2009年05月08日

『大神』の悲劇

大神』。

日本神話を元にしたファンタジックな世界観。日本情緒漂う、目を見張る美しいアートワーク。素直でメリハリのある感動的なストーリー。
斬新な、筆を使った戦闘。誰にでもとっつきやすいゲーム難易度。魅力的な多くのサブクエスト。


初めてプレイしたときは、数日ぶっつつけで夢中になり、新しいステージやダンジョンが展開するたびに、「今度はなにが起こるんですかーー?!」と、まさに『庭かけまわる冬の犬』状態でした。

まずは、百聞は一見にしかず、こちらをご覧になってみてください。

ゲームの全体像、アートワークはこちらで↓




戦闘はこちらで↓



本当に素晴らしく作り込まれたアドベンチャーRPGで、うきうきしながら戦闘しまくり、走りまくり、ダンジョンを踏破したあげく、最後は大泣きさせられます。

PS2なのでロードは早くはないのですが、心配ご無用です。なぜなら、ロード中にでさえ、ちょっとした遊びができて、うまくいくと有り難いアイテムが手に入ったりします。どうですか、かゆいところにまで手が届く、このぬかりのなさ。つまらんゲームのわけがない。



ところが、この『大神』。これほど完成度の高いゲームなのにもかかわらず、辿った道は険しかった。

売れない、売れないと言われたあげく、制作のCloverスタジオは親会社のカプコンに閉鎖されて解散の憂き目に合い、まさにPS2末期の花と散りました。

現在までの最終的な数字は、

大神 PS2版 14万本

と、ビジネスモデルの違いはおいといて、GC新作売上歴代3位のバテン・カイトスが同じような数字ですから、決して悪い数字ではないんじゃないかと私なぞは思うのですが、発売当初の売上げが相当に無惨なものだったと推測されます。

発売後となると、これだけ面白いゲームです、口コミも当然あったと思いますし(日本のアマゾンのカスタマー・レビューでは、ベスト版が235件、正規版が271件もついています、評価もほぼマックス)、文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門大賞、2007年度日本ゲーム大賞優秀賞の受賞等も多少は後押ししたはずなのに、時すでに遅かったということなのでしょうか。


ところが、苦汁を飲んだはずのこのゲーム、2008年になってWiiに移植、北米・欧州・豪州のみでリリースされます。なんと日本、ハブ。未発売。ひどい。

ookamiwii.jpg

ま、いたしかたない。海外では評価だけでなく、『PS2版 大神』はそこそこ売れたんですね(後日、アップするプロデューサーの海外インタビューでも、売上げは好調とおっしゃられております)。でもって、それを裏付けるかのように、Wii版も売れたようです。


大神 Wii版(日本未発売) 28万本(カプコン2008年7月発表)


確かに、『大神』は海外での評価は発売前も発売当初も非常に高かったようです。えらい数の賞を受賞しています。ざっと挙げるだけでも、

まずは、まだ完成前、未発売だというのに、2005 E3のお披露目トレイラーの時点で、

1UP Best PS2 Game(ベストPS2ゲーム)
1UP Best Game of Show(E3でベストだったゲーム)
X-Play Most Original Game(最も独創的なゲーム)
その他、ノミネートいろいろ。賞いろいろ。


発売後となると、直後に、
IGN、Electronic Gaming Monthly、Game Informerでゲーム・オブ・ザ・マンス(月間賞)に選出されたのを皮切りに、

Edge Magazine、Game Revolution、IGNが2006年のベストゲーム
Game Trailers、Official PlayStation Magazineが2006年のPS2のベストゲーム
に、IGNに至っては、

2006 Overall Game of the Year(コンソール、ジャンル関わらず、2006年に出たすべてのゲームの中のベスト)
2006 Best Adventure(2006年アドベンチャー部門最優秀)
2006 Best Story(2006年ストーリー最優秀)
2006 Best Artistic Design(2006年芸術的デザイン最優秀)
Most 2006 Innovative Design(2006年革新的デザイン最優秀)



こりゃもう大盤振る舞いですな。

それ以外にも、ゲーム・デベロッパーズ・チョイス・アワードでイノヴェーション賞とか、Game Engineでベスト・アニメーション賞、独創的アドベンチャーゲームに選出とか、枚挙にいとまがない。


しかも、この2006年という年は、海外では伝説的といっていい人気を誇る『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』がついにGCとWiiで出て、本来ならトワイライト・プリンセスの独壇場だったはずなんですが、有名タイトルの続編ですらない末期PS2のゲームに予期せぬ大奮闘をされたことになります。


ちなみに、E3で初めて『トワイライト・プリンセス』がお目見えしたときの動画がこれ↓です。
草原を駈けるのがリンクとわかったとたんに、仕事できているはずのアメリカのプレスの方々が取材も忘れて、絶叫しております。




宮本茂が登場したあたりは、もう熱狂ぶりがすでに宗教じみておりますなあ。
これだけでも、『ゼルダの伝説』の海外での期待度の高さが伺われようというもの。しかも、実際に『ゼルダの伝説 トワイライト・プリンセス』は、これもまたたくさんの賞をとっていますし、売上本数にいたっては675万本!675万本ですよ!すげえ!ゼルダ!まさに名作にふさわしい売上げです。

この『大神』、言うなれば、かほどに待ちこがれられ、かつ、その重い期待を裏切らなかった『トワイライト・プリンセス』と、少なくとも評価という点では互角の勝負をしたといっても過言ではないわけです。そのぐらい評価が高かったし、海外では売上げだって悪くなかった。

なのに。なのにですよ、これほどのゲームを創ったCloverスタジオはもうありません。不思議なことです。なにがどうでこうなったのか。
不運とは、まさにこのゲームと制作会社のためにある言葉かもしれません。




カプコンが制作のCloverスタジオの解散を発表したとき、海外の大きなゲームサイトはすぐにそれを報じました。発表の翌日に、Cloverスタジオの代表のインタビューを掲載するサイトもあり、解散を惜しむ海外の声が連ねられました。


本来なら、さっさと『大神』がどれほど面白いゲームなのか、その内容を書くべきなのですが、それは『大神』の海外レビューのほうに回すこととして、かなり長くなりますが、次回から数回に分けて、そのインタビューとそれにつけられた嘆きのコメントを訳したいと思います。


どこも経営は趣味でやってるわけじゃなし、カプコンだって大変だったにちがいないのですが、こんな良いゲームを創ったのに、時代の波に乗り損ねたのか、飛びたい日に風が吹かなかったのか、なくなっちゃった開発会社があったんだよってことで、お読みいただければ幸いです。



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posted by gyanko at 14:29 | Comment(3) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. これはもう悲劇としか言いようが無いですね。

    発売当時小島 秀夫もラジオで大絶賛で、評価は高かったんですが、売上が伸びなかったのが痛かった。
    Posted by at 2009年08月30日 19:31
  2. はじめまして。ネットで調べてみたら、
    今年の10月15日に日本でも発売されるようです。
    PS2の大神まだやった事なかったので、この記事を見てぜひWii版買おうと思いました。
    Posted by T.T at 2009年08月31日 19:09
  3. ゲームとしては微妙だけどこのすばらしいアートワークは貴重
    Posted by at 2011年12月02日 02:35
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