2009年10月21日

海外記事- Xbox360と日本の愛国主義 -

本日のエントリは、「Xbox360が日本で売れないのは、日本の愛国主義のせいだ!」という海外ゲームサイトでは今でも目にする「珍説」に関する記事です(Xboxの日本での不振が決定的になっていた、この記事の掲載当時(2006年)は、ほぼ「定説」のようにあらゆる海外ゲームサイトで言われていました)。

題しまして、Xbox360と日本のナショナリズム。

タイトルは堅苦しいですが、読みやすい記事なので茶でも飲みながらどうぞ。ちなみに、ライターのVinnkさんは九州で高校の先生をされている米国人ゲームライターです。


最近、日本でのXbox360の失敗を報じる記事がたくさん出回ってる。こうした報告は、確かに真実だ。日本史上最弱のゲーム機の1つとして、これより下はたぶん、Atari Jaguar(訳注:1993年発売。この失敗を機にアタリはハードウェア事業から撤退。以後、迷走)ぐらいしかない。

僕が住む街では、Xbox360を店に置いているゲーム店は1軒しかない。その店はマイクロソフトから発売時に12台の360を納入されたが、発売日に売れたのはたった1台だった。しかも、買ったのは従業員。

この360の失敗にまつわる記事は、今やあらゆる(海外)ゲームサイトを席巻している。そうした記事の中で僕がよく目にして、心底うんざりしているのは、この手のコメントだ。「Xboxが売れないのは、日本人が外国人嫌いだからだ。日本人は絶対に外国の電化製品を買わない」。中には、少数だがこんなコメントすらある。「ジャップはいまだにヒロシマのことを根にもってる。だから、アメリカのゲーム機を絶対に買わない」。

OK。まず、その「ジャップ」は僕の友達だ。不愉快このうえないが、これすら、360の記事で僕が読んだ最悪のコメントじゃないんだ。でも、それらのコメントはあまりにも下品で、人種差別的すぎて、僕はここでは書けない。

この憎悪はいったいなぜなんだ? 日本人がむやみやたらに金を使わないってだけで、外国人嫌いってことになるのか? そうとしか思えないね。ここで僕はキミたちに、この「恨みがましくて、愛国主義的な」日本人たちが他にどんなものを買ってるのかお教えしようと思う。

まず、日本人はiPodを買ってる。そりゃもう気が狂ったみたいに。日本のアップル・ストアは、米国のアップル・ストアより1店あたりの売上数が多い。
でも、ちょっと待て。アップルはカリフォルニアがベースだ。どうしてそんなことになるんだ? なぜ日本人は、誇りをもって日本製のソニーのMP3プレイヤーを買わない? なぜならば、だ。アップルが、日本の消費者の好みに合った良い製品を作ってるからだ。

日本ではスターバックスは巨大だ。いたるところにある。たった数年で日本に根を下ろし、店はいつだって客でいっぱいだ。日本には、スターバックス以前だって、山のように喫茶店があったってのに。けれど、これは、スターバックスが日本市場にうまく順応したからだ。だからこそ、こうして歓迎されてる。

そして、マクドナルド。マクドナルドが日本でうまくいってないと思うか? ハンバーガーとフライドポテトは明らかに西欧の食事だ。日本人だったら避けるはずじゃないか?
いや。マクドナルドは日本では、ファースト・フード業界の勝ち組だ。日本には、モス・バーガーとかフレッシュネス・バーガーとか、日本独自のハンバーガー・チェーンがいろいろあるが、どれもマクドナルドには勝ててない。

マクドナルドは、ある種の味が日本人には受けないことを知ってた。だから、彼らはメニューを変えた。そうして、ビッグ・マックとフライド・ポテトに加えて、テリヤキ・バーガーとエビ・バーガーを用意した。彼らはアメリカ人の好みを日本人に押し付けたりはしなかった。だから、成長したんだ。

さあ、ここでXbox360のローンチのラインナップだ。ファースト・パーソン・シューティング、スポーツゲーム、カー・レース。米国では実によく売れるこうしたゲームが、カーレース以外は日本人の好みには合わない。

彼らは、RPGも、シミュレーション・ゲームも、パーティ・ゲームも、キャンブル・ゲームも、そして格闘ゲームも、ローンチには用意しなかった。それがあれば、かなりうまくやれたかもしれないのに。マクドナルドが日本人の好みに合わせて自分たちを変えた一方で、マイクロソフトは自分たちの会社に合わせて日本人を変えようとした。

続けよう。日本人はリーヴァイスのジーンズが大好きだ。リーヴァイスのためだったら、プレミア価格だって惜しまず金を支払う。コカコーラだって、まだ飲み飽きてない。こんなことってあるか? キリン、アサヒ、サントリーなどなど、日本の主要飲料メーカーがこぞって独自のブランドでコーラを出してるのに、どうして日本の連中はそっちを買わないんだろう? どうして自分の国家を応援しない? なぜなら、真実はこうだからだ。日本人は外国製品が大好き。

彼らはフランスから衣料を買い、イタリアからバッグを買い、スイスから時計を買う。この事実が示すのは、外国製品が自分たちをクールに見せるっていう日本人の考え方だ。

まだ続けるぞ。西欧の音楽は日本では、日本の音楽と同様に売れる。これはちょっと考えてほしいところだ。ほとんどの日本人が理解できない言葉の音楽が、自分たちの音楽と同じぐらい売れてるんだよ。タワー・レコードに行ってみろ。たとえば、ミシシッピ。商品の何パーセントが外国のものだ?(クラシックは含まずに)
日本では、どんな小さな街ですら、アメリカ人だって知らないようなアメリカのバンドやインディーズ・バンドのアルバムが買える。でも、アメリカじゃ、僕は日本のトップ10の音楽すら買えない。

まだ行くよ。日本の映画館に行こう。上映されてる映画の5本に4本は日本映画じゃないのがわかるだろう。で、ほとんどはアメリカの映画だ。『ラスト サムライ』は、他のどんな日本製の侍映画より日本で大ヒットした。そのうえ、日本の興行成績の最高の1本は、かの『パール・ハーバー』。そう、『パール・ハーバー』だぞ。

OK。ここで少し深く話そう。日本人のパソコンすべてにウィンドゥズが入ってるときに、どうしたら日本がアメリカの会社、マイクロソフトを嫌いになれるっていうんだ。仕事じゃ、みんながワード、エクセル、パワーポイントなのに?まあ、これは産業的スタンダードで、こういう場合、選択肢は他にないというのはある。でも、この地上で最も普及しているチャット・プログラムはMSNメッセンジャーじゃなかったか?

日本人はマイクロソフトを嫌ってなんかいない。Xbox360が嫌いなだけだ。

日本人はいまだにオリジナルのXboxに良い印象をもってない。彼らがほしかったジャンルのゲームをもってきてくれなかったからだ。デザインも、マーケティングも、ゲーム自体も、日本人の好みにはまったく合わなかったゲーム機。
しばらく後に、日本マイクロソフトはXboxワールド・コレクションっていうゲーム・シリーズをリリースしはじめたけど、これだってアメリカのゲームをリージョン2のディスクにしただけのもの。彼らは、形ばかりの翻訳すらしなかった。このゲーム・シリーズで日本語なのは、箱とマニュアルだけ。僕自身は英語圏の人間だから、このシリーズが大好きで、かなり買ったよ。でも、日本人ゲーマーでどれだけの人が『Buffy The Vampire Slayer』(Xboxワールド・コレクションの中の1本)を買おうと思ったろう? 全部、英語なのに? 多くないだろうね。多くの人が、この努力不足を侮辱だと思ってる。

今年、マイクロソフトが360のローンチに合わせてリリースするタイトルは、たった6本。しかも、オリジナルのXboxのゲームとの下位後方互換は20本以下。ふざけた話だ。これで、インターネットの連中は、日本人はアメリカの会社にチャンスを与えないなんてコメントしてるんだから、図々しい。アメリカの会社のほうが、日本にチャンスを与えてないと僕は思うよ。

OK。じゃ、みんなここで、自分のXboxのコントローラをもって。よく見ろ。僕のにはこう書いてある。「メイド・イン・チャイナ」。次は、僕のスリムなPS2のコントローラをもとう。………「メイド・イン・チャイナ」。プレステが日本で製造されてたのは、もう何年も前の話なんだって。

日本に人種差別はないのかって? 多少はある。人種差別はあらゆる国にあるし、日本だって例外ではない。が、たとえ、実際に他の多くの国々より人種差別が多かったとしても、それがXboxが売れない理由だと言うのはものを知らなさすぎる。
確かに、アメリカ製品は絶対に買わないって人だっている。外国車を買うぐらいなら死んだほうがマシっだっていうアメリカ人がいるようにね。でも、どちらのケースも、一般的というより例外だ。

自分たちに合わせて作られてない製品を買わないからって、日本人を責めるのはやめろ。自分たちが興味があるものを何も提供してくれないのに、アメリカの会社を助けるためだけに製品を買ってたら、日本人はただの馬鹿だ。日本人ゲーマーに彼らのニーズに合う、彼らがほしいと思う商品を提供するんだ。そうすれば、次のiPodがキミの手の中に生まれるんだから。

さて、もうすぐ日本の開発会社が360向けに開発した前途有望なゲームが何本か出る。でも、遅すぎたかもしれないね。日本人はもうこのゲーム機を失敗と見てる。早期にローンチが脆弱なままリリースするよりはむしろ、発売を遅らせてでも、強力なローンチ・ラインナップを揃えてからにすべきだったんだ。

僕は長崎で1年暮らしてたんだけど(大分に引っ越す前)、(訳注:原爆の長崎ですら)アメリカ製品が大量に売り出されてて、しかも受けが良いことに物凄いショックを受けた。日本人のニーズと欲求に合っていれば、彼らはそれがどこの国で作られたものかなんて気にはしない。これは前にもあったこと、そうして、また起こるだろうことなんだよ。●



2006年あたりは本当に「アメリカ製品を買わない日本人=国家主義者」的な論調が多くて、これを読んだときは、胸がすくような気持ちでした。………「売れない=国家主義、売れない=オレたち悪くない」ってあたりが子供っぽいなあとかなり食傷気味だったので。

一方で、この記事のコメント欄では、賛否含めて、非常に真面目な討論がされていました。しかも、ものすごい長文の応酬。


なにしろ、この記事は2006年、まだPS3も出ていない時期のものなので、コメントも「PS3は日本製品だから、出たらどうせ売れるよ」的な、今となっては脱力笑いせざるをえない流れになっているのですが、……2006年のXbox360発売当時、彼らは日本の市場と日本人をどう思っていたのか、という備忘録代わりに、明日お送りいたします。


<追記>後方互換の訂正、ありがとうございました。同じ意味だと思っていました。毎度、すみません。


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posted by gyanko at 21:00 | Comment(119) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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