2011年03月05日

海外記事 - デコポンを求めて〜カリフォルニアにデコポンがやってきた〜 -

本日の記事はこちらから。


カリフォルニアにデコポンがやってきた。

dekopon.jpg

ある生産者組合がひそかに、風味豊かなフルーツの収穫を始めた。このフルーツは日本原産。米国ではスモウ(Sumo)の名前で売り出されている。

この伝説的フルーツ、デコポンを初めて味わったときのことを、私は今でも覚えている。ミカンの大きなものと想像してほしい。剥きやすく、種がないが、身はしっかりとしていてフレッシュ、口の中でとろける。甘味が濃く、同時にさっぱりとした酸味がほどよく効いている。そして、複雑な香りが長く残る。
これまで私は1000種類以上の柑橘類を味わってきたが、デコポンは私にとって最も美味なものだ。

本当に美味いのだ。
実際、このフルーツを巡る緘口令と陰謀は驚くべきものだった。それにもかかわらず私はここ十数年ずっとデコポンを追い求めつづけてきた。それが今、ついにカリフォルニアの店に並び始めたのだ。その全容を、これから話そう。

デコポンは米国でスモウの名で売られる予定になっているが、元を正せば、1972年、日本の長崎県の農林水産省果樹試験場で、清見タンゴール(オレンジと温州みかんを交配)と、アジアで親しまれている大型みかん、ポンカンを掛け合わせて作られた。

作られた当初は、期待はされていなかったようだ。というのは、その形の不恰好さだ。目の粗い、黄橙色の皮、てっぺんに目立つ突起がついている。
だが、1990年代までには、日本の消費者たちはこの果実の豊かな味わいを評価するようになり、日本で最も珍重される高価な柑橘類になった。1個10ドルで売れたのである。

この品種の正式な名前は不知火(しらぬい)といい、熊本市近くの地名にちなんでいる。だが、日本での流通名はデコポンだ。突起を意味するデコとポンカンのポンを合成した名前である。

国家の恥として広く知られていることだが、1998年、この品種が、日本のライバル、韓国でどういうわけか栽培されていることがわかった。いまだに済州島で栽培されていて、韓国の最も高い山、ハラ山にちなんでハラボンと呼ばれている。
また、日本人移民によってブラジルでも栽培されているし、中国でも栽培されている。
だが、米国はというと、農家を外来種の害虫や病気から守るため、これまでこうしたフルーツは輸入されてこなかった。

(訳注:韓国語版Wikipediaのハラボンの項目の機械翻訳。分類は、日本の農業:果物。)

私が初めてデコポンのことを知ったのは、1998年の12月だ。カリフォルニアのストラスモアで柑橘類の栽培をしているブラッド・スターク・ジュニアが話してくれたのだ。彼は興奮していた。若い樹に接木する穂木を日本から輸入し、リバーサイドの植物検疫所に運び込んだというのだ。

この検疫所では、『クローンによる柑橘類保護計画』に携わる科学者たちが、独創的な技術を駆使して、穂木から病気を取り除いていた。これには数年の年月がかかり、ブラッド・スターク・ジュニアはこの費用に自腹を切ってきたのだった。

彼以外の生産者たちもまた生産者のつもりではあったろうが、彼ほど実直ではなかった。
2000年、ある企業が、デコポンの穂木を日本から密輸入し、それを使ってサンウォーキン渓谷のオレンジ・コーブ近くの農園で不法に1078本の果樹を増やしていたことが植物検疫所によって発見された。

ここで栽培されていた果樹は、日本でよく見られるトリステザ・ウイルスに重度感染していた。これは、全米の農家に深刻な被害をもたらしかねない出来事だった。
フレズノ郡の農業検査官は、この会社に2万6500ドルの罰金を課し、果樹園はつぶされ、焼き払われた。

このほかにも、少なくとも伝えられているのは、日本の宗教的な農耕カルトグループがベンチューラ郡に置いていた出先機関が、カリフォルニアにデコポンの穂木を密輸入したことだ。このときもやはり、樹木は引き抜かれ、この出先機関は現在、撤退しているようである。

数年の調査を経て、私は最終的に、ある科学所蔵品の中にデコポンの見本樹を見つけだした。
果実はほぼ異常といっていいほどに味が良かった。房の皮はきわめて薄くて柔らかく(身はしっかりとしているのにジューシー)、まるで絹のよう。そのうえ、持参した糖用屈折計で測ってみると、糖度が大変に高い。うっかり機械が壊れてるのでは、と思ったほどだ。

このデコポンを育てたのは誰なのか。それを突き止めるために、私はスタークに連絡をとった。だが、わかったのは、スターク家の会社はすでに倒産しているということだった。

貴重なデコポンの穂木は、検疫所から、スタークの会社で以前働いていたジョン・フィッシャーの下に移管されていた。彼は、マックファーランド社にいて、私の知人でもあったのだが、私の電話に出てはくれなかった。

私は、情報を求めて、柑橘類の養樹園主や農家を追いかけた。が、デコポンは、まるでじらすかのように私の手に届きそうで届かない。

リンドコーブにあるカリフォルニア大学の穂木園に何本かあると耳にしたこともあった。だが、2006年に私が訪ねたとき、果樹はちょうど伐採されたところだった。このとき初めて私は、「途方に暮れる」という言葉の本当の意味を知ったのだ。

いったい何が起こっているのか。最終的に私にヒントをくれたのは、最先端の柑橘品種をよく知る養樹園主、TreeSource Citrus Nurseryのロジャー・スミスだった。

「デコポンのことを知られるのは、私としてはあまり良い気分じゃないんです」と彼は言った。声音はまったくふざけてはいなかった。
「仕事で取引がある大物が何人かいましてね、彼らがデコポンに興味を持っているんですよ。彼らは、デコポンが人々に知れ渡る前に、何年か余裕をもって樹木を育てておきたいと考えているんです」。

スミスは、競合他社にデコポンを発見されることを恐れていた。発見してしまえば、彼らだって穂木を輸入して病気を取り除き、育成を始めてしまうかもしれない。私が黙っていてくれるなら、それが一番良い、と彼は付け加えた。

私がデコポンを追いかけていたとき、スミスは彼の上司に私の話を通してくれたことがある。その上司とは、Suntreat Packing & Shipping社のゼネラルマネージャー、マイケル・ジョージのことだ。だが、ジョージは私からの電話を3年間、避けつづけた。

ジョージとようやく会うことができたのは、2009年1月、フレズノの南東50マイル、サンウォーキンの柑橘地帯の中心地、リンゼーにある彼の会社だった。

ジョージの説明はこうだった。グリフィス・ファミリーという、南カリフォルニアで以前、住宅開発を営み、成功した裕福な一族がいる。彼らが、SuntreatとTreeSourceのオーナーであり、スタークからデコポンの穂木の権利を合法的に買い取った。
そこでジョージは、13人の栽培者たちから成る組合を組織して、彼らに地元の果樹園で430エーカー分のデコポンを栽培させた。これが2008年あたりの話だ。

この契約はすべて秘密裏に行われ、独占販売に関する合意がSuntreat社と取り交わされた。誰一人として、デコポンという言葉を口にすらしてはならなかった。人に聞かれたときも、その苗木をデコポンではなく、「XP1」という名前で呼んだ。
最初の収穫物の売り出しは、2011年に予定された。

そして今、ついに、収穫が始まった。
この3週間あまりで、私は、リンゼーの丘陵にあるジョージのところも含め、デコポンの果樹園をいくつか訪ねている。
その光景はまるで、昔からあるオレンジの木箱のシールそのままだった。
丁寧に手入れされ、たわわに実のなった若い果樹が並び、上方には日本風の段々畑、東には山頂に雪をかぶったシエラネヴァダ山脈。


↓オレンジの木箱に、こんな感じのシールが貼られているようです。

crateart.jpg

54歳になるジョージは、自身の仕事のまさに「成果」を検査しながら、緊張はしているものの、いかにもうれしそうだった。彼とマーケティング・マネージャーのセス・ウォーレンマンはこれまで何度も、デコポンの生産農家を訪ねてきた。4カ国を旅して、育成法、収穫法、荷詰め法を学んできたのだ。

たとえば、これはカリフォルニアの栽培農家にとっては珍しいことに思われるが、デコポンは、(オレンジというより)むしろ桃の果樹のように、枝を刈り込まなければならない。これは、日差しを通して、実を甘くするためだ。

デコポンは見かけこそゴツゴツとしているが、実際は皮がデリケートで傷つきやすい。
通常、柑橘類は900ポンドの大箱で収穫されるものだが、デコポンの収穫には、手でもてる小さな袋しか使わない。特に、てっぺんの突起部分が傷つきやすく、日本では荷詰めの際も手で行う。

とはいえ、この日本の方法だと、米国ではあまりに高くつくとジョージは言う。そのため、彼と彼のチームは、この作業に桃の荷詰めラインを使っている。

収穫したばかりのときは、デコポンはまだ酸味がかなり高いため、Suntreatでは、秘伝の日本式貯蔵方法を採用して、果実の保存処理を行い、酸味を下げている。

とはいっても、完熟すれば、甘味は自然と上がり、酸味は自然と下がるものだ。
3週間前、Suntreat産のデコポンはすでに14ブリックス(糖度の単位)を示していた。今月中には、16、あるいは18にも届くはずだ。これはもはや、美味さの王様といっていい数字だ(一般的に、他の流通品種、たとえば、ネーブルオレンジやクレメンタインなどは平均して11〜13)。
数年内に、今、若木の段階にある果樹がしっかりと根付く頃、果実はさらにうま味を増すにちがいない。

デコポンの最大の欠点は、その可愛げのない見かけと、聞き慣れない名前である。西欧の人間からすれば、この名前は果物というより、アニメのモンスターの名前のように聞こえてしまう。

そのため、Suntreatはフォーカスグループを使って、骨の折れる市場調査を何度も行った。(訳注:フォーカスグループ:市場調査のために抽出された消費者グループ。あるテーマで討議してもらい、その結果を商品開発などに反映させる)

そのフォーカスグループによる調査の中で、マーケティングの専門家である彼らに「タンジラ」だの「タンギモド」といったとんでもない名前にダメ出しをされ、結局、スモウという名前に落ち着いた。
この名は、デコポンが日本の財産であることや、人目を引く堂々とした姿を想起させるように名づけられたものだ。

デコポンの樹は非常に生産性が高いが、やはりまだ若く、今年の収穫は微々たるものだ。収穫されたデコポンは今週中に店先に並ぶ予定だが、ほとんどはカリフォルニアで売られることになる。マンハッタンビーチのWhole FoodsやGrow、あとはMitsuwaやNijiyaといった、(カリフォルニアに)5〜6店舗以上はあるだろうアジアン・ストアだ。価格は1ポンド3ドルといったところ。

デコポンの名前が広がりはじめ、他の栽培農家が興味を示していることから、カリフォルニア当局は最近、デコポンの穂木を再度、入手した。再検査を行い、一般に流通可能な品種であることを告知するためだ。
が、(流通可能になったとはいえ)、Suntreatのライバル会社がデコポンの収穫を手にするまで、少なくともあと7年はかかるだろう。

「満足してるよ」とジョージは言う。「本当によくもまあ、こんなに長い間、口をつぐんでいられたなって。そこにもう喜びがふつふつこみ上げるんだ」●



コメントはこの記事についたものと、こちらから。

(デコポンって覚えづらいんでしょうか…。コメント中では、いろんな言い方をされていましたが、直さずそのままお送りいたします。)


■もう中毒のようになってるよ。1日に3個食べてるけど、多すぎ?

■18ブリックスって、製品の発酵にも楽に対応できる糖度じゃん!

■これ、美味しいんだよ!Whole Foodsで1箱見つけたんだけど、最初に1口食べたときは、そこまで騒ぐほどかよ?って感じだった。……ところが、このおやつの美味さが、だんだん僕の中で大きく広がり始めたんだ。……良質のオレンジ同様にジューシー、でもマンダリンのほうが近い。とにかく、うまいの!デコポンを僕たちに教えてくれて感謝してるよ!

■素晴らしい記事だった!すぐにデコポンを食べてみようと思ってる。ありがと!

■この記事、……わくわくしてきたよ。地元のストアに行って、買ってくるつもり。

■これは、………食べてみたいわ、今。

■オーマイガ。シアトルでは手に入らない????

■Whole Foodsに今から向かうよ……。

■オレは、『パタポン』が好きだけどな。

■見た目はイボつきオレンジって感じ?

■↑イボじゃねーから!

■デルモンテが袋入りの、ぜんぜんフレッシュじゃないやつを売ってくれるまで待つよ。

■↑ああ、あの1個ずつラッピングしてあるやつな。

■デコポンか。オレが立ち上げようとしてるビジネスに最適な名前じゃないか。ブラックベリーとか、アップルとか、オレンジみたいなもんだ。今じゃ、フルーツとしてより、企業や製品で名前が知れ渡ってるもんな。

■↑オレンジなんて企業も製品も聞いたことないけどなあ。でも、デカポンって会社名にしたら、すっごいクールだとは思うよ。

■↑キミ、ギター弾かない人なんだね(訳注:オレンジは英国の老舗ギターアンプメーカー)。

■ここブラジルじゃ、かなりありふれたフルーツだけどなあ。

■↑だよな。オレ、リオ・デ・ジャネイロに住んでるけど、売ってるマーケットはいっぱいあるよ。

■食べ物でオレたちを釣ろうって言うのか?しかも、自分は知ってるけど、オレたちのほとんどが手に入れられない食べ物の話をわざとして、焦れさせようってんだな?

お前はサイッテーのクソ野郎だ!

■未来のフルーツなのに、手に入りにくくて、病気に弱くて、デリケート?
僕的には、病気に強くて、育てやすくて、取り扱いも輸送も大量にできるってのが未来の果物だと思うんだけどなあ。

■↑そういうの、もうあるじゃん。スーパーでトマトを買ってみろよ。革みたいに丈夫で、味がほっとんどしねえ!オレはあれを「出荷者のご都合」って呼んでるよ。

■まさにアメリカ人が必要としてるもの。糖分が多いんだろ。

■↑糖度の高いフルーツとキャンディは別物だよ。

■また金儲けの方法が見つかったんだな。……免疫力が爆発的に上がるドコポン・スムージーを求めて、ヒップスターのガキどもがJamba Juice(訳注:スムージーを売る米国のチェーン店)にたむろするのが目に見えるようだよ。

■↑Jamba Juiceでたむろするヒップスター?そりゃもう2005年の話だよ。

■ふーん。…ブラッド・オレンジのほうが、この類似品よりうまいって。

■↑と、デコポンを食ったこともないやつが言っております。

アメリカへようこそ。この国では、試したことがないものはすべて、「アメリカ産のものより劣ってる」で終了です。

デクポン、食べさせてくれよ。

デカポン

■韓国でも売ってる。ハラボンっていう。こっちでもめっちゃ高いの。火山がある南の島でしか育たないんだ。バケーションで済州島に行くと、お土産で買って帰るんだよ。それか、ハラボン風味のチョコレートね!

■アメリカンチェリーのレイニア種が今のところ一番好きなんだけど、これ買ってみる。なんかすごそう…。

■『Chopped』(訳注:米国のフードネットワークの番組)にこのフルーツが登場するのが楽しみ。あの番組好きなんだよね。デコポン見たら、シェフたちが「これ、……なに?」って顔するんだろうなあ。

■フロリダ住まい。オレンジで育った。普通のオレンジは苦すぎて、食べられない。レッド・ネーブル・オレンジが大好き。あと、クレメンティナも素晴らしいね(クレメンタインの掛け合わせ。超剥きやすくて、超甘い)。これがフロリダ・ボーイの意見です。

だけど。
僕がかつて食べた中で最高のフルーツ。それは、富有柿。完璧なまでの素晴らしさ。

これでフルーツ講座を終了します。

■糖度計がぶっこわれるんじゃないかってぐらいの糖度をもったフルーツか。………これぞまさに現世代のフルーツだよな。

■凄そう。そんなに糖度が高いと、たぶん発酵して蜂蜜酒みたいになっちゃいそうだな!

■もう1つ私が大好きな柑橘類にユズがある。……JALの飛行機でスカイタイムっていうユズのジュースを出してくれるの。おいしいんだよ!


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ついに見つけた見本樹→倒産して行方知れずの元輸入者→移管先の人物は連絡がつかない→カリフォルニア大で発見→行ったらもう伐採されてた→「デコポンのことは調べるな。大物が絡んでいる」。

ミステリーのネタにでも使えそうなお話でございました。映画だったら、デコポンを知る人が序盤で派手に殺されてますな。死体のそばに落ちてるデコポン1個……。



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タグ:デコポン
posted by gyanko at 13:23 | Comment(187) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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