2010年04月03日

英紙タイムズが伝える - 日本の主婦たちのデフレ、携帯サイト「毎日特売」-

不況で暇とは言いつつも新年度ということで、…気分ばっかり忙しく、ちょっとゲームをやってからブログ更新しよーとか思いつつ、コントローラーもったままがっつり寝てました。しかも、2日連続。とほほ。


本日は、日本の主婦とデフレを扱った、4月2日の英紙タイムズの記事から。


ウェブを抜け目なく使う主婦、店舗経営者と戦いながら、日本経済を不況から救う

日本のデフレとの厳しい闘い……世界第二位の経済大国の運命を決定づけるかもしれない政策争いも、携帯電話のアプリとケチケチ主婦軍団たちによって弱体化中だ。

日本中のスーパーマーケット経営者たちは今、自分たちを、価格を下方へ押し下げようとする新しい圧力に抵抗もままならぬ力弱い存在と考えている。というのは、かつて忠実だった客たちがソーシャル・ネットワークの力をフルに利用して、1リットルの牛乳を10円(7ペンス)でも安く叩こうとしているからだ。

毎日特売という携帯サイトでは、2万5000人の地区ごとの特売特派員たちが、日本国中の7700軒以上のスーパーマーケットを詳細に調べている。どんな小さなものでも、特価とあれば、彼女たちの目から逃れられない。小さな情報が積もって出来上がった情報の山が、このサイトを利用している数十万のユーザーの強力な武器だ。

日々更新されるデータベースで武装し、かつてない強烈さで、客たちはその日売られている最も安い商品を買おうと集中しているのだ。

小売店にとってはさらに壊滅的な打撃だ。客が厳重にサイトを見張っているのがわかっている以上、その地区の最安値を競うために価格を下げねばならないからだ。

政府が最大限の努力を続けているにもかかわらず、日本は物価の下落という災難に苦しみ続けている。このデフレを解決しなければならないことは、鳩山首相も、日本が直面している最も深刻な問題として先週、言及している。鳩山が認識する次に深刻な問題が、財政危機をどうするかだ。

日本の政策対応は、マクロエコノミック的な手段をもって、この問題と闘おうと尽力してきた。だが、金利のほぼ0近くまでの下落、繋ぎ融資を通じた銀行への巨額の資金援助の拡大は、この問題の進行をなんとか食い止めようとして失敗した対応の1つだ。

政策対応の失敗原因としては、これが市民レベルでしつこく続いている問題だからということも一部にはあるが、アナリストによれば、大きな原因は、日本の家庭の尋常ではない家計だというのだ。…実際、日本の主婦は家計の予算をぎりぎりまで削ってきている。

小売店側にすれば、こうした主婦たちに対応していくより選択肢がない。日本の平均賃金が事実上、上がらず、何年もこの状態が続いていることはわかっているのだから。

こうした必然的なデフレの状況が、「毎日特売」というサイトをもたらした。このサイトは数年前に実験的に作られたに過ぎないものだったが、世界的金融危機の暗い日々が到来して以来、ユーザーたちが本気を出し、サイトはデフレの大きな力となっていったのだ。「毎日特売」の圧倒的な成功は、特売特派員たちの熱意と、スーパーマーケット経営者たちの恐怖の上に成り立っている。

特売特派員たちは、地元の新聞、チラシといったソースから情報を選り集め、毎日朝10時前に--この10時という時間は、多くの日本の主婦が買い物を始める時間帯だ。--アップロードするが、彼女たちの「役立つ」情報に対して支払われる報酬はわずかなものだ。

スーパーマーケット側は、サイトが、破壊的な価格戦争を人為的に起こさせているとして抗議をしている。「毎日特売」のユーザーたちは、情報戦争の正当な武器であるとし、この抗議を復讐とみなしている。

エコノミストは、日本のインフレとの闘いは、長引く不快なものになるだろうと確信している。マッコーリー証券の日本経済のチーフエコノミスト、Richard Jerramによれば、政策の変更なしに物価を安定させるには5〜10年はかかることはわかりやすい道理だと述べている。

また彼は、日本銀行がデフレを終結させるために両面作戦でくるのではないかとも言う。「計画A」は、「何もせず、出力ギャップ(訳注:わかりやすくいえば、ユーザー側の目標価格とスーパー側が出せる実際価格の差、といったことかと思われます総供給>総需要)がなくなり(≒限界を迎え)、デフレへ向かう圧力が消えるまで待つ。これは現状の政策では長期間かかる。計画Bは、計画Aが上手くいくことを祈ることだ」。

デフレへと宿命づけられた要因

・日本の日経株式市場指数は、1989年のピーク前、1980年代に275%上がった。一方で、不動産価格はインフレのあまり、東京の皇居周辺の小さな区画だけで、カリフォルニア州全体より価格が高かった時期が短期間だがあった。

・1989年にバブルがついにはじけたとき、株と不動産の価値は壊滅的に下がった。89年からの3年間で、日経はピークから63%下がった。

・不動産価値は、1990年代に8年連続で3〜6%下がった。これによって、日本の銀行を強烈なプレッシャーが襲った。日本の銀行は、かなりインフレな価格査定の元に貸付を行っていたのだ。

・日本の中央銀行は利率を異常なまでに高く設定しつづけていた。これが、経済をデフレ・スパイラルに導いてしまう。

・1995年、利率をほぼ0にする政策へと動き出した。これは1999年までに完全に実施されたが、経済的な損害が起きた。物価が下落したことで、投資や雇用が抑えられ、消費者は将来への不安から現金をしまい込んでしまったのである。



この記事にはコメントがいくつかついていました。

■実際、日本では倹約することに意味があるにちがいないね。こっちじゃ(イギリス)じゃ、政府が倹約家と年金基金と戦争中だけど。

■日本でこういうサイトが機能してる理由の1つには、スーパーやデパートがいまだに分断されてるってのがある。こっちだと、ほとんどの産業に、公的機関ではない独占企業が存在するからね。2〜3の企業が牛耳ってる。

■疑問なのは、どうしてイギリスやEUに、こういう価格情報サイトみたいな、素晴らしいテクノロジーのひらめきがないんだろうってこと。消費者は王様だ。政府は、人為的に経済や価格を操作しようとするのを止めるべきだ。

■「物価の下落という災難(scourge)」か。なるほど、scour((物価の)研磨剤)だな…。ごめん、もう書くのはよすよ。笑いすぎだ。

■「物価の下落という災難(scourge)」。Mr. Lewis(この記事の記者)が経済学の学士なら、驚くような言い回しじゃないよ。学生時代、仲間たちとケインズ経済学を議論していたならね。

すべての世界経済をほぼ破綻させ、銀行を崩壊させたのは、こういうやつらだ。

経済学の学士と日本の主婦。どっちに私の金を任せるかって言ったら、SAYONARA、作られたインフレ、KONNICHIWA、物価の下落だよ。

■イギリスで誰一人としてこういう似たような携帯サイトを作らないのが驚きだよね。たぶんイギリスの主婦は困ってないんだな。

■日本の主婦はえらいな!イギリスの主婦も同じようにやって、理に適った範囲で物価を管理してほしいもんだ。

■「1リットルの牛乳を10円(7ペンス)でも安く叩こうとしている」。10円あれば、普通サイズの豆腐が買える。スーパーマーケットの中には、赤字覚悟でそういう目玉商品を売る店だってあるんだよ(嘘じゃない、本当)。だから、10円っていうのは、こういう客にとっては本当に重要なことなんだ。
デフレはまだ続いてる。日常の食料品の値段に関して言えば、もはや日本は、世界の他の金のかかる国々と同じリーグにはいないと思うね。



この暗い時代に、お母さんがたががんばってらっしゃるのですなあ。

「毎日特売」は、自分が主婦であれば会員になったろうなあと思います。買い物はおおかた、仕事帰りか週末なので、タイムセールや特売に間に合ったためしがございません。


それから、甘えるようで恐縮ではございますが、「出力ギャップ」については、経済に詳しいかたがいらっしゃったら訂正していただくと幸いでございます。


<追記>コメントで、出力ギャップ=デフレギャップとのご説明をいただきました。いつもありがとうございます。



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posted by gyanko at 07:57 | Comment(65) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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