日本の震災からたった一ヶ月で発売される日本の震災救援のためのアンソロジーに、ウィリアム・ギブソンが寄稿

Amazonで発売が開始されたばかりの、この新しいアンソロジーは、ウィリアム・ギブソンの新作が読めるだけでなく、日本の赤十字の救援活動を支援する寄付ができる。
(訳注:ウィリアム・ギブソン。米国のSF作家。80年代サイバーパンクの旗手。『ニューロマンサー』、『モナリザ・オーヴァドライヴ』)
『2:46: Aftershocks: Stories from the Japan Earthquake』の出版企画は、差し迫ったニーズに応えようと大急ぎで立ち上げられたものだ。編纂は主にTwitterを中心として行われ、これはソーシャル・メディアの新しい使い道を象徴している。
Technoratiが伝えるところによると。
「この本は、3月18日のとあるツィートをきっかけに、たった1週間でまとめられた。きっかけとなったツィートをしたのは、Our Man In Abikoというハンドルネームの、日本に住むイギリス人である。
最初のツィートから数時間で、彼は多数の画像、イラスト、短いエッセイを受け取った。1週間で、200人あまりの人々からの寄稿、そして100人あまりの編集者、翻訳者、その他のボランティアが集まった。
彼らはみな見知らぬ者同士であり、Twitterという共通点を通じて団結し、#Quakebookに集まった3万ワードを出版する準備をした。
出版が(予定より)遅れた理由は正当なものだ。Amazonがこの企画に乗り、手数料を免除してくれたのだ。つまり、販売価格の100%が、マグニチュード9.0の地震と津波の犠牲者たち(死者行方不明者2万7000人) を助けるために使われる」。
先日、当サイトに投稿された抜粋部分を読む限り、この本には、災害に影響を受けた日本やその他の国々の人々の話が収録されている。
ウィリアム・ギブソンは、この本のために新しく書き下ろし、また、アーティストでありミュージシャンのオノ・ヨーコの作品も収録される。
ギブソンはThe Globe and Mailに対して、東京は「私のイマジネーションの源の一つ」であり、なにかをしなければならない、大好きな場所が今もちゃんとそこにあるのか自分で行って自分の目で確かめたいという気持ちに掻き立てられたと語っている。
また、この本を作り上げるきっかけとなったテクノロジーは新しいものだが、世界で起こったことに反応して本が出版されるというのは昔からある根強いものだとも言い添えている。(以下、前述のTechnoratiより引用)。
「21世紀のツールとソーシャル・メディアでしか実現できないスピードで出版された本ではあるが、ギブソンは、この本の形式は、祝い事や災害時に作品を集めて編纂する伝統を思い起こさせると指摘する。「ビクトリア朝時代に「occasional pieces(そのときの作品。偶作)」と呼ばれたものに当たるでしょう。大地震そのときの本です」。
この形式は古くからあるものだが、土台は最新。ただし、昔は出来事が起こった後に作品を集めたものだが、今はリアル・タイムで反応できるツールを私たちはもっている」。
この電子ブックは、Amazon.comやAmazon.co.ukで9.99ドルで購入できる。アマゾン・キンドルをもっていなくても、Amazonから無料のキンドル・リーダーをダウンロードすれば、パソコンや携帯電話で読める。●
米アマゾンでは23件のレビューがついていましたが、評価はすべて5つ星。
この中から、最も役に立つと評価されたレビューをいくつかお送りいたします。
53人中50人が役立つと評価したレビュー。
評価:★★★★★ 災害は人生を引き裂くが、人々を団結させる。
ジェイク・アデルスタイン(日本、東京)(訳注:以前、こちらの記事でご紹介した『TOKYO VICE』の著者。)
私はこの本に寄稿をした一人であり、ともにこの本を作った人々の多くと知り合いだ。だから、客観的なレビューを書けるわけではない。
3月11日、午後2時46分。マグニチュード9.0の地震が発生し、その後、巨大な津波が日本と福島原発に大打撃を与えた。亡くなった人々の数は、4万人に到達するのではないかと言われている。
ここで、この悲劇を表す9.0という数字を見て、その大きさを理解しようと考え込んだところで、理解するのは難しい。所詮、数字は数字でしかないのだから。
この本に描かれている人々は、名もなき市井の人々だ。どんな姿形の人々なのか、手がかりはあまりない。
だが、#Quakebookは今回の地震とその後のことを、アートやエッセー、短い手記、写真という形で語りかけている。そのどれもがそれぞれに心を動かされる。
自身が被災した人、愛する人が行方不明なのか死んでしまったのかわからずに地獄のような待ち時間を過ごした人。地震後、日本を去るほかなかった人の話もある。
エッセーの中には、読むのが苦痛なものもいくつかある。「Positive(ポジティブ)」という一篇は、救出がうまくいかない様子をテレビのニュースを見て、それ以上ニュースを見ていられなくなったというシンプルな話だ。だが、読めば、彼の気持ちを理解できるだろう。
知りたくないことというのはあるものだ。だが、たぶん、これは知らなければならないことなのだ。そこを判断するのは、個人それぞれではあるが。
この本は弔いのためのばかりではない。希望の本でもある。
出版が実現したきっかけは、ある男が、自分が何もできず誰も助けられないと感じたことだ。彼のアイディアでこの本は生まれ、多くの人々の必死の努力で形になった。みんなこの本の実現のために、多大な労力を払った。
Amazonは、この本のためならどんなことでもと、本の売上がすべて直接、日本赤十字に送られるように取り計らってくれた。日本赤十字は、さまざまな手段で日本の被災者を救援している機関だ。Amazonは1セントも取っていない。これは、企業が人を愛する行為として、驚くべきことだ。
作品のクオリティはまちまちだ。タイプミスもある。この本は、震災の記憶がまだ人々の心の中で生々しいうちに、一気に作り上げられた。理由は、多くの人々が今なお医療援助や食料、毛布を必要としているからだ。たった今の支援じゃなきゃだめなのだ。数ヶ月後などというのではなく。
言葉が拙い作品もあるが、感情は心に響いてくる。確かに、文章のクオリティは不揃い。でも、これは予想されたことだ。プロのジャーナリストや小説家が書いた本ではないのだから。
この本を書いたのは、日本の市民、外国人で日本に住んでいる人、被災者、目撃者、ジャーナリスト、アーティスト、そして、さしたる理由もなく日本と結びついた人々も少なくない。
彼らの共通点は、この国、日本への愛だ。そして、ヒューマニティのためだ。
すべての売上がチャリティに行く。僕には、とても好きな日本のことわざがある。この本をきわめて美しく端的に表している言葉だ。「情けは人のためならず」。
これを翻訳するのは難しいが、意味はこうだ。私たちが人に与える優しさは、相手ばかりではなく、いつしか自分自身にも恵みになる。
しばしば僕は、死者を弔う最良の方法は、生き残った人々を助けることだと感じることがある。この本を読むことは、その生き残った人々を助ける1つの方法だ。●
17人中16人が役立つと評価したレビュー。
評価:★★★★★ 日本へ希望を。
この本を「〜現象」と呼ぶのは時期尚早かもしれないけれど、単に素晴らしいことをやってのけたというだけでなく、後がちゃんと続いているよね。
始まりは、東日本大震災を経験した人々のショート・ストーリーをまとめようという一人の男性の努力。それが人々に影響を与え、目覚めを促し、なにか自分たちもできないかという気持ちを突き動かして、世界規模のコミュニティと運動に成長した。
気楽に読める本ではないけれど、日本の軌道を永遠に変えた瞬間を少しでも理解したいと思うのであれば、この本は読む必要があるよ。もっと大事なことは、日本の人々の素晴らしい魂をもっとわかりたいと思うのなら、読まないとだめ。
日本の復興のために、自分に何ができるのか。……この本を読むこと。●
9人中9人が役立つと評価したレビュー。
評価:★★★★★ この取り組みに参加できたことを誇りに思う。
バリー・アイスラー(サンフランシスコ)(訳注:米国のベストセラー小説家。元CIA工作員。『レイン・フォール/雨の牙』(2009)の原作者。ジョン・レイン・シリーズは、日本人と米国人のハーフの暗殺者が主人公。)
東北の地震に関するこの感動的な本をまとめ上げたクリエイターたちのスピードに驚いたよ。序文を寄稿したことを誇りに思う。そして、売上の100%が日本の地震と津波の救援に行くことを確約してくれたAmazonに感謝する。
序文でも書いたことだが、「私の書いた本がずっと日本へのラブレターでありつづけたとすれば、この本はSOSに、より近い」。関心をもってくれてありがとう。●
9人中9人が役立つと評価したレビュー。
評価:★★★★★ 驚愕。
レイブン(カナダ)
作品のクオリティと、この本から生まれてくる力強い感情に驚愕した。
これは、地震と津波で被災した人々を助ける寄付を募るために、いろいろな人々から話を集めてみたというだけの本ではない。今日の世界とソーシャル・メディアの力を切り取ったかのような本だ。
本当に大変な速さで作り上げられている。世界中の人々が、テクノロジーを介してこのプロジェクトに参画した。大震災のニュースを聞いてほぼきっかり一月後に、私はこの本をキンドルにダウンロードすることができた。
ダウンロードしてすぐ、座って最後まで読んだ。けなすことなんかできなかった。この本がどんなふうに作られたかを考えると心強く、またこの本を読んで自分の心がいっそう痛んだことがこの本の力を感じさせた。
手稿のクオリティはエクセレント。震災を体験した人々が自身で書いたものだ。画像やイラストも、私のキンドル3上ではくっきりと映っている。インタラクティブ・メニューもある(これはいつだって便利なものだ)。
改善点を指摘するなら、唯一、ストーリーとストーリーの間を5ウェイ・コントローラで素早く移動できうるようにしてほしいということぐらいか。
この本をすべての人に薦める。これは、私が初めて5つ星をつけたものだ。個人的には、5つ星以上の価値ある本だと思っている。●
この本は、Amazonの協力のもと、紙の本でも出版される運びとなったようです。
日本とドイツでは、電子ブック、紙の本両方で出ます。
このたびも全額赤十字に寄付。
この全額は、必要経費を差っ引いた全額という意味ではなく、印刷等の諸経費をAmazonが負担しての「売上全額まるごと」のようです。