キミは同時に違いも大事にしなければならない。キミは日本人ではないし、それが彼らがキミに求めているものでもあるのだ。恐れずに、違った視点から意見を言おう。ただ日本以外の国々を代表して意見を言うふりをするということではない。彼らはキミが日本人ではないと知って雇っている。だから、キミの文化的アイデンティティの要素を大事にしなければいけないということなのだ。●


Dylan Cuthberthは、京都にある開発会社、キュー・ゲームズの創立者である。最も知られているのは、PSN(Play Station Network)のゲーム、『PixelJunk』だろう。Cuthberthは1989年にゲーム業界に入り、Argonaut Software(訳注:イギリスのゲーム制作会社。『ハリー・ポッターと賢者の石』、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』等)に参加した。のちに、日本の京都で『スターフォックス』、『スターフォックスII』といったタイトルで仕事をし、1990年代には、米国SCE、日本SCEの双方で主任プログラマーを務めて、PS2の『サルゲッチュ』を制作している。

彼のアドバイスはこうだ。


ハリー・ポッターと賢者の石 (Playstation2) ハリー・ポッターと秘密の部屋 (GameCube) スターフォックスコマンド サルゲッチュ サルサル大作戦 PSP the Best


くつろいだ時間を地元の人たちと。

進んで日本人のスタッフたちと出かけよう。彼らと飲みに行き、夕食を食べ、彼らと親友になるんだ。これは、最も重要なコツの一つだ。海を渡ってやってきたのに、特に、相互理解という面では、境界線を引くかのようにガイジンの友達に執着する人があまりに多い。

日本語を覚えろ!

言い訳は効かない。インターネットには山のような助けがあるんだ。しかも、多くは無料とくる。ネット時代の前に比べれば、昨今、日本語を習うのはとても容易い。

日本語を話せ!

できるときはいつでも、日本語を話して、話して、話すんだ。そうすれば、酔っ払ったとき、流暢に日本語を話してる自分に気づくはずだ!

心を開こう。

日本文化は、西欧の人間にとってはとても難しい。しかも、一見したところでは、はっきりわからないような、小さなささいな事で難しいことがたくさんある。日本人ははっきりとものを言わないと言われているが、カジュアル・ゲームの開発現場では、これはちがう(仕事上の話し合いにおいてだけだが)。日本語というのは、決定的に直截的であるということでは最高位に位置する。日本語ならたった一言で表せる感情が、英語だと文章になってしまうことがよくある。

比べてばかりいるな。

なんでも西欧のようにやるべきだと不平を言うな。このトラップにはまるガイジンは多い。日本には多くのクールなものあるし、驚くほどユニークな文化がある。これは、西欧のようじゃないから、なのだ。常に、バランスを心がけよう。僕は、同じことを日本からアメリカへ行って働き、日本のやり方とちがうと嘆いていた人にも言ったことがある。国や文化は様々だ。均質な世界などない。そんなものは、あったってつまらないだろ。●


この記事をプリントアウトしておこう。ブックマークして、記憶させて、セーブしておこう。

たぶん、旅立つキミの役に立つし、到着してからもキミの日々の助けになるだろう。これを読んでおけば、痛い目に遭わずにドアをこじ開けられるってものだ。

働くことはきつい。海外で働くことはもっときつい。違う言語と取っ組み合い、違う文化がそこにある。だが、そこへ飛び込み、がんばり、長期間滞在しようという人たちにとっては、新しい方向へ自分を押し出すという個人的充足感があるだろう。

海外で働こうと決めている人たち(ゲーム業界でもその他の分野でも)、なによりもキミたちは、日本について学んではいない。それどころか、母国のことも、そうして、キミ自身のことも、だ。



あらかじめ調整したわけではもちろんないでしょうけれど、ほぼ同方向の内容になっているのが面白いなあと思いました。日本語を話す。日本に住む。日本の慣習を受け入れる。日本人と友達になる。……郷に入って郷に従いつつ、自分にしかできない仕事を目指す。どう考えても、母国で仕事をしたほうがスムーズだろうと思うのですが、あえて苦労を選んだ原動力がたぶん「夢」というものなんでしょうなあ。

明日は、この記事についたコメントをお送りします。……長文コメントが大変、多いです。



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2009年08月29日

外国人による外国人のための「日本のゲーム業界で働く方法」 その2

昨日から引き続き、参りたいと思います。では、早速。


言語も多様化しているなら、制作や娯楽も多様化している。ウェールズ生まれのDewi Tannerは、七音社(『パラッパラッパー』や『ウンジャマ・ラミー』の松浦雅也の制作会社)の急速な国際化をなんとかするために助っ人として2007年にここへ着いた。『Musika』(訳注:iPod用ゲーム)と『メジャマジ・マーチ』を海外の発売元を通じて、滞りなくリリースさせた後、Tannerは、七音社でゲーム開発のディレクターの職を引き受けた。そこで、彼はゲーム開発のすべての面を監督している。コンセプトの原案作りから、資金調達、管理、宣伝まで、すべてだ。

彼の助言はこれだ。

パラッパラッパー パラッパラッパー2 PlayStation 2 the Best ウンジャマ・ラミー メジャマジ・マーチ


期待しすぎるな。現実的になれ。

最近、日本の会社は多くの社員をリストラしているってのに、キミを雇うだ?

キミが、社員候補としてアピールできるもののリストを作ってみてくれ。それと、見栄えのしない部分は何なのかも意識してみてくれ。グローバリゼイションや海外売上の活性化に焦点を合わせるような美辞麗句を煽る会社は多いけれど、それが日本での外国人の雇用を増やす証拠などほとんどない。多くの人事担当者にとって、外国人からの履歴書など厄介事と同義語だ。キミがそうした厄介事を減らしてくれるなら、そのほうが良いに決まってる。

古典的な、この厄介事の例をあげようか。

「キミは日本にいるわけではない。それで、キミは彼らにキミのビザの申請を手伝ってくれと頼む」。
キミが経験者で、スキルがあり、かつまた日本語が話せる開発者でない限り、キミのビザ取得を手伝ってくれる日本のゲーム制作会社があるなどと考えることすら、やめてもらいたい。それと、旅行ビザで就職活動に来るのもやめてくれ。教師ビザならまだましだろうね。英会話学校が喜んでビザをほどこしてくれるだろうから。
キミが日本に定住しているなら、それならここで周りを見渡そうか。住んでる場所が東京の下町に近ければ近いほど良い!

「キミは日本語がほとんどか、まったく話せない。流暢に話せるようになる予定ではあるけれども」。
ゲーム業界は、多くの金がかかったプロの世界だ。堪能な英語を話せる日本人はほとんどいないし、学ぶ気はない。

この2つの要素を考え合わせれば、ここに大きな意思疎通の危機があるのがわかるはずだ。信じてくれ。少なくとも、現状を90%は理解していなければ、この危機は起こるんだ。

周りがすべて日本という環境の中で2年は働いた経験があることが理想。これがなければ、日本語検定のレベル2の認定。それにくわえて、多少日本を旅行をした経験があれば助けになる。

プロのように応募すること。

履歴書を英文のメールに添付して送っても(それが翻訳されたものであっても)、おそらくキミは無視されるだろう。簡潔な履歴書、標準形式の雇用履歴(これにはテンプレートがある)、それに、きちんとした敬語のメールがあればこれは必ず役立つ。

謙虚で、大人で、学ぶことに前向きであること。

日本で就職活動をすることは、実際に日本で働くことと同じぐらいに、長々と続くし、フラストレーションがたまる。日本のビジネス文化と西欧のビジネス文化は、いろいろな場所で不協和音を奏でている。キミが日本を「現代化」したいとどれほど思っていようとも、物事はここでだってそうそうすぐには変わりゃしない。だから、ほとんどの場合、キミは笑って耐えるよりなくなるだろう。仕事に情熱を失うことなく、口を閉じるときを知ることだ。忍耐、尊敬、そうして不平を言わないこと。これは、情熱や、諦めないこと、そうして個人主義といった西欧のビジネス的美徳よりもっと価値があることなんだ。こうした対照的なスタイルを扱える内部バッファを頭の中に作れれば、将来、日本の会社と取引するときに必ず役に立つはずだ。キミが、(訳注:上記の、定住やビザ、日本語能力に加えて)すでにこういう外交的スキルをもっているなら、なお良いね。

老練なスナイパーのように応募書類をターゲットにしろ。

ここまでやったらあとは、ぜひ、ゲーム会社のサイトを見て、キミのスキルに合ってると思われる職務に応募してみてくれ。中には、はっきりと英語が流暢であることを採用条件にしている会社があるはずだ。履歴書を微調整して、その職務にいかに自分がふさわしいかをアピールするメールを添える。それに、キミを採用したくなるような役立つことを書くんだ(日本在住であること、労働ビザをもっていること、日本語が話せることなど)。それから、キミが会社をリスペクトしていることもね。小さい会社なら、たとえ募集広告を出していなくても、怖がらずに直接、応募すること。彼らには、大きい会社より断然、リスクを冒す心意気があるってわかるはずだよ。大会社は、しばしば外人スタッフを海外支社から引っ張ってくるぐらいだからね。

何を知ってるかじゃない、誰を知ってるか、だ。

個人的な推薦があれば、ここでは大変役に立つ。GDC(訳注:ゲームデベロッパーズカンファレンス。ゲーム開発者が集まる米国の大規模なイベント)で日本人の開発者に会って、連絡を取り合う努力をしてみよう。彼らの会議や講演が終わったら、自己紹介するんだ。名刺を交換した後、2、3日したら、フォローする簡単なメールを送ろう。ゲーム業界内の誰かを知っていれば、事は大幅に楽に進むものだ。



次回が長くなりそうなので、本日はここまでで。

こちらのかたは昨日のかたとは逆の立場で、海外からの応募の窓口として苦労なされているのかもしれません。とはいえ、最初は厳しい言葉を連ねつつ、最後には非常に丁寧な日本就職ガイドになっているあたり、良い方なんだろうなあと想像してみたりいたしました。

この特集、あと、お二人分のアドバイスが控えています。
お一人はカプコンからプラチナ・ゲームズに移ったJean Pierre Kellams(予測ですが、おそらくCLOVERスタジオがカプコンに閉鎖された際、独立された主要スタッフとともに移籍されたのではないでしょうか。このあたりの事情はこちらのエントリで)。もうひとかたは、米国SCE、日本SCEを経て、キュー・ゲームズ(今年初めて東京ゲームショウに出展。オンライン配信ゲーム『PixelJunk モンスターズ』でIGNのベスト・プレイステーション・ストア・ゲーム賞を受賞)を設立されたDylan Cuthbert。

日曜を挟んで月曜日にお届けいたします。



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↓プラチナ・ゲームズの今年のリリース作品。と、PS版とWii版(10/15発売)の『大神』。『FF XIII』の前に『ベヨネッタ』(10.29発売)でPS3を買おうかなあと思っております。『ベヨネッタ』もWii版『大神』も、発売になったら海外記事をご紹介いたす予定。

   
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2009年08月28日

外国人による外国人のための「日本のゲーム業界で働く方法」 その1

以前、知り合いのアメリカ人に「どうしてそんなに日本に来たかったの?」と尋ねたら、「子供の頃、ファミコンいっつもやってて、ずっと日本に行きたいって思ってたから」と笑っていました。半分、冗談にしろ、日本のポップ・カルチャーの影響力というのは凄いもんです。しかも、偏見のない子供の脳みそに有無を言わさず憧れを刷り込むっていうのは、考えようによってはえらい戦略だなあ、と。

今回の記事は、大変、面白く私は読みました。少し感動すらしてしまいました。

書き手のかたがたがこなれてらっしゃいますし(異文化の土地で働いているだけに、相手にものを語り、理解させるのが大変巧いかたがたばかりです)、ともすれば夢想的な話題を非常に現実的な観点から語っているのも興味深く、同時に説得力もございます。

今日から数日間は、「日本に行きたい」、「日本で働きたい」という外国人に向けて、実際に日本で働く外国人たちが語った「日本のゲーム業界で働く方法」です。全3回の予定でございます。


日本のゲーム業界で働きたい? なら、これが方法だ。

もうしょっちゅうあることなんだ。メールを開くたびに何度も何度も、この質問。真正面からこう来る。「日本のゲーム業界でどうやったら働けますか?」

はあ…、知らんよ。僕はゲーム業界で働いているわけじゃなくて、むしろゲーム業界を取材してるんだから。そういうことを僕に尋ねたいなら、そうすればいい。はい、始め!僕は拝聴はするし、メールも公表してあるからね。で、そうじゃない他の人は、これを読んでくれ。

ここ日本のゲーム業界で働いている4人の西欧人に、この「日の出ずる国」で働くことへのアドバイスを聞いてきた。彼らには、ローカライズからプログラム管理とやりとりすることまで、さまざまなスキルがある。でも、一番大事なことは、彼らは経験者だってことだ。…そうして、その経験を僕ばかりじゃなく、キミたちとも共有してくれるほど寛大だ。ホントになんて親切なんだろう。

もしキミが一度でも日本で働きたいと思ったことがあるなら、ここには珠玉の言葉がある。ゲーム制作に興味がないとしても、たぶん、そうたぶん、他の国(日本ですらなくてもいい!)に住みたいと考えているなら、似たようなものだ。ここには、旅立つキミに役立つヒントがある。

さて、始めよう。


以前は、テクモの『Team Ninja』部門に所属、板垣伴信(訳注:『デッド オア アライブ』、『Ninja Gaiden』のプロデューサー。テクモとセクハラ問題、成功報酬の未払いなどを巡って裁判。退社の際は、『Team Ninja』の主要スタッフの大量退社を引き起こした。詳細はこちらで)の副官だったAndrew Szymanski。彼は、『デッド オア アライブ』と『Ninja Gaiden』シリーズ9作の制作から管理に至るまですべてにクレジットされている。現在は、東京でゲームの制作やプロダクションに関するコンサルタントをフリーランスで行なっている。日本の開発者や発売元に、海外で成功するにはどうしたらいいのかを助言するという責任を背負ってきた、彼の6年以上の経験を話してもらった。

これが彼からのアドバイスだ。

デッド オア アライブ 4 Xbox 360 プラチナコレクション デッド オア アライブ エクストリーム2 Xbox 360 プラチナコレクション NINJA GAIDEN Σ(ニンジャ ガイデン シグマ) PLAYSTATION 3 the Best


記憶に残る人間であれ。

ゲーム開発者というのはユニークな人々だ。どんな仕事に就くにしても忘れがたい人間であることは重要なのは言うまでもないけれど、特別、この業界では大切だ。面接が先に進めば、経営陣や制作側の責任者と顔を突き合わせることになるだろう。キミは、彼らに「こいつといっしょにやりたいな」と思わせなきゃならないし、自分が訴えたいことに耳を傾けてもらわなきゃいけない。

ここ東京で大学生だった頃、僕は、日本の就職活動シーズン真っ盛りのときにテクモに応募して、会社説明会に参加した。ダークスーツの200〜300人の日本人の就職希望者の海で、僕はたった一人の青いスーツのアメリカ人だった。休憩時間に、僕は社長のところまで行って、単刀直入にこう言ったんだ。「私は日本でゲームが作りたいんです」。その後、形式ばかりの2度の面接を経て、僕は入社した。知っている限りでは、伝統的な就職活動でこの業界に就職した数少ない例(まったくないわけではない)の一人だと思う。

すべての人ができる方法ではないかもしれない。けれど、自分を目立たせるやり方は必ずある。まず服装をはっきりさせよう(もちろん、不適切な格好じゃだめだ)。話は面白く。忘れがたい人生の経験を話そう。僕の場合、今になってもまだ、いっしょに働いているチームの人たちに言われてしまうことがある。それは僕の応募書類のことだ。僕は、自分が子供の頃、頭に黒い布を巻いて、ボール紙で手裏剣を作って、忍者として家の周りを走り回っていたことを書いた。印象に残るような自分自身のことを仕事に結びつける方法を見つけるんだ。そうすれば、彼らはキミを必ず覚えていてくれるだろうから。

必要とされる人間であれ。

まだこれを十分に強調できてないね。つまり、「これはキミにしかできないんだ」ってことをわかってもらわなきゃならないってことだ。

5〜10年ほど前なら、単に日本語を話せて、ゲームに興味がありさえすれば、簡単に仕事に就けたっていう事実もあるぐらいだ。今だって言語能力は重要だし(日本語の読み書きが相当に出来ることは期待されるだろう)、開発者が望む基本的なスキルと能力を持っていることも極めて重要だ。ゲーム業界が未経験であったとしても、自分に何ができるかを、平易にわかりやすく伝える方法を探さなきゃいけない。

絵を描くのは好きかい? なら、スケッチブックのファイルや3D画像を持って行こう。開発者はいつだって良いアーティストを探している。ゲーム制作をやりたい? なら、いくつかコンセプトやゲームのアイディアを見せるか、会社の既存のゲームが「こうだったらどうだったか?」っていうシナリオを見せよう。「『ロスト・プラネットのRTS(リアル・タイム・ストラテジー)』、私バージョンです」ってな具合に。管理側の経験がある? なら、計画や予算の効率的な管理について意見を交わそう。

キミの売り物がこうしたものから多少外れていたとしても、メール通信や開発者のブログで頼りになるやつというだけでなく、チーム内でキミが育てば必要な役割を担えるってことをアピールはできるはずだ。そうして、キミに知識があり、やる気があり、言語能力があり、成長する潜在的可能性があると証明できれば、ゲーム業界の海外マーケティングとアウトソーシングの世界でひときわ目立つ候補になれるだろう。

就職したらしたで、成長しつづけ、自分が必要な人材なのだとわからせよう。他の誰にもできないことができ、自分だけの隙間分野を開拓しているのだとわかってもらえれば、キミの「必要性」は高まっていくし、それによって、チームの中での地位も責任もいっそう大きくなっていく。

柔軟であれ。

幸運にも僕は10作品を越えるA級タイトルで、十分に重要な役割を担ってきた。でも、行き詰まったり、却下されたり、キャンセルされたプロジェクトにだって関わってきた。目を見開いてこれを読んで、肝に銘じてほしい。キミにどれほどのスキルがあろうともだ、キミは初めから、数百万ドルのプロジェクトを担当する一線のデザイナーでもプロデューサーでもないんだ。

おそらく、キミの最初の仕事は、2番手か3番手のDSのタイトルだろう。そうでなければ、 XBLA(訳注:Xbox Live Arcade。Xboxのダウンロードゲーム)か PSN(訳注:Play Station Network。PS3やPSPのオンラインサービス)のゲームだ。こうした仕事を受け入れよう。小さなチームで働くことは、信じられないほどの実りとなって返ってくるから。それに、「このゲームのメカニックは全部、オレだよ」とか「このステージのバッググラウンドは全部、オレがデザインしたんだ」って言うほうが、満足度は高いはずだ。最初から大きなチームで働くとよくありがちな「敵のヒットポイント値をやったよ」とか「このステージの木は全部、オレ」なんて言うよりもね。

たぶん、この業界の人々は「真の」超A級タイトルなんかで仕事をしたことはない人がほとんどだろう。けれど、だからといって、彼らが素晴らしいゲームを作ってないとか、仕事を楽しんでやってないなんてことにはならないんだ。

チームの大きさが100人を超えるようなところで埋もれて、頭打ちになったとしても、それでもなおキミは柔軟でいなきゃいけない。

僕は、無数のアイディアを却下されてきた。ゲームまるごとのコンセプトを否定されたり、数ヶ月かかって作った制作書類が、作品のテーマが変わったっていう理由で瞬く間に消え去ったり。忘れないでほしい。ゲームはビジネスなんだ。キミはあるいは世界で最も素晴らしいアイディアとキャラクター・デザインをもってるかもしれない。けれど、市場がそれを好しとしないのならば、計画が進むことはないんだ。

キミが「最高」だと思っているもの(あるいは、キミが必ずこれだったらプレイすると決めているもの)を作ることがすべてじゃないってことだ。売れるだろうもの、実際、よく売れているものを作るって話なんだ。若いチームのスタッフが、「上はわかってない」とか「オレたちのアイディアが入ってたら、間違いなく100倍良くなったのに」ってぼやくのなんて、僕は数えきれないほど聞いてきた。経営陣とともに作品の明確な方向性を決め、ゲームの内容がその方向性と一致しているかどうか確認するのが、制作監督(あるいは、プロデューサー)の仕事なんだよ。

チームが大きくなればなるほど、個々の妥協が必要とされていく。冷静に受け止めることを学ぼう。そうすれば、ビジネスの大きな構図が見えてくるだろうから。

タフであれ。

これは簡単そうで、実行するのはむずかしい。キミは、精神的にも肉体的にも強くなって、ここ日本でのゲーム開発という仕事の厳しさに耐えねばならない。日本語には「過労死」って言葉があるぐらいだ。普通のサラリーマンだって多くが深夜近くになるまで家には帰らない。

開発チームは世界中どこでも、「試練の時」と呼ばれるものを経験する。ゲームの発売直前、チーム全員が、ゲームを仕上げ、最後に残ったバグを解決するために全力を振り絞る検査の時期だ。

とはいえ、日本人の開発者の中には、そうした試練のバカバカしさを芸術形式にまで高めることをゴールにしていたような人すらいる。明らかなのは、これはチームによっても、作品によっても違ってくるということだ。僕は以前、2つの作品で半年に及ぶ試練を経験した。その6ヶ月間は、人と遊ぶ時間もなく、自由時間もなく、愛する人たちといっしょにいる時間も限られ、そうして、連続5日間も会社で寝泊まりしたために、アパートの中がどうなっているのかすら忘れるほどの長い時間だった。

僕はこうした慣習をもちろん容認はしないけれど、…実際、できるだけこの試練を軽減することを目標にしている。こうしたことは、日本のチームに限ったことではない。人生の1つの事実としてキミが受け入れなきゃならないことなんだ。順応することを覚えよう。同僚を親友にするんだ(そうなるはずだ)。だって、テストやデバッグで、たくさんの長い夜をいっしょに過ごしてくれるのはキミの同僚だけなんだから。1ヶ月間は日々の生活(食事、仕事、睡眠)をすべて、会社のデスクでできるようにしよう。そうすれば、キミはその先へ進める。

もちろん、精神的に図太くなることも覚えよう。最初は、失敗が発覚したり、キミのアイディアやデザインが却下されると、自信を失ってしまうだろう。

けれど、これは誰しもに起こることだということを知ろう。自分だけのことだと思わないように。
日本人の開発者たちは、ほとんどの場合、チームのスタッフとは非常に厳格に線引きをしたつきあい方をする。これは彼らが親切じゃないせいではないし(彼らが親切なのはじきにわかる)、キミに辛く当たろうとしているのでもない。むしろ、これは、徒弟制度の流れで、つきあいかたを体系化しているわけで、ものを作る世界で長く続いてきた伝統の一部だ。

だから、主任デザイナーが、キミが最高だと信じるゲーム・メカニックを書き綴った書類を取り上げ、そのままゴミ箱に放り捨てたり(そう、僕は今、自分の体験について話してる)、アート・ディレクターに、キャラクターのスニーカーの靴ひもの穴の輝きが完全じゃないという理由で、100回、描き直しをさせられても、だ。こうしたことは、彼らが本当に、キミが学び、そうして結果としてより良くなっていくことを信じているからやっているんだということを理解しなきゃいけない。逆境に耐えれば、そうそう簡単には壊れない友情と仲間意識の絆で結ばれた、素晴らしい師匠を得られるかもしれないのだ。

辛抱強くあれ。

最後に。特に、忍耐だ。物事は常に、キミが望むほどさっさとは動かないということを悟らなきゃならない。この助言は、事の大小は問わない。

小さいことで言えば、キミはきっと、自分の意見がどうして思ったほどの反応を得られないのかと疑問に思うだろう。特に、キミがチームに入ったばかりだとか、プロジェクトがまだ初期段階のときだ。凄いアイディアやデザインなのに見向きもされないと、(正当な理由をもって)感じるかもしれない。

僕はすでに、チームにとって必要不可欠な人間になれということは語った。自分にしかできない隙間分野を作り、チームのメンバーの信頼と尊敬を勝ち取れと。こうしたことは、どれも時間がかかる。日本的言い回しをすると、ほとんどの日本の開発者は、「広く浅い」つきあいより「狭く深い」つきあいを好む。言い換えれば、平均的に彼らは、より少数の個人とつながろうとする。けれど、彼らがそうするとき、その関係は深く強い。

自分の職務をやり抜き、打ち込み、それが妥当だろうがどうだろうが批判を受け入れ、自分がチームと協調していることを皆に示せば、キミは、自分の意見やアイディアが最終的には、周りの人たちから一目を置かれるようになることを知るはずだ。

大きなことで言えば、キミは最初は、プロジェクトをいくつ経験しても、望んでいたほど昇進はしないかもしれないと理解しよう。日本の会社は出世が難しいことで悪名高い。チームのリーダーに、キミが上の地位にふさわしいと納得させるには、山ほどの激務と偉大な実績がいるだろう。

キミはそれでも当然、肩書きの変更も昇給もないまま、仕事の責任だけ増やされ、こうしたハードルを乗り越えていくことを学ばねばならない。まるで、海外のある会社の制作者たちを今なお妨げている「見えない壁」に打ち勝たなきゃいけないみたいに。

キミはそこで、作品に対する自分の貢献は桁外れだし、制作の過程でもっと重んじられる価値があると思うかもしれない。だというのに、次のプロジェクトが始まっても、キミはやはり似たようなポジションにいるかもしれないのだ。このことに驚いてはいけない。

ただ、これだけはわかってほしい。もしキミが選んだチームが間違っていなければ、誰かがキミの努力を静かに見守っているし、注意を払っていることだけは僕が保証しよう。チーム内で反応も得られず、役割が将来は大きなものになるという囁きもないとしても、それは確実に時間とともにやってくるのだ。そうして、そのときの気分は最高だ。なぜなら、キミはそれを真に自分の力で勝ち取ったのだから。



ご苦労なさったようです。けれど、読んでいるだけで、なぜこのかたが日本という異国で働いてこれたのかがよくわかりました。内容ももちろん、さることながら、偉そうな物言いになってしまうのですが、……このかた、斜め読みしても理解できるぐらい、素晴らしくわかりやすい文章をお書きになる。平易で要点をつかんでる。コミュニケーション能力の高そうなかたです。

ついでに、明らかにここに書かれているのは、板垣伴信のことかと思われます。厳しいかたのようですが、信頼されてますなあ…。



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長めの記事は、2日に分けたほうがいいですかね。一回で読めたほうがいいかなと思い、こうしてますが、あまりにビロビロ長いと読む気をなくされるかたもいるかなあ、と…。


   
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