日本、三重苦の大惨事。犠牲者、増える。被災者、物資不足。
数百人の遺体が浜に打ち上げられ、沿岸の原子力発電所では緊急度が深まっている。数百万人の日本の人々が、一国を変貌させるほどの規模の大惨事を前にして、絶えることのない不安と哀悼、そして驚愕の中にいる。
まず地震、それから津波、そして、原子力発電所の危機。日本を三重に襲った災害による死傷者数は、正確に数えることはできず、把握は難しい。沿岸部の町の当局者たちは、家も、そしてそこにいた人々もことごとくが押し流され、遺体袋の数が足りていないと語る。
福島第一原発では、土曜日の第三原発に続いて、損傷した原子炉でまた爆発音が響いた。日本は、福島第一原発の部分的メルトダウンの被害の可能性を推し量り、それを食い止めようと努力している。
この核関連施設を所有する東京電力の担当者たちは、朝6時14分の爆発後に放射性物質が漏れたことを発表した。首相の菅直人によれば、放射能はすでに原子炉から広がっており、「今後、さらなる放射性物質の漏えいの危険が高まっている」という。
放射能への恐怖は、市場に大打撃を与えた。日経225採用銘柄平均は、14%の下落を経て、終値は10.6%減の8,605.15円。
地震と津波が東北沿岸部を壊滅させてから4日、米国地質調査所はマグニチュードを8.9から9.0に訂正、これは1900年以来の世界4番目の規模となった。
最も被害が大きかった地域では、50万人以上が押し流され、1万5000人が救助された。しかし、浸水した地域や瓦礫の中に取り残された人々を救助できる時間は、刻々と少なくなっていた。
当局は、約2000人の遺体が月曜日、被害の大きかった宮城県の沿岸で発見されたと発表。また、共同通信社の指揮の下、地元、宮城の当局が調査を実施し、壊滅した地域で約3万人が行方不明になっていることが判明した。
北には、不通となっている道路もあれば、燃料もほとんどない。救助・復旧隊の人々は、最も助けを必要としている地域へなんとか到着しようとあがいている。
避難所の被災者たちは、食料と水が足りないと言う。原子力発電所が損害を受けたことにより、日本の電力供給は激減しており、多くの避難所には、暖房もない。月曜日、日本では、節電の取り組みが国家規模で始まった。
日本政府が企業や団地に、定時になったら照明を使わない、あるいは電源を切るよう強く要請したため、月曜の東京はまるで一時停止しているかのように思えた。数百万人が外出を控えていた。
電車は、制限されたスケジュールで運行し、また、東京の渋谷駅の、かの象徴的交差点も、いつもは照明と騒音の奔出の中にあるというのに、巨大映像スクリーンが消され、日本のポップミュージックも聴こえず、ただ足音だけが響いていた。
こうした節電の取り組みの多くは、自発的なものだった。だが、電力使用量の急激な落ち込みのせいで、混乱も生まれた。
東京電力は日曜、計画停電のスケジュールを大慌てで変更した。東電の取締役副社長、藤本孝は、電力需要が予想を下回ったため、いくつかの地域の企業に照明をつけるよう促した。これは、一般に向けた公示とは異なった。
枝野幸男官房長官は、東京電力の計画に正確な情報がほとんど織り込まれていないとして、東京電力経営陣を批判し、正確な情報の素早い公表を要請した。
こんな状態にありながらも、日本は、第二次世界大戦以来、最大の危機を、秩序をもって混乱と戦うという冷静さで対応しているようだ。
津波によって壊滅した大槌町では、家の上にフェリーボートが打ち上がっているほどだったが、この国の避難所は国中どこに行っても、人々は靴をきちんと入り口で脱ぎ、ゴミをリサイクルの種別にそって分別していた。
目に見える形での略奪(訳注:looting=戦争や暴動時の略奪を指す言葉)の形跡もなければ、犯罪率が上昇しているということもない。日本人たちは、長い行列で待つ間も冷静さを見せている。
目の前にあるのは、衰えることのない日本の礼儀正しさ、そしてみなで共通の気持ちを分かつことへの愛だ。
Twitterのユーザーたちは、取り残された人々や家をなくした人々がおにぎりを分け合っていると話していた。北へ向かう人々は、車で10時間かかる、その行程中、……一度もクラクションを聞かなかったと語った。
沿岸部が壊滅した県のコンビニエンス・ストアでは、店のマネージャーが自家発電装置を使っていた。この自家発電装置が停止し、レジスターがもう開かなくなったとき、行列で待っていた人々はみな、持っていた商品を棚に戻した。
東京の国分寺駅ですら、ほとんどの路線が不通となる中、朝の通勤客たちは、電車に乗るというただそれだけのために何時間も待ち続けた。
行列は駅から飛び出して、横断歩道を超え、通りに沿って、数百ヤードも伸びていた。JRの社員たちはスーツを着、白いマスクをつけて、通勤客たちを列へと誘導した。東へ向かうかたはこちらです、西に向かうかたはあちらです、と。
一方、沿岸部では数百マイルにわたって、安全が深刻に懸念されている。
福島第一原発では、水位が一時的に落ち込み、燃料棒が部分的に露出してしまった原子炉があり、過熱やメルトダウンのリスクが高まっている。
日本政府は、原発周辺の放射能レベルは危険なほどではないとは言っているが、数千人の人々が被爆検査を受けた。月曜、米海軍第7艦隊は、17人の乗組員の体や衣服に微量の放射性物質が検出されたため、原発から100マイル離れた地点まで艦隊を移動させた。
駐日大使、ジョン・ルースが月曜、記者団に語ったところによると、米国原子力規制委員会の専門家たちが現在、日本におり、日本側の原子力専門家と協議を続けている。駐日大使は、「日本政府があらゆる手段を講じ、この深刻な状況に対処すると確信している」と述べた。
福島、富岡町にある原子力発電所の近くで暮らしてきた関口ユキオ(64歳)は、太平洋岸からわずか数マイルの場所に住み、居酒屋を経営していた。海岸線から約500ヤード(訳注:約450メートル)、原子力発電所から約2マイル(訳注:3.2キロ)の場所にあり、仕事帰りに飲んだり食べたりする客たちで繁盛していた。
津波によって彼の家も商売も被害を受けたが、関口は、原子力発電所が津波と同じぐらいに危険なものになるかもしれないことは理解している。
「複雑な気持ちです」と彼は言った。「私には仕事がある。そして、原子力発電所の人々に支えられてきました。……でも、一番心配なのは、子供がいる家族たちです。放射能は目に見えないですから」。
一方で、東京の北では、生活必需品の量が少なくなりつつあり、店の外まで長い列が続いている。店の棚が空なのも珍しくなく、インスタントラーメンや米の需要が高い。
「今どんな状態なのか、私たちみんなわかっています。お互いに苦しみを分け合っています」と福島のスーパーマーケット店主、チョウナン・ヒデノリは話した。この店では、数百人の人々が、開店時間の何時間も前から店が開くのを待っていた。●
募金先一覧。
赤十字も募金受付が始まりました(コメントでもお教えいただきました。ありがとうございます。)(追記:リンク先訂正、ありがとうございました。)
不必要な買いだめが、品不足を余計に加速させ、被災地に届ける物資が足りなくなる恐れも指摘されているようです。
冷静にまいりたいものでございます。