2009年05月29日

海外の評価 - 遠藤周作の『沈黙』-

それでは、早速、遠藤周作の『沈黙』、米国アマゾンの63件のカスタマー・レビュー、

5つ星:50件
4つ星:9件
3つ星:2件
2つ星:1件
1つ星:1件


このうち、最初に、最も役立つと評価された5つ星レビュー2本をお送りします。


138人中、136人が役立つと評価したレビュー。(あらすじ紹介部分の段落を割愛しています。)

評価:★★★★★ 否定できない力をもつ小説

『沈黙』は素晴らしい小説である。遠藤周作とイギリスの作家、グレアム・グリーンは、両方とも、個人とカソリック教義、そして世界の間で育つ関係について扱っているという理由で、比較されがちな傾向にある。
『沈黙』はきわめて緊張感のある歴史小説だ。カソリック教義の知識があれば、いくつかの状況や用語を理解する手助けにはなるかもしれないが、神への、そして人々への、懐疑と信頼の問題は、どんな読者にとってもすぐに入っていくことができるものだろう。


『沈黙』は、いくつかの物語上のアプローチが使われている。最初と終わりは三人称全知視点、物語中盤はロドリゴ視点の日記と手紙という形式で書かれている。主人公のロドリゴは、彼の信仰が正当なものなのか、日本での布教が正しいのか、キリスト教に改宗した信者たちの苦しみ、あまりにも過酷な困難の中での神の沈黙に葛藤しなければならない。


ロドリゴは、ガルペとともに長崎近くの山腹から離れた小さな掘建て小屋に身を隠さねばならず、彼の苦難は、肉体的、かつ文化的孤立の中で悪化する。彼が文化的な面で直面するのは、言葉も習慣もほとんどわからない国にいるという恐怖であり、外的な困難で最も混乱するのは、キチジローという目的の知れない日本人である。キチジローとの関係は、ロドリゴを、信仰と聖書に対する最も厄介で最も深い熟考へ追い込んでいく。


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『沈黙』は、絶対的に私を魅了した読み物だった。この小説の歴史的、文化的背景は、遠藤自身のバッググラウンドによって複雑になっている。キリスト教とカソリックに対する遠藤の視点、特に日本人作家としての視点と日本の歴史に関する記述は、少なくとも、かつて私が読んだグレアム・グリーンの『事件の核心』、『権力と栄光』(後者はテーマ的に遠藤の『沈黙』と大変似ている)のような外国を舞台とした小説よりもなお、強烈に異なる視点から信仰と国際関係の問題を直視することを西欧人に強いてくる。
全体として、とてつもなく、そうして力強い小説だ。




73人中、71人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ 驚嘆すべき、魂の痛みをともなう作品

『沈黙』は、感情に訴える、断固とした筆致で信仰と苦痛を描いた作品であり、最も宗教的な小説で通っている作品すら凌駕している。


西欧の文学はこれまで数限りなく、神学からみた苦痛を描いてきたが、近年、そのほとんどは、苦痛を許してくれるよう神に謝罪を求めるか、苦痛を与えるままにする神に暴言を吐くか、苦痛の中にいる信者を励ます話か、そのどれかのように思える。

フィリップ・ヤンシー(米国のキリスト教作家)は、彼の本の中で苦痛に関する素晴らしい問題提起をしているが、そうしたものですら多少、第三者的な物の見方をしている。それに対して、遠藤周作は、この、私がかつて読んだ本の中で最も感動した小説の1つ、『沈黙』の中で、苦痛の恐ろしい喘ぎの内側から書いているように思える。


筋書きは、1600年代の日本、文化的にも精神的にも不毛の土地に福音を広めるためにやってきたポルトガル人宣教師たちを中心に進む。彼らの神学は、結局のところは、迫害と苦痛しかない中で変質してしまう。私はここで続けることができるのか? 私は、私を苦しめる者を許すことができるのか? そうすべきなのか? 最終的に彼らは、人々の背教と闘い、背教した者たちですら許されることができるのか葛藤する。


この本は、どう考えても、気分が良くなる本ではない。扱われているのは、失敗、敗北、放棄、苦痛、そして全編を通じた神の『沈黙』だ。しかし、同時に、「悲しみの人」、キリストが、私たちに代わって何を耐え忍び、そうしてまた、私たちが、強さからではなく、その弱さのために神の恩寵をどれほど必要としているかに、大きく窓を開いてくれる。
この本を強く薦める。



『文化的にも精神的にも不毛の土地』かあ…。文化の異なる、キリスト教化されていない国=不毛の土地なんだなあ、うーん。…まあ、これが少なくとも当時の西欧の一般的認識だったのは、しかたないのか。奴隷売買が起こったのも、だからだもんな…。



秀吉がバテレン禁止令を出した裏には、

一、スペインの日本植民地化の尖兵としてのキリスト教
一、日本人奴隷の売買仲介。(こちらのニッケイ新聞の記事に詳しいです。大変面白い記事です。)


特に日本人の奴隷売買には、秀吉はかなり怒ったようで、天正15年に当時の布教の責任者であるコエリョを呼びつけて、宣教師が関わっているのではないかと叱りつけております。そりゃ、怒るよな。


実際、宣教師がすべからく、開明的で人格者だったわけでもなく、中にはフランシスコ・カブラルような、日本をまさに文化的精神的未開地と決めつけ、完全上から目線、日本人と文化を差別、蔑視した人物もいたようです。



堅い話が続いたので、次回はソフトな話題でまいりたいと思います。



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posted by gyanko at 21:00 | Comment(9) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. あまり興味のない宗教の話でも読ませる 管理人さんの文章の上手さと、最後のコメントが 感心させられます。
    Posted by at 2009年08月21日 11:33
  2. スペインやポルトガルがやった事は南米での事例でもわかるように布教と言う名の侵略だからなあ
    Posted by at 2010年04月03日 01:53
  3. ニッケイ新聞のリンク貼り有難うございました。私の「お気に入り」のタイトルの一つに「日本人奴隷」がありますが全てネットで集めた話です。南米に日本人奴隷が存在したという話を聞きショックを受けてその証拠をネットで紹介してる人や、天正少年使節団が日本人奴隷を見てショックを受け怒った話とか。秀吉が多くの親類縁者を処刑するのを見て「もったいない。奴隷として売ればいいのに。」と宣教師が言った話とか。まさに宣教師は侵略の手先ですよね。その当時ローマ法王も異教徒は人間と認めてはいなかった。奴隷をどんなに残酷な方法で死なせてもお咎めなし。白人には自分らの不行跡の反省をしてからモノを言えと言いたい。
    Posted by 倭の子 at 2010年07月12日 22:07
  4. こういう話はちゃんとキリシタン弾圧と合わせて
    学校でも教えるべきだと思うね
    Posted by at 2011年06月30日 12:15
  5. 沈黙の内容や、それに感動した海外の人々のリアクションについては興味がなく、外国人対日本人を鼻息荒く語りたい人ばかりのようですね。
    Posted by at 2014年05月06日 18:02
  6. ※5
    じゃあ自分が沈黙の内容や海外の人々のリアクションについて何か一つでも書けば良いのに。文句垂れるだけじゃなく
    Posted by at 2014年08月29日 00:28
  7. >文化的にも精神的にも不毛の土地

    これは日本全体のことを指してるんじゃなくて、ロドリゴたちが潜伏した貧しい漁村をさしてるんじゃないの?
    彼らが逮捕されるまでに見た光景は確かにその通りでしょ。「牛馬のように扱われ牛馬のように死んでいく」と書かれてるし。
    そういう惨めな人々のために死ぬつもりで自分はやって来た、なのに実際は……という話でしょ。
    何より、苦痛の捉え方を読む限り件のレビューワーは作品をちゃんと理解していると思う。そんな人が、作中に全く出てこないレイシズム的な見方をするとは考えにくいけどね…。
    正直、管理人は作品をちゃんと読まずに言葉尻を捉えてるだけだと思う。

    それと、口調はともかく※5の不満には私も同感。
    作品理解はそっちのけで、一人の言葉尻を捉えて関係ない話題にもちこむ管理人。それにばっかり食いつくコメント欄。
    そりゃ「なんだそれ」って言いたくなるよ。
    Posted by at 2015年09月17日 02:18
  8. 5と7に同意。
    管理人はちゃんとこの本を読んだのだろうか。
    もし読み切ってこんなことを言っているのなら、管理人は作品の本質を見る気がないのだと言わざるを得ない。もっとロドリゴの葛藤や筆者の表現に寄り添うべきだと思う。
    Posted by at 2015年12月20日 23:44
  9. 不毛の地というのはキリスト教的な言い回しではないでしょうか
    福音の種をいばらの地に撒いてはいけない、とキリストも言ってますし

    レビューも言っているように、この本を読むにはキリスト教の知識も必要なのではないかと
    Posted by at 2016年06月19日 20:27
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