性表現の規制が叫ばれている昨今、タイムリーな面もあるかもわかりません。長いですので、茶でも飲みつつどうぞ。
Lolicon
ロリコン
ロリコンは、ローマ字でrorikonと綴る。日本語の「ロリータ・コンプレックス」という混成語であり、少女へ惹かれる気持ち、またはそのような気持ちをもった個人を表す。
日本国外では、この用語は馴染みは薄く、もっともしばしば言及されるのは、子どもっぽい女性キャラクターがエロティックな手法で描かれるマンガやアニメのジャンルとしてである。
この成句はウラジーミル・ナボコフの著作『ロリータ
若い少年に対して惹かれる気持ち(また、そのエロティックな描写が関連するアート)を表す相応の言葉にショタコンがある。
ロリコンというジャンルが、実際の子どもへの性的虐待の一因となっていると主張する批評家もいるが、一方で、そんな証拠はない、あるいはそうではないという証拠があると主張する人たちもいる。
チャイルド・ポルノの1類型として、ロリコンの性的に露骨な形態を犯罪とみなそうという働きかけをしている国もあり、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スエーデン、フィリピン、アイルランドなどは実際に実施している数少ない国々である。
日本国内では
一般に、ロリコンという用語は若い少女や若い特徴をもった少女に性的に惹かれる気持ちを表現するのに使われる。別の言葉で言えば、実際のペドフィリア(訳注:小児性愛)やエフェボフィリア(訳注:思春期の児童に対する大人の性的関心。思春期前の児童を対象とするペドフィリアと区別される)、またはそう見なされるものを言う言葉とも言えるが、厳密には日本語のロリータ・コンプレックスはペドフィリアのみを指す。ただし、ロリコンという略語になると、そうした性的倒錯をもった個人をも指している。
ロリコンは日本では広く行き渡った現象であり、学術記事や批評の主題としてもしばしば取り上げられる。多くの一般書店や新聞の売店スタンドでイラスト化されたロリコンものがオープンに売られてはいるが、ロリコンマンガに対する警察の動きも続いている。
ロリコンに購買層を特化している店舗もある。消費者は20代〜30代のホワイトカラー層と言われ、フィギュアやアクセサリーといったロリコン商品の高価格に不平を言わない層である。
「かわいい」スタイル(キュートと訳される)は日本では非常に人気があり、マンガやアニメの様式の多くで見られるものだ。学生服を着た女学生は日本ではエロティックなシンボルでもあり、米国のチアリーダーのイメージと比較できるだろう。
ブルセラ・ショップは、ロリコンの男性客に使用済みパンティを売る商売だし、テレクラ(テレフォンクラブ)を通じて男性が十代の少女とデートをすることができ、女子学生のアルバイトとしての売春もある。
同時に、こうしたものは、日本文化の変態(pervert)とかわいい(cute)のはざまに存在する「奇妙な組み合わせ」である。逆に言えば、かなり大げさな茶番劇の流れ(すけべおやじの典型的な例としては、『ドラゴンボール
子どもや子どもっぽいキャラクターが登場する性的なマンガはロリコン・マンガと呼ばれている。チャイルド・ポルノは1999年に非合法となってはいるものの、日本ではロリコン・マンガは一般に合法である。
ロリコン・マンガは通常、短編であり、同人誌、あるいは『レモンピープル』、『漫画ブリッコ』、『コミックエルオー』といった、このジャンルに特化した雑誌として出版される。
ストーリーは普通、教師と生徒、兄と妹のような禁忌の関係に焦点が当てられ、他には子ども同士の性的な実験を扱ったものがある。
また、服装倒錯やふたなりといった他の変態ジャンルとクロスオーバーしたものも中にはある。
『こどものじかん
ロリコンは、スーパーフラット(訳注:村上隆が興した現代美術運動。Wikipedia)展覧会の研究テーマでもある。
起源
ロリコンという用語が日本で使われ始めたのは、1970年代初期、ラッセル・トレーナーの『ロリータ・コンプレックス
ロリコン・マンガというジャンルには、1980年代初頭の吾妻ひでおの『海から来た機械』のような作品が密接に関係している。吾妻は、それより前にも自身の同人誌『シベール』で、少女を登場させた性的マンガを発行している。それまでのポルノマンガの大半が劇画に影響された成人女性を登場させたものだったため、吾妻の作品は男子学生の読者の間で人気となった。だが、吾妻のマンガは、多くの性的な要素を含んでいたにもかかわらず、厳密にはポルノではなかった。
吾妻の成功に乗じて、『漫画ブリッコ』や『レモンピープル』といったマンガ雑誌が思春期前の少女を登場させたマンガを載せ始めた。1980年代を通じて、こうした雑誌で掲載されていた著名なロリコンマンガ家には、みやすのんき、藤原カムイ、あさりよしとお、内田亜紀がいる。
訳注:吾妻ひでおのWikipediaによると、「彼がエロ劇画誌の『劇画アリス』や自販機本の『少女アリス』に作品を発表したことは、漫画の世界での表と裏の境界を低くする動きの始まりととれ、また、『少女アリス』に発表したいわゆる「純文学シリーズ」は後のロリコン漫画に直接につながる作品である。大塚英志は純文学シリーズを「おそらくは最初の確信犯的な「ロリコンまんが」」と表現し、それ以降のこの手のまんがは吾妻の拡大再生産にすぎないとすら言っている」。
ジェンダー・ロール
シャロン・キンセラ(訳注:イエール大学社会学部助教授。日本文化を研究)は、ロリコン・マンガは1980年代後期の少女マンガの副産物であると書いている。少女マンガには、ホモセクシュアルなラブストーリーや、少年向け/成人向けマンガのパロディが含まれていた。
これは、アマチュアのマンガ・コンベンションにより多くの男性が参加するようになったり、コミケットに少年のアマチュアマンガの新ジャンルが登場するにつれて起こったことである。
キンセラは、アマチュアのロリコン・マンガにおける「ジェンダーに対する態度」と、少女マンガの男性ファンのジェンダーに対する態度を区別をしている。
女性によって創られたパロディ・マンガには冷笑的な男性のステロタイプがあり、男性ファンにも女性ファンにもアピールするものであるのに対して、ロリコン・マンガは「通常、ヒロインは、大きな目と、肉感的でありながら子どもっぽさを合わせ持った体の少女で、1970年代のビキニと宇宙時代のアーマースーツの中間のような、ほとんど服をきていない格好をしている」。これは、日本社会で急激に力を増した若い女性に対する恐怖と欲望の双方を表現しているという。
キンセラはまた、1990年代のイギリスや米国では、アニメーション・ビデオのジャンルは輸入ものも含めて、ロリコン・マンガから派生したものが優勢だったと指摘し、こうした国々の女性たちが似たような、社会的文化的体験をくぐり抜けてきていることを示唆している(訳注:女性の地位の向上、その反動としてのロリコン・マンガの優勢)。
ロリコンと解釈されている作品を書いている女性マンガ家には、青島千穂(『The Red-Eyed Tribe 』)(訳注:現代芸術家。『The Red-Eyed Tribe』はこちらで見れます)、タカノ綾(『Universe Dream wall painting』)、私屋カヲル(『こどものじかん』)、杉崎ゆきる(『りぜるまいん
男性作家には、町野変丸(『Green Caterpillar's Girl(訳注:邦題不明)』)、富沢ひとし(『エイリアン9
日本人アニメーター、宮崎駿は1988年のアニメージュとのインタビューで、女性主人公のほうが好きだが、「難しい。すぐにロリコンごっこ(ロリータ・コンプレックスの男性用の遊び道具)の題材になってしまう。ある意味、我々にとっていいと思うものを表現しようと思ったら、できるかぎり可愛らしく描かざるをえない。とはいえ、今、あまりにも多くの人が、恥知らずにも、まるでただのペットであるかのように、主人公の少女を描く。これはどんどんエスカレートしている」と語った。宮崎は、女性の人権に関わることかもしれないとして懸念を表明したのである。
日本国外では
西欧世界では、ロリコンは多くの意味をもつようになってきている。アニメ、オタク、変態といった他の言葉の意味をも含んでいるのだ。
西欧では、ロリコンと言えば、思春期前の少女や子どもっぽいキャラクターの性的、あるいはエロティックな描写を含むマンガやアニメを言い、日本のロリコンマンガとかなり同義である。西欧におけるロリコンという言葉の使い方は、露骨な表現ではないときですら、公然とエロティックな題材であることを示している。
論争点
どんな作り物であろうとも、幼児虐待を防止するため、子どもの猥褻なイメージは犯罪であると法律によって規定されてきた。セックスの対象として子どもを描いた猥褻な架空のイメージが、子どもの性的虐待の一因になっているかどうかは争点である。
この論議は、因果関係に科学的基盤がなく、絵やアニメのゲーム、動画における性的表現を制限することが、実際には性犯罪を増やすことになるのではないかという主張とぶつかってきた。犯罪の引き金になる欲望の無害なはけ口を排除することになってしまうというのである。
一例として、ヴァージニア出身の男が逮捕された際に、「公立図書館でロリコンを閲覧した後、本物のチャイルド・ポルノを収集するのはやめ、ロリコンに切り替えた」と強く主張した事件がある。
文化評論家の東浩紀は、ロリコン・マンガの読者で犯罪に走るものはごくわずかだと言っている。ロリコンは、「社会に対する最も便利な反抗の形」だという。
ミルトン・ダイヤモンド(訳注:ハワイ大学教授。解剖学と生殖生物学。性別に関する研究、性の自己認識の起源についての研究で有名)と内山絢子(訳注:目白大学現代心理学教授)は、1970年代から日本でポルノが劇的に隆盛してきた一方で、少年犯罪や13歳以下の子どもへの暴力も含む、性的暴力が劇的に減少しているという報告には、強い相互関係があると見ている。彼らは、デンマークや西ドイツでも似たような研究結果をあることを引用している。
この二人の研究概要では、性的に露骨なものが広く行き渡っている国々で性犯罪率の増加が抑えられえているという関連性は立証はされなかったが、1970年代以降の日本の性犯罪率が減少していることは、彼らの研究で解説されているさまざまな要素が影響しているかもしれないと述べている。
シャロン・キンセラは、1990年代後半に女子学生の売春を報じる、根も葉もない記事が増えたのを見て、こうした根拠のない報道が増加したのは、慰安婦報道が増えた反動ではないかという仮説を立てている。つまり、自発的に売春するハッピーな女の子のイメージによって、慰安婦の犯罪イメージを帳消しにしようとした可能性があるというのだ。
日本の非営利団体、CASPAR(訳注:アジアの性虐待と貧しさに苦しむ子どもたちを救う会)は、ロリコンや他のアニメ雑誌、ゲームが性犯罪をまさに助長していると主張している。このグループは1989年に創立され、ポルノ雑誌やゲームの中の未成年者の描写に対する規制運動を行っている。
この問題に人々の注意が向けられたのは、宮崎勤が1988〜89年にかけて4〜7歳の少女を誘拐して殺害し、遺体にネクロフィリア(死体愛好症)的行為を行った事件のときである。東京高裁は、宮崎を正気であると裁定し、事件は宮崎の性的妄想から発し、あらかじめ計画されたものだったと述べた。宮崎は2008年6月17日に絞首刑となっている。
未成年を描写した性的マンガに人々が反感を抱いたのは、2005年、有罪判決を受けたことがある性犯罪者が、奈良で7歳の少女を殺害した容疑で逮捕されたときだった。犯人の男がロリコンであると疑われたのである。が、そうしたメディアの憶測にもかかわらず、犯人の小林薫はほとんどマンガやゲーム、人形に興味をもっていなかった。
とはいえ、彼は、高校時代にアニメのポルノ・ビデオを見たことで小さな少女に興味をもつようになったと主張していた。小林には死刑判決が出ている。
2003年に創設された京都の非営利団体、ジュベネイル・ガイドの代表、長岡道子によれば、毎年、日本で出されているフィルムやゲームを含む、ポルノ・アニメ作品2000本のうち、約半数に女子学生のキャラクターが登場するという。
2008年3月11日、日本UNICEFは、日本のマンガ、アニメ、ゲームにおける未成年の性的描写の禁止を含めた、チャイルド・ポルノの更なる規制を要求する声明を出した。が、こうした禁止規制は、目下のところ日本の公的機関では考慮されていない。●
ジェンダー・ロールのシャロン・キンセラのパートは、コミケでヤオイが広がり、一方で男性客が増えるうちに新しい男性向けマンガも生まれ、少女マンガ、ヤオイの影響を受けつつロリコンが生まれていったと私は読めたのですが、具体的にいつのどんな状況を言っているのか見当がつかず…。そんなことあったのかなあ…という。
訳文中に出てきた町野変丸は、村上隆率いるHIROPON FACTORYなどでアーティストとして海外や国内で芸術活動を展開なさっているそうで、ロリコンを現代文化の一側面として捉えることで、社会や文化の根底に迫る題材にしようという目論みなのかもわかりません。
ただ、マンガは検索して絵を見てみたら、えらいこっちゃでした…。
<御礼>Borne=ボーメ(原型師)をお教えいただいたかた、ありがとうございました。元のWikipediaもスペルを間違えているものと思われます。BorneとBome、確かにパッと見、似ております。
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