2009年07月31日

海外の評価 - 宮本茂 - その4

宮本茂特集の第4回は、Timeの記事とBusiness Weekのインタビューです。

まずは、Timeの記事から。日本でも、宮本茂を「ゲームのスピルバーグ」と例えて紹介するニュース記事やバイオグラフィーなどを目にすることがあるかと思いますが、その呼び名を決定づけたのがこれです。今から13年前、1996年5月の記事です。


ゲーム界のスピルバーグ

『スーパーマリオ64』の陰の男は、ボサボサ頭の、バンジョーが趣味の日本人アーティストである。仕事へ行くのに自転車に乗り、ミッキーマウスのネクタイを締め、ドブロ・ギター(訳注:ギブソンリゾネーター・ギターのブランド。リゾネーター・ギターは、音量を増大させるために、円形の薄いアルミニウム製の共鳴板をブリッジの下に取り付けたギター)でブルーグラスの曲をかき鳴らして心を落ち着かせる。



↓ドブロ・ギター。初めて知りました。きれいな楽器ですねえ。

dobro.jpg


通常なら、こんな振る舞いでは、白シャツの「サラリーマン」の国で成功など及びもつかなかったところだろう。だが、宮本茂(43歳)は、子供たちをとりこにするゲームをかたくなに創りつづけることで、一流のゲーム・デザイナーの世界でトップに立ち、結果としてロックスター並みに崇拝される存在となった。……これは、日本だけの話ではない。
元ビートルズのポール・マッカートニーや、映画監督のスティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスらはこぞって、京都にある任天堂の名高い情報開発本部に詣でて、ゲーム界のスピルバーグとして知られる男に会いに行ったのだ。

宮本は1977年、任天堂初の社内アーティストとして1977年に雇われ、4年後、彼のお気に入りのストーリー、『キングコング』と『美女と野獣』からテーマを結合させて、あのヒット作ゲーム、『ドンキー・コング』を制作した。1985年には、キャップをかぶり、垂れ下がった口髭をたくわえた小さな作業員のスケッチから、世界で最も売れたゲームのキャラクター、配管工のマリオを作り出した(マリオシリーズの世界累計売上は、58億5000ドル(訳注:100円換算で約5850億円!))。

カートリッジ・プレイヤーの限界内で、成功するゲームを創ることは、言ってみれば、狭い東京のラブホテルに、出演するすべての俳優、すべてのセット環境をぎゅうぎゅうに押し込めるようなものだ。しかし、宮本は、Nintendo 64のパワフルな新しいグラフィック性能がこのすべてを変えるだろうと言う。「これまで、私たちは、できるだけリアルに見えるゲームを創ろうと四苦八苦してきました。でも、今、こうした問題は解決されたのです。この新しいエンジンはゲーム・クリエイターにとって真のチャレンジになるでしょう」。

父親でもある宮本は、二人の子供たちが、彼の創ったゲームがあまり上手くないとも告白する。しかし、おそらく、これは宮本が子供たちに1日2時間以上ゲームで遊ばせないせいだろう。彼はこう付け加える。「そういうのは、宿題が終わってからです」。

賢い父親とは、人がともすれば時間をすべてゲームに使ってしまうようになるとわかっているものなのだ。●



記事的には特別、目新しい情報はないとは思うのですが、宮本茂=ゲームのスピルバーグという位置づけは、他ならぬTimeがそう呼んだからこそ、広まったのは間違いのないところでしょうから、記念すべき記事ということで。

(蛇足ですが。「グラフィック性能」「チャレンジ」「リアルに見えるゲーム」のあたり。PS3かと思いました……。64、ゲームキューブの時代の任天堂は、Wiiとは真逆の指向だったんだなあと思うと、感慨深いものがあります。)


次は、1929年創刊、米国ビジネス雑誌の雄、Business Weekによる2005年11月の宮本茂のインタビューです。


マリオのパパに会おう。
伝説的なゲームデザイナー、宮本茂が、任天堂の新しいゲーム機で家族の団らんをどう目指すのかを語る。


任天堂のゲームの背後にある頭脳、宮本茂。彼は、どんなゲームを作れば、子供たちを夢中にさせられるか、そのコツを人々に示してきた。1985年、彼の『スーパーマリオブラザーズ』―世界で最も売れたゲーム―は、水平方向だけでなく、垂直方向にも画面を動かせるように展開された、初の画面スクロールゲームだった。翌年、彼は、世界が『ゼルダの伝説』と呼ぶ迷宮ファンタジーを世に出し、腕のあるゲーマーたちはこれをクリアするために、何時間も、ときに何週間もかけた。そして、1990年代には、Nintendo64のローンチタイトルとして、3Dグラフィックスの『スーパーマリオ64』が出た。これは、より複雑な操作に対応できるよう、標準ジョイスティックの調整を彼に強いたものでもあった。


スーパーマリオ64DS ファミコンミニ ゼルダの伝説1 ピクミン nintendogs ダックス&フレンズ


宮本茂、52歳は最近、Business Weekmの東京特派員、Kenji Hallに、ゲームがどう変わり、将来どうなっていくのかを語った。このインタビューの抜粋が以下である。


1980年代以降のゲームの最大の革新は何だとお考えですか?

最大のものは、Nintendo64の3Dグラフィックとプレイステーションでしたね。その前は、アーケードがゲーム技術の最先端でした。上下関係で言えば、家庭用ゲーム機は最下位でしたから。これを変えたのは3Dですし、これで家庭用ゲーム機がフロントランナーとなったわけです。

ですが、これだってすべてをひっくり返すような技術がすぐにでも現れるかもわかりません。規模の経済(訳注:生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上すること)のおかげで、ゲームのハードウェア・メーカーは新しいコンソールの開発に多くの資金を投入できるようになりましたからね。実際、僕らは突然、想像より10倍も早くて、ディスク容量も莫大なコンソールで仕事をしていたわけですし。


ヒットするゲームを作る秘密は?

新作だろうと続編だろうと、僕たちは、誰でもすぐにプレイできるものを創りたいんです。ルービック・キューブが素晴らしかったのは、ここだと思うんです。1980年代の初め、僕は日本の玩具コンベンションでこれを初めて見ました。ルービック・キューブは、見た瞬間に、ねじ動かせることに驚きますでしょ? 美しいデザインです。一度も触ったことがなくたって、手に取って試したくなる。そうして、一度やりはじめると、解けるまでは手放しがたい。


スーパー・コンピュータの力によって、ゲームのグラフィックは、キャラクターがほとんど命があるかのように作られるところまで到達しています。でも、あなたのゲームのキャラクターはほとんどマンガです。なぜですか?

昨今、ソフトウェア・メーカーはゲームを非常に現実的なものにしたがっています。しかし、トップに立つ一流のゲームは、感情を呼び起こすものでなくてはなりません。『ピクミン』を創ったとき、僕はみなさんに哀しさと幸せの両方を感じてほしかった。日本語に愛しいという言葉があるのですが、これは誰かに愛情を感じたときに使われます。通常は、ゲームで遊んでいるときに、こうした気持ちを感じることはないものでしょう。でも、僕はここに真剣に努力したのです。

ゲームは今、リクリエーションというだけでなく、次のステージに向かおうとしています。よく、(訳注:感情を喚起するようなゲームなんて)つまんなすぎる、誰も、そんなふうなゲームなんかやりたがらないだろうって言われるのですが、僕はそう思いません。


そういったゲームのターゲットとして、特定の年齢層は考えていますか?

僕たちのゲームは、5歳から95歳までのあらゆる人を対象にしたいと思っています。

「任天堂は子供向け、ソニーは大人向け」なんて言う人たちには、賛成できません。僕たちが創ったゲームで遊んでいる60代の人々はたくさんいます。20代の女性だって、これまではゲーム・メイカーの主流ターゲット層ではなかったけれど、今は多くの若い女性が僕たちのゲームが楽しいと気づいてくれている。特に『Nintendogs』です。


あなたにとって、ゲームで最も重要な要素は何ですか?

最も基本的な要素は、楽しさです。ゲームはインタラクティブなものです。ゲームがあなたに挑戦し、あなたがその挑戦を乗り越えれば、ゲームはそれに報いてくれる。僕の考えでは、ゲームは、人がゲーム機に触った瞬間から始まっているんです。……すべてはそこからなんです。
僕が最初にゲームを創りはじめたとき、大きく言えば、みんなを驚かせるようなものを創りたいと思っていました。実際は、TVゲームを創ることになるだろうとは思っていなくて、ルービック博士のルービック・キューブのような玩具を創ろうと思ってましたから。


ゲームのアイディアはどこで?

思い出すのは難しいですねえ。子供時代の経験が頼りになることもあります。たとえば、自分がなにを怖いと思ったかとか。偶然出てくるアイディアもありますし、ずっとノートに書き留めていたものから出てくることもあります。見たものや聞いたものは、付箋に書き留めてスケジュール帳に貼っておく習慣なんです。ゲームもあるし、テレビで見た可笑しいものもあるし、誰かから聞いた話もあります。


『スーパーマリオブラザーズ』のときはどうだったか覚えておられますか?

単純なアイディアです。こう思ったんですよ。「ぴょんぴょん跳ね回るキャラクターがいたらどんな感じだろう」って。「背景は、きれいな青い空がいい」。そのアイディアをプログラマーにもっていって、それから創り始めたんです。

マリオはなんだかんだで大きくなりすぎてしまって、僕らは彼を小さくしたんですが、そしたら今度はこう思いました。「マリオが大きくなったり、縮んだりしたらどうかな。どんなふうになるんだろう。これは、魔法のキノコにしなくちゃ! キノコはどこで育つ? 森だ」。マリオにガールフレンドを作ることを思いついたときには、『不思議の国のアリス』の話をし始めてたんですよ。(訳注:言わずもながではありますが、念のため。アリスは物語中で大きくなったり小さくなったりします。)


任天堂の次世代ゲーム機は、他社のとはどう違いますか?

ほとんどの人は、ゲームと言ったら、手にジョイスティックをもって、TVをじっと見つめている子供と考えていると思います。僕は違うんです。ゲームは家族みんなのものじゃないといけない。僕は、家族みんなでゲームを遊んでほしい。これが次世代ゲーム機のコンセプトです。
それと、次世代ゲーム機のコントローラは通常のテレビのリモコンのように見えるように作り直しました。なので、見た人はみんな、すぐにどうやって使うのかわかるでしょうし、これがどこかで埃をかぶったままにはならないだろうと思っています。


好きなゲームはありますか?

ゲームをプレイする時間はたぶん20分ぐらいです。他社の新しいマシンをテストするときぐらい。自分の自由時間にゲームはしないんです。週末は、家とか庭の周りを修理したり、ギターを弾いたり。そうじゃなかったら、エクササイズでしょうね。水泳に行くとか、犬を散歩に連れてくとか、ハイキングに行くとか。


将来、ゲームはどうなっているとお考えですか?

テレビで遊べるゲームを作るというのは、便利です。でも、僕がいつも願っていたのは、典型的な四角いブラウン管じゃない、カスタムサイズがあったらなあってことです。ずっと思っているのですが、いずれゲームはテレビ画面の境界から自由になって、部屋全体いっぱいになるようなものになると思いますよ。でも、これについては、これ以上は言わないほうがいいでしょう。


ゲームのスピルバーグと呼ばれてきましたよね。最近、ゲームのソフトを使って映画を作っているゲーマーたちがいますが、ゲームと映画は1つにまとまるものでしょうか?

よくある比較ですが、僕は適切じゃないかなと考えています。だって、映画は、ゲームみたいにインタラクティブなものではないですから。とはいえ、僕はすでに多くのものを映画から学んでいますよ。たとえば、映画が雰囲気を作るために音楽をどう使っているか、カメラアングルはいくつか、監督は怖い場面をどう作ってるか、そういうことに注意を払っていますから。



1996年時点では、いかにリアルに見えるかに執心していた宮本茂が、9年後にはゲームはそういうものではないと答えているのが面白いなあ、と。
こういう言葉の変遷を悪しく言うかたもいらっしゃるのかもしれませんが、最先端にいる人というのは、方法論は常に刷新されていくものなのだろうと思いました。このかたのゲーム作りの核は、このインタビューでも語られているように一貫して「楽しさ」であり、そのための方法論をさまざまに試行錯誤しておられるのだなあと思った次第です。


それから。「テレビ画面の境界から自由になって、部屋全体いっぱいになるようなもの」……近い将来、任天堂から発売になったりするんでしょうか。長生きしたいです。


明日は、米誌Peopleの記事です。



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<雑記>
↓今日のアマゾンのゲーム売上ランキング1〜4位。モンハンがドラクエを蹴落としましたねー。そのうえ、トップ1、3、4位すべてモンハン。明日発売ですから当然ですな。これも海外ですぐにニュースになるんでしょう。

   
posted by gyanko at 21:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. はじめまして!
    最近このサイトを知り、いつも楽しく読ませてもらってます。

    朧げな記憶ですが、宮本さんは時のオカリナを作った時
    「このゲームは映画を超えた」と発言していた気がします。
    なので既に64の時点で目標は映画だけでは無くなり
    DSやWiiの頃には
    人々の無関心、その他全ての娯楽が挑むべき目標になったのではと思いました。

    それにしても、宮本さんの語るゲームの将来には夢がありますね、期待です。
    Posted by at 2009年08月01日 10:36
  2. 視覚に訴えるより感情に訴えようっとメモメモφ(..)
    Posted by 犬彦うがや at 2009年08月03日 10:44
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