2011年07月20日

海外ゲーマーの反応 - 日本人プロ格闘ゲームプレイヤー、梅原大吾Q&A その2-

本日は、以前のエントリの補足、Part 3です。最終回だけないというのも、すわりが悪い感じなので。

元記事はこちらから。


みんなの質問に、大吾が答える。(最終回!)

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世界中の戦士たちがEVOワールド・ファイナルに備えて準備している今。去年のチャンピオン、梅原大吾(今年も3年連続の優勝を彼は狙っている!)に対するみんなの質問の最終回をあげるのにはちょうどいいときだ。最終回では、大吾のメンタルの強さ、ニックネーム、プレイで彼がインスパイアされるものは何か、そしてフィジカル・フィットネスについてまで答えてもらった!

前回を読み逃がしている人は、Part 1Part 2から。

1) トーナメントの試合のとき、冷静さをいつもどうやって保ってるのですか?

大吾
:経験によるところが大きいです。要は、日々の練習だとか、トーナメントの雰囲気に対する慣れですね。トーナメントにはもう何年も出てますから。
そういう経験のおかげで、感情的に反応せずに、論理的に考えられるよう訓練されました。状況を分析したり、試合内容とか個々のプレイヤーのスタイルに応じて、どういう行動をとるのがベストなのかもわかるようになりましたし。これはもう(考えなくてもできる)身についた癖みたいなものです。

2) 大吾さん!ずっと知りたかったことがいくつかあります。今、あなたのニックネームはビースト(野獣)ですけど、子供のころニックネームはありましたか?

大吾
特になかったです。ウメって呼ばれてました。

3) あなたは、仮に格闘ゲーマーのベストじゃないにしても、少なくともベストの一人ですよね。ゲーム以外で、そんなに得意ではないけど、これは上達したいなってことはありますか?

大吾
:そうですね、…僕は自分自身のことをよくわかってます。なにかが楽しいってなると、すぐ自分を見失って入れ込んでしまう。なので、ほかのものに執着しないようにしてます。そうやって、気が散らないように、面倒なことにならないようにしてます。

4) 大吾、僕は、人としても、『ストリートファイター』のプロ・プレイヤーとしても、あなたをものすごく尊敬しています。僕の質問は、たとえば、『ストリートファイター』とかでも、新作に順応するまでどのぐらいの時間がかかるのかってことです。
それから、格闘ゲームのどんなところが好きですか?たとえば、人と競い合うときの気持ちの盛り上がりだとか、コンボを発見することだとか、トリックやセットアップだとか。

大吾
:うーん……。答えにくいけど、たぶん3ヶ月ぐらい?格闘ゲームの一番好きなところは、経験レベルは関係なく、誰でも簡単に覚えられて、対戦を楽しめるところ。

5) トーナメントで対戦した相手で、インスパイアされた人は誰ですか?

大吾
:誰かプレイヤーの名前をあげられるといいんですけど、トーナメントの対戦相手となると、この人というのは思い浮かびません。ただ、自分の気持ちに確実に影響を与えたプレイヤーはたくさんいます。そういう人が多ければ多いほど、気持ちもあがりますし、そのあたりがEVOの素晴らしさの理由の1つでもありますね。

自分のゲーム・キャリアにインスピレーションを常に与えてくれる存在としては、父親です。僕がやりたいことはなんであっても応援してくれたし、父親のおかげで、全力を尽そう、最高の自分であろうっていう意欲が出ます。両親の寛容さと暖かいサポートにはすごく感謝してます。

6) たぶん、ちょっと場違いな質問だろうとは思うんですが、フィジカル・フィットネスをどう考えてますか?ハイ・レベルなトーナメントの対戦に向けてメンタルやフィジカルを備えるっていう意味で、フィジカル・フィットネスって有効だと感じてますか?

大吾
:メンタルの強さは、格闘ゲームで大きな部分を占めます。メンタルが強いっていうのは実際、心が安定してるとか健康だってことでもあるし。ひよったり、がっつくと、ミスにつながりますよね。僕はそういうミスは、メンタルのバランスがとれてる限り、避けられるものだと考えてます。

で、メンタル的にバランスのとれた状態を保つには、健康な体が確かに必要。格闘ゲームをやるのに、ものすごい上腕二頭筋が要るとは思いませんが、メンタルの調和のために相当量のエクササイズをすること、日々ワークアウトを習慣にすることはお薦めします。●



コメントは、この記事についたものと、こちらから。


■毎年、この男が負けてくれないかなあって願ってしまうってのも、妙な話だよな。自分ではこういう感情は普通だと思っていたが、考えてみると変だわ、やっぱ。

■3年連続優勝だろ、おそらく。

■この男は本当に成熟してるよ。……みんないつだって、日本人や大吾をものすっごく尊敬してるとかって言うだろ。でも、こういうインタビューと、西欧のプレイヤーのゴミみたいなインタビューを比べると、品格の差は明らかだし、大吾がこれほどまでの尊敬を受ける理由もよくわかるってもんだ。…これはもう、大吾が格闘ゲームがうまいとかってこと以上の話なんだよ。

■両親が応援してくれてるってのがクールだ。親ってほとんどが、「こんなゲームやったら暴力的になっちゃうから」とか「外に出て、新鮮な空気を吸ってきなさい」だとか言うもんだろ(笑。

ハードコア・ゲーマーだって自活して、みんながやるような普通のことだってやってるんだって理解してほしいよな。

■たった3ヶ月?! そんな見栄張らなくたって!

 ■↑一日あたりの練習時間を考えろよ。しかも、毎日だぞ。

 ■↑オレは、1)の質問に対する答えのほうが信じられない。

  ■↑お前、ビーストを疑うってのか?!

 ■↑彼はもう長いことトーナメントにも出てるし、格闘ゲームもプレイしてるんだ。そんなに驚くことでもないだろ。3ヶ月ってのは、キャラ対策にしろ、コマンド入力にしろ、覚えるには適正な時間。

一度、格闘ゲームのおおよその戦略を覚えてしまえば、新作が出ても学習するのはそんなにむずかしくないよ。

しかも、ゲームで生計を立ててるんだ。これ以上、最高の環境はないだろうしね。

■サー(Sir)、いつか、……また対戦する日がくる。そのときまで、オレは自分に言い聞かせる。スキルを磨いて、ミスをなくす、なんとかして。……また対戦しましょう、ミスター梅原。

■母親:大人になったら、何になりたい?
息子:ゲームのトーナメントで優勝したい。大吾に勝つ。
母親:ピシャ!(平手打ち)。大吾に勝てるわけないでしょ!彼はビースト(野獣)なのよ。
でも、これは覚えておいてね。大吾には勝てないけど、あなたはあなたがなりたいものになれるのよ。

自分が大好きなことをやって生計を立ててるんだな。大吾はアメリカに来て、アメリカン・ドリームを少しばかり手にいれたように思うよ。

■両親のサポートがあるってのはいいよなあ。普通じゃ考えられん……。

■両親のサポートがあるってのは、確かに普通じゃない。特に、日本のスタンダードを考えたら。

ゲームを覚えるのに3ヶ月ってのは、それほど速いとは思わないけどね。一番大事な基本的なものを覚えるなら、そのぐらいで足りる。
基本を覚えた後に、もっと特別な知識や能力を身につけるんだし。もともと、格闘ゲームの経験が備わってたら、3ヶ月ぐらいのもんでしょ。

■フルタイムの仕事として、ゲームをやるってのはつらいよ。……大吾のためにも、彼が30歳を超えたあたりで、カプコンがテスターかなんかで雇ってくれないかなあ。じゃないと、大吾の若さと未来をゲームのために捨て去ることになるんだよ!!!

 ■↑オレはそういうふうには思わない。彼は今やってることが本当に好きなんだよ。好きなんだから、時間の無駄なんかじゃない。

なあ、自分の仕事に100%幸せを感じてる人間が世の中にどれぐらいいると思う?彼は明らかに、100%の幸せを感じてる人だ。

未来は誰にもわからない。でも、大吾は格闘ゲームのコミュニティでこれほどのビックネームになったんだ。プロゲーマーとして現役を終えても、なにがしかの仕事にはきっと就けるよ。



思ったよりさくさくと終わったので、小ネタをひとつ。


ビーストの心の内側:梅原大吾

今年のEVO(訳注:7月29〜31日)では、米国カプコンのセス・キリアンが、おそらくこの地球上で最も有名な『ストリートファイター』プレイヤー、梅原大吾にインタビューする。このパネルへの参加は、EVOに参加登録して、バッジをもらった人が優先される。なので、今日すぐ参加登録してくれ!

パネルの概要は以下。開催時間は、7月29日金曜午後2時から。

セス・キリアンが、EVO2009〜2010年の『ストリートファイター』チャンピオン、梅原大吾(Madcatz所属)と膝を交えて、突っ込んだ話し合いと、過去の対戦のハイライトを振り返る。戦略、人読み、そのときそのとき何を考えていたか、勝利への道の途中で犯したミスのことまで、セスと梅原が語り合う。

こればかりでなく、当日のラスベガスの会場では、MeatBunの新しい「ビースト」Tシャツも販売される。

この新しいTシャツのデザインには、伝説の白澤(ビーストだ!)があしらわれ、「98」という数字も入る。98とは、大吾がアレックス・バイエを相手に海外に初めてチャレンジした年のことだ。このときの闘いは最近、プロ・ゲーミングの歴史的瞬間トップ10の1つにも選ばれている。これは究極の限定版Tシャツになるだろう。価格は20ドル。●

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■ワオ。ファンタスティックなデザインだ!マジでほしい。

■EVOに行けない場合は、どうやって注文すればいいの?参加者しか買えないの?

■このTシャツ好きだ。でも、これ着てたら、自分が完璧な大吾の追っかけみたいな気分になっちゃうだろうな。「最初っからなにもしないで負けてます!」って叫んでるに等しいというか…。

たぶん、大吾と実際に対戦したら、こんなふうに思わなくなるんだろうけど。

 ■↑100%同意だ(笑。

■これまでの自分の対戦について大吾がどう話すのか聞きたいよ。……頭の中で何を考えてたか知りたい。大吾のインタビューって、どれもこれも「どうしてあなたはそんなにすごいんですか?」みたいなのばっかりじゃん……。

■Tシャツ、カッコいい。買うつもり。でも、これ、Vネックにすべきだったと思うなあ。

 ■↑Vネックなんて、にやけたイケメン風味で嫌。

 ■↑Vネックの男だけは信用するなって父親につねづね言われてる。

■EVOの後に売ってくれるなら、発売日を教えてくれよ。

■ワオ。パネルにTシャツかよ!どんだけへつらう気だよ。こりゃもう「オレたちやられちゃってます」ってことを完璧に表現してるとしか。

■大吾Tシャツを買ったら、……そう、キミはもう立派なファンボーイ。

■オレたちはどうやれば、アメリカのプレイヤーに関係した商品を買おうって決断できるようになるのかって話じゃない?

■↑確かにな。悲しい話だなあ。

■このTシャツ好き。オタクっぽく見えないのに、実はめちゃめちゃオタクっていうあたり。

■(ファンであることを示すには)大吾にフェラチオするよりは、このTシャツを着たほうが手っ取り早いと思う。

■日本の野球のTシャツみたいだけど、……まあ、OK。

■格闘ゲーマー個人のTシャツかよ!(笑



インパクトのあるTシャツですなあ。



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posted by gyanko at 20:08 | Comment(46) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月14日

海外記事:社員3人の会社ですが、日本のゲームのローカライズをやっています。

本日の記事はこちらから。

英雄伝説 空の軌跡FC

英雄伝説 空の軌跡FC』は日本ではWindows版が2004年、PSPで2006年10月にリリースされましたが、北米では今年3月にやっと日の目を見ました。ニッチなゲームとはいえ、米amazonでの評価はほぼ満点という高評価。

ローカライズを担当したXseed(エクシード)は、米国スクエニの元スタッフが設立。主に日本のゲーム会社向けに、北米におけるローカライズ、マーケティング・サポートや販売を行なっています。マーベラス・エンターテイメントと2008年から提携。2011年にマーベラスに吸収合併されたAQインタラクティブ・グループ傘下。


Q&A:日本のゲームを米国へもってくるためのXseed(エクシード)の秘密。

日本のゲームの話となると、アメリカ人はこれまで何十年も冷たい扱われ方をしてきた。今ですら、米国にたどり着くことのない外国のゲームは数え切れない。これは、きわめて厳しい企業方針と保守的な発売元のせいだ。

日本で高い評価を得て、商業的にも受けが良かったにもかかわらず、『ゼノブレイド』や『ラストストーリー』が、米国向けにローカライズされることはないというニュースは記憶に新しい。これには多くのファンたちが冷静さを失い、大騒ぎとなってしまった。

だが、この潮流も変わりつつあるように思う。アトラス、アクシス、エクシードといった小さなローカライズ会社が、『ラジアントヒストリア』や『極限脱出 9時間9人9の扉』のようなニッチでハイクオリティなゲームを米国にもってくるようになっているのだ。
特に、エクシードは、『勇者30』や『Y's』シリーズをローカライズすることで、ハードコアな米国のゲーマーたちの間に自社のファン層を開拓している。


(訳注:
アトラス:アトラスの米国法人。ローカライズに定評があり、熱心なファンに支持されている。自社のゲーム以外にも、他社のゲームのローカライズと販売も行っている。

アクシス:日本のゲームを英語圏市場向けに翻訳、ローカライズしている企業。『ギルティギア』シリーズのローカライズで名を上げた。)

エクシードは、どんなゲームなら米国にもってこれると判断しているのだろう?ローカライズのプロセスは?エクシードの編集主任であり、PSP向けの素晴らしいRPG『英雄伝説 空の軌跡FC』の米国ローカライズの影の力、ジェシカ・チャベスにインタビューし、エクシードが日々、ゲームに海を渡らせるためにどんな格闘をしているのかを聞いた。


◆まず最初に、エクシードのローカライズのプロセスについて、ちょっとうかがってもいいですか?

ローカライズは大変厄介です。まず、ゲームを見つける。社員全員でそのゲームを審査。それで十分に良作で売れそうだとなれば、著作権の問題に取り掛かり、その後、鍋の熱が冷めないうちに、速攻でゲームをローカライズ部門に送り込みます。熱々のうちに、ローカライズ部門のマネージャーのケンジのところで、こうなれば良いという希望のもとで綿密なスケジュールを組むんです。

……でも、スケジュールとは行っても、当然のことながら守られた試しはないんですよ。必ずなにか問題が出てきますから。たとえば、テキストが遅れてるとか、品質監査でゲームを壊滅的なまでにクラッシュさせてしまったとか、マスター提出が承認されなかったとか、ノイローゼは交代でかかるものなのに、全員が同時にノイローゼになったとか。

仮定の話ですけど、もしなにも問題が起こらず、ゲームというジャガイモが翻訳者のトムのところへ渡るとします。トムがそのジャガイモをアルミフォイルで愛情を込めて包み、それを編集の私のところへもってくる。私は、それにチーズとアサツキ、ベーコンを加えて、ケンジのところへ渡す。ケンジはそれを炭火でグリルして、品質監査へ(別名バグ・ハンター)。品質監査を滞りなく通過すれば、そこでやっと最終承認を得るためのマスター提出となります。食べる準備が整ったというわけです。

言うまでもなく、このプロセスはカオスです。一年はかかりますし(『英雄伝説 空の軌跡FC』のことです!)、壁中にジャガイモの破片が飛び散るなんて惨状にもなりがちです。

食べ物でたとえるのをやめて簡単に話せば、雑ですがこうです。

クールなゲーム発見!→スタッフで吟味→ライセンス取得→ゲームのテキストをローカライズ→翻訳→編集→品質監査→マスター提出→フィナーレ!

で、上記のプロセスの中に、ESRB(米国のゲーム審査機構)やPEGI(欧州29カ国を対象とするゲーム審査機構)があったり、プログラミング上の災難が降りかかったり、人間がこわれたりするわけです。

◆日本語の大量のテキストを受け取って、それを社員や翻訳者で分け合うという形ですか?

そうですね、…まずわかっていただきたいのは、エクシードというのは小さな会社なんですよ。つまりですね、…ものすっごーーくちっさい。だから、膨大な量のテキストを英語にしなきゃならないとなると、社員だけじゃまかなえません。

だって、社員といったって、1) トム(我が社のたった一人の翻訳者)、2) 私(我が社のたった一人の編集。必要に迫られれば、トムも編集に参加)、3) ケンジ(ローカライズ部門のマネージャー、なんとかしてすべてを動かす人)だけですから。

でもって、ローカライズの作業がエクシードの仕事のほぼ2分の1を占めているとなれば、もうわかっていただけると思います。我が社は、まともなサッカー・チームさえ作れない人数の会社なんです。

そんなわけなので、毎日、私たちは神経質にちょこまかと動き回っています。カニみたいです。わき道をちょこちょこと走り回って、上から岩でも落ちてきやしないかとしじゅう目玉をぐりぐりさせて。……手早く仕上げようとあまりに高速で取り組みすぎると、ドデカいテキストの岩に押しつぶされて、私たちがぺしゃんこになってしまいます。

ファンの人たちは、もっと早くやれとか、もっとたくさんゲームを出せとか言います。でも、覚えておいてほしいのは、カニっていうのは、興奮してあんまり叩くと、目玉がぐるぐる揺れ出します。これはですね、SOSの緊急信号です。

◆翻訳の作業をしながら、ゲームをプレイしたりしますか?

時間が許せば、絶対にやります。時間が許さない場合でも、翻訳で言わんとしてることがわからなくなったら、……毎日、仕事時間を2時間増やしてプレイします。現在は、時間があるので、トムは翻訳しながらPSPのホラー・ゲームをやってますね。ヘッドフォンしてるトムが小さい悲鳴を上げたりするので、みんなで面白がってます。

◆あなたの一日について、少し聞かせてください。

朝は早いです。バスに乗って出社、バスで帰宅の毎日です。冗談だといいんですが、マジメな話、路線を変えてバスを乗り継ぐので、通勤に往復3時間かかってまして。(でも、会社にとっては利点もあります。乗り継ぎを待つ間に、ローカライズ中のゲームをやったりしますから)。

典型的な1日はこんな感じです。

5:45 a.m.: 終わりなく続くエクセルのスプレッド・シートの悪夢から目覚める。
6:30 a.m.: カバンに入れたノートパソコンに骨盤を軽快に叩かれながら、バス停まで走る。
7:40 a.m.: DSのタッチペンをこれみよがしに見せながら、バス内のホームレスを避ける。
8:35 a.m.: ゲームのニュースとTwitterをチェックしながら朝食。
11:11 a.m.: ホーソーン通りの車の4重衝突事故にも気づかないほど、テキストに没入。
12:58 p.m.: 山田屋のラーメン・ランチに心の慰めを見出すため、オフィスから逃亡。
2 p.m.: システム・テキストを編集。コンマが入っていないところを発見し、お祝いのコーヒーを飲む。
3:45 p.m.: 会社の鉄棒で懸垂を5回。お祝いのダイエット・コークを飲む。
4 p.m.: システム・テキストを編集。
4:05 p.m.: Twitterに、つやつやしたゴムのアヒルについて詠んだ俳句を投稿。
5 p.m.: メイン・テキストを編集。
6 p.m.: メイン・テキストを編集。「今日、私は友人を食べた」というキャラクターの台詞がなにを暗示しているのか考え込む。
6:50 p.m.: バス停へ向かって走る。
7:57 p.m.: 永遠に来ない乗り継ぎを待ちながら、DSをプレイ。
8:40 p.m.: 帰宅。

◆『英雄伝説 空の軌跡FC』は本当に愛のこもった労作で、感動しました。ローカライズのプロセスで、どのぐらいまで創造の自由度があるんでしょうか?このゲームには、かなり派手な(同時に素晴らしい)ユーモアだったり、魅力がありますけど、これはオリジナルの日本のライティングからはどのぐらいかけ離れてるものなんでしょう?

「労作」ってところ、太字で大文字にしておいてください。あと、「愛のこもった」ってところも。
『英雄伝説 空の軌跡FC』は、ネットでは愛情を込めて『TitS』(訳注:Trails In The Sky)と呼ばれて、大事にされています。ファルコムの開発チームと私たちローカライズ・チーム両方がたくさんの愛を注いだ大作なんです。

ファルコムといっしょに仕事ができたことは、ものすごく幸運なことでした。ファルコム側は、できうる限りあらゆるレベルでこのゲームが確実に輝きを増せるように、私たちに自由度を与えてくれましたから。
この自由度は、たとえば宝箱のメッセージ等をある程度、こっちで改変することまで許してくれるものでした。これまでだったら普通に「宝箱は空だった」となるところを「ピエロがからかった。やあ、また会ったね!」って感じに。

これはマーケティングのためというのもありますが(宝箱の1つに秘密のパスワードがある(訳注:公式サイトでこのパスワードを入れると、着メロと壁紙をダウンロードできる))、理由のほとんどは私がそのほうが面白いと思ってしまって、調子に乗ったせいです。

海外のマーケット向けのゲーム翻訳というのは、どこと仕事をしているかということに左右されるところがあります。『空の軌跡』の場合は、もともとからして、普通ではないキャラクターと世界観をもったゲームでした。これが、翻訳や編集でちょっと魔法をかけるのを本当に助けてくれましたね。

私たちのところの翻訳者はみな、英語への翻訳の際にちょっとした好みをもっています。
ジョン・シアーズは、ゲームの中に出てきた本やアイテムに関して、知ってる限りの解説を入れます。
ジェフ・ヌスバウムは、キャラクター同士の会話を訳すのがうまいんです。感情を表現したり、コメディの間合いが上手い。
クリス・クラツは、オリビエ・レンハイム(訳注:『空の軌跡』の登場キャラクター)に、オリビエかくあるべきという輝きを与えるために労苦をいとわなかった。

編集方面では、私は、キャラクター同士の、ある関係を強調しました。細かいところをいくつか調整したり、アドリブを入れたりして。とはいえ、とにかく、まずはゲーム自体が良作でしたよね。私たちはそのうえに仕事をしたというだけのことです。

◆全体として、日本のRPGの品質にローカライズがどんな影響を与えていると考えていますか?うまくローカライズすれば、それが直接的に米国での受けに繋がるとお考えですか?

ローカライズが、品質の点でもJRPGの受けという点でも、大きな影響をもつ時代なのだと信じています。客のほとんどはおそらく20〜35歳の層。彼らは、ちゃんとした理由があって、私たちが子供だった時代より、テキストにうるさいんです。

80〜90年代は、日本産とくればどんなゲームでも、ただもう買えるだけで素晴らしい時代でした。でも、今は、ゲームをローカライズする会社も数社ありますし、業界的な話をすれば、今のほうがローカライズがうまくなってると思います。だって、この20年以上修練を積んできてるんですから。

良いゲームっていうのは、必ず日の目を見ます。でも、良いローカライズの良いゲームは、それだけでなく、リリース後もずっと人の心に残っていける。もしローカライズがひどかったら、せっかくの良作が台無しになってしまう場合だってあります。

◆ローカライズという点で、これはという刺激を受けたゲームはありますか?あなた的に、JRPGのローカライズで、素晴らしいと思った作品を。

自分がやった仕事ということでは、他のゲームからの影響はあまりありません。(もう今は他のゲームをする時間がもうないんです!)。ダグラス・アダムスの突飛な言葉の使い方、モンティ・パイソンのふざけた間合い、疲れすぎてて感覚がおかしくなってるときのジョークなんかからインスピレーションを引っ張り出したりします。


訳注:
ダグラス・アダムズ:英国の脚本家、SF作家。全世界で1500万部売れた『銀河ヒッチハイク・ガイド』の作者。

ローカライズのスタンダードというのがあるなら、本当に知りたいです。世間には素晴らしいRPGのローカライズがたくさんありますよね。最近のタイトルとしては、『ロストオデッセイ』は、多くの配慮が行き届いた一級の作品だったと思います。

結局のところ、JRPGの良いローカライズとは、1) オリジナルの脚本の意図にできるかぎり忠実であること、2) まず客ありきということを忘れない、3) 面白いところを面白く(原文の面白さという意味で)。このあたりが私が気をつけているところです。

◆これは、私が絶対聞こうと思ってたことなんですが。『空の軌跡』3部作の残り2作に取り掛かる予定があるのかどうか。お願いですから、あると言ってください。

ちょっとばかりタフなことになりますね。『英雄伝説 空の軌跡SC』は、『空の軌跡FC』よりさらに大きくて、恐ろしいほどのボリュームなんです。
プラットフォームに関する問題もいくつか抱えています。特に、ローカライズが終わってリリースされる頃には、UMDがもう使われていないかもしれないということ、かといってPSNでダウンロード・オンリーのタイトルとして出すわけにもいかないというのがありまして。他の選択肢がないかどうか、ファルコムと話し合っていこうとは思っているのですが。●



コメントは、この記事についたものと、エクシードのfaceBookのほうからも。

■『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』はどうしてローカライズしなかったの?(訳注:『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』はエクシードがローカライズ販売)。あのゲームには十分な需要があると思うんだ。クールなゲームだったし、絶対にホットケーキ並みに売れるって。ネットでも出せってわめいてるよ。
テレビ番組のほうはKotakuが1シーズン分の放映権を買ったって。『2』を出さないなんて、なんてことだよ。

 ■↑『1』があんまり売れなかったから、『2』はエクシードがパスしたってしばらく前読んだのを覚えてる。ただ、番組のDVDのほうは米国発売をスタイルジャムが探ってたけど、それもあんまり捗らなかったみたい。Kotakuであの番組が再浮上したとは驚きだよ。これでたぶん、ゲームのほうにも関心がもっと集まるんじゃない?

 ■↑ホットケーキ並みになんて売れてないだろ。特に、DSゲームの制作費を考えたら、悲しい売上だ。Kotakuの件は、ゲームへの関心を引き寄せるだろうとオレも思うけど。

  ■↑『1』がホットケーキ並みに売れたとは言ってないよ。『2』が売れるだろうって言ってるの。続編ってのは初作より売れる可能性があるからね。
せっかく続編が出てるのに、自分の言語でプレイできないなんて最低だよ。

『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』は大きなファン層を作った(売れなかったのに)。続編には高い需要がある。みんなブログでこのゲームのこと書いてるし。
本当にこんなガッカリしたことないよ。ありがとう、エクシード。

こんなんで「まず客ありき」なんてよく言うよ。

  ■↑キミの市場調査では『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』はホットケーキ並みに売れると。オレだって英語版で『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』をやってみたいが、エクシードがパスした理由は理解できるよ。特に、初作よりテキスト量が多いってあたりで(テキストによるアドベンチャー・ゲームがいくつか入ってるから)。

全体として、エクシードは良いローカライズをやってるほうだよ。ニッチだけどグレートなゲームをかなりの数、こっちにもってきてくれてる。売れ行きの良くないゲームのせいでビジネスから撤退するぐらいなら、ちゃんと商売して金を稼いでほしいよ、オレは。

ファンの声に耳を傾けるってのはいいことだけど、いろいろある不可欠な要素のうちの1個にすぎないからね。

■スゴい仕事って感じがするわ(ものすっごくカオスでもあるんだろうけど)……。

■ワオ。この人、通勤時間をなんとかしたほうがいいよ。

■そもそも日本人って、ファンタスティックかつ、しばしば露骨なぐらいのユーモア・センスがあるって思ってたんだけど、(ユーモアをローカライズで加えなきゃいけないとか)どういうこと?

■今月の初めにPSNで『ウィザードリィ 囚われし魂の迷宮』を見て、良い意味でびっくりした。『ウィザードリィ』をプレイしたのは80年代の初期だったけど、まだ続いてたんだな。
どうも、このゲームは日本とエクシードに活路を見出してたみたいだ(訳注:『ウィザードリィ』は特に日本で人気が高いようです)。それで米国に戻ってきたわけだ。ありがとう!

■うーん。反論するわけじゃないけど、エクシードの翻訳は忠実なほうだと思うよ。創造性が足りないぐらい。『FRAGILE 〜さよなら月の廃墟 〜』の翻訳は遊ばないでほしかったなあ……。

■エクシード、お願い。『戦場のヴァルキュリア3』を米国と欧州にもってきてくれるようセガに頼んで。たぶんエクシードならもってこれる。もってきてくれたら、オレたち、『戦場のヴァルキュリア』ファンは本当に恩に着るよ。お願いします……。

■エクシードは、『ゼノブレイド』や『ラストストーリー』、『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』をもってこようとは考えてないかもしれないけど、絶対に、『アースシーカー』と『天空の機士ロデア』は考えてるはずだと思うんだ。

 ■↑いいね!特に『アースシーカー』は絶対に手に入れたいんだ。トレイラーを見て、マジで惹かれた。

↓『アースシーカー』トレイラー。
Earth Seeker intro trailer


■『アースシーカー』のライセンス取得をエクシードが考えてるなら、まず言っておきたい。僕、絶対に買いますから!

■『英雄伝説 空の軌跡FC』をクリアしようとしてるところ。本当に素晴らしい仕事をしたよ。こんな素晴らしいゲームを米国にもってきてくれてありがとう。続編が待ち遠しいよ。

■『Solatorobo それからCODAへ』、楽しみにしてるからね!がんばれ、エクシード!

■『Solatorobo』は米国リリースが発表されたね。でも、アートブックとCDのついたコレクターズ・エディションの翻訳版がこっちにくる可能性はある?

■エクシード、『ゼノブレイド』、『ラストストーリー』、『パンドラの塔』を求めてる僕たちをなんとかしてほしい。本当に死ぬほどほしいんだ。この素晴らしいゲームを。米国任天堂はなにもしてくれない。お願いできないかな?

■親愛なるエクシード。『空の軌跡』の翻訳は本当に素晴らしかった。『2』と『3』もやってくれるのかな?このグレートなゲームをもう何周もしてる。続編がどうなってるのか知りたいんだよ!(泣

■『Solatorobo』のリリースが今日、僕の国、スウェーデンで発表になったんだ。めちゃめちゃ興奮してるよ。でもね、僕はエクシードを応援するために米国版を買うからね!

■『Solatorobo』の北米ローカライズ、本当に感謝したいわ。ロウ・リスク、利ザヤ優先のこの業界で、ファンのためにこういうリスクを受け入れてくれる会社は数少ないよね。

■これほどまでにすごいゲームももってきてくれたことに感謝したいよ。実は、『Y's』シリーズをプレイするまでは、どうしてエクシードのゲームがこんなに激賞されるのかさっぱり納得がいってなかった。けど、プレイしてわかったよ!

■『空の軌跡FC』クリア。続編希望。ただ、戦闘ボイスを日本語のままにしてほしいんだ。日本人声優の声のほうがマジで好きだから。

 ■↑完璧に同意。吹き替えがそう悪くないって場合でも、やっぱ日本人の声がいいんだよ。

 ■↑(エクシードから)日本語音声が入らないのは、たいていの場合、1) メディアに日英双方の音声を入れる余裕がない、2) 日本人声優の声は、権利的に日本国内でしか使えないというのが理由です。『空の軌跡FC』は両方に引っかかりました。でも、将来のプロジェクトではがんばっていくつもりです。

  ■↑日本国内でしか使えないなんて、……ああああ、そんなの嫌だよ……。

■『空の軌跡FC』のエンディングはもう、「なんでこんなことに?!」って発狂した。ゲームでこんなに激高できるなんて…。そのぐらいストーリーに入り込んでたってことだよな。
続編、すぐに希望。限定版でもなんでも必ず買うから!すごい仕事をしたもんだよ。大好きだ!

■ほんっとうに興奮した!続編の『空の軌跡SC』を頼むよ。すぐに出してくれ!エステルとヨシュアを愛してるんだよ!

■僕も今クリアしたところだけど、正直言って、数年ぶりの傑作。うん。続編すぐに出してほしいよ。じりじり待たされるの、ダメなんだ…(涙。



たった3人の会社で、日本のゲームのライセンスを取得して、ローカライズ、マーケティング&販売。…馬力を感じる話でございます。



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2011年06月17日

海外ゲーマーの反応 - 日本人プロ格闘ゲームプレイヤー、梅原大吾Q&A -

前にリクエストいただいていたのですが、Part 2がきたのでまとめて。

記事はこちらこちらから。


みんなの質問に、大吾が答える。

(訳注:CAPCOM UNITYで質問を募集し、そこで集まった質問から選抜したものに梅原さんが答えたものです)。

1) 試合中、ヘッドフォンしてますが、なにを聴いてるんですか?

大吾:ハハハ。すごいもんじゃないですよ。なにも聴いてません。ノイズ・キャンセラーなんです。これを使うと、完璧に静かで、試合に集中できるから。

2) 僕をはじめ、何千人ものプレイヤーたちのインスピレーションの源になってくれてることに感謝してます。
・ゲーム中になにか変えられるものがあるとしたら、なにを変えたいですか?
・今現在のあなた自身がめざしている目標はなんでしょう?それと、あなたが達成してきた目標は?


大吾:最初の質問については、僕は過去の試合をあまり振り返らないので。ただ、試合の直後に反省することはありますけど。そこから学んで、学んだことを次の試合に生かそうとは思います。
とはいっても、これは変えたいというような過去の出来事というのは、ないですね。

目標?僕の目標はアマチュア時代からずっと同じです。EVO(訳注:米国で年一回開催される大規模格闘ゲームイベント)で勝つこと。

3) こういう競技の世界で、どうやってハングリーさを保っていますか?
地元でトップになると、対戦することに飽き始めたり、ゲーム内容が劣化してくプレイヤーってたくさんいますよね。いろんなトーナメントでいつもトップ3に入る人たちや、ナンバー1の人にすらありえることです。

でも、あなたはそんなふうな感じがしない!どうしてですか?住んでる街で対戦相手をいつも簡単に見つけられるわけじゃない人たちに対しても、なにかアドバイスがあれば。


大吾:僕にとって、ゲームをプレイするっていうのは、新しいことに挑戦したり、次の限界に自分を駆り立ててくことです。僕にとって大事なのは、勝てるかどうかじゃないし、カッコいいコンボを決められるかどうかでもない。ゲームを単純に楽しむってことですらないんです。

他の人たちが僕や僕のプレイをどう思っているかも、関係ないです。ただ、自分がどう感じているのかってこと。僕は自分を駆り立て続ける。僕を動かしているのはそれです。
他の人と自分を比べたりもしません。僕のインスピレーションは、自分にチャレンジしたいっていう欲求が源泉だから。

人のモチベーションって、自分に意志があるにもかかわらず、回りに影響を受けやすいものだと思います。
僕が、インスピレーションやモチベーションを探している人にアドバイスしたいのは、インスピレーションっていうのは自分の中にあるということ。
簡単なことじゃないかもしれないけど、自分自身のゴールをもって、そこに行き着くためにできるかぎりの努力をすること。

チャンピオン、お金、名声は手に入れても、また去ってくかもしれないもの。最高の自分でありたいっていう欲求だけが、自分をずっと動かしていくたった一つの源です。

4) 米国のゲームと言われるゲーム(訳注:おそらく『マーヴル VS. カプコン』のこと。米国が圧倒的に強いようです)も追いかけていこうと思うのはどうしてですか?
米国が強いということで、EVO2011で(『マーヴル VS. カプコン』を)プレイすることにプレッシャーは感じていますか?


大吾:前も言ったように、僕をゲームに駆り立ててるものは、自分へのチャレンジです。僕は、チャレンジを楽しんでる。

日本の格闘ゲーム・コミュニティは、『マーヴル VS. カプコン』では米国のプレイヤーたちにかなり遅れをとっています。
ただ、『マーヴル VS. カプコン』は努力のしがいのあるゲームだってわかったので、今年は『マーヴル VS. カプコン』に新しくチャレンジします。ここでは僕は新人チャレンジャー。だから、特にプレッシャーも感じてません。ベストを尽くすこと、それが僕にあるすべてだし、今やれるすべて。

全力でチャレンジしたいので、そのためにも『マーヴル VS. カプコン』のトップ・プレイヤーが一堂に集まるトーナメントでプレイするつもりです。まだトレーニング中だし、かなり急いで準備しないとだめですが。

今年最初に出るトーナメントは米国のReveLationですが、これは『スーパー・ストリートファイターIV AE』だけの参加。でも、もうすぐに『マーヴル VS. カプコン』で米国デビューします。そのときに、最強プレイヤーたちと対戦するのを楽しみにしてます。

5) これからプロやトーナメント・レベルまでのぼっていこうとしている『スーパー・ストリートファイターIV』の中級プレイヤーたちに、なにかアドバイスありますか?これはやるべきっていう、特別なトレーニングとかは?

大吾:誰でも、トッププレイヤーであっても、ナーバスになるし、大きなトーナメントになるとミスだって増えます。こういうミスを最小限に抑えるには、地道にコマンドの練習をしなきゃいけない。これが一番効果的なトレーニングだと思います。プロになりたいと思う人にも、同じことが言えます。

どんなレベルにあっても、運で勝つこともあれば、負けることもある。これは人が左右できるものじゃない。でも、自分がコントロールできる部分では、たとえば僕の入力操作がそうですが、プロとしてミスするべきじゃない。これは、僕がはっきりと要求されてる最低限のこと。これができるから、プロと言う資格がある。

プロになるとか大きなトーナメントに出られるレベルになるために必要なことも、同じことだろうと思います。ミスを最小限に抑えることです。

6) トーナメントで接戦の末に負けたときでも、あなたはいつも結果に対して冷静に見えます。でも、正直言って、本当はなにを考えてます?

大吾
:人は運で勝ったり負けたりしたときは、単純に勝ってラッキーって思ったり、負けて残念って思ったりするもんでしょう。その結果は別に自分のせいじゃないと思ってるから。

でも、試合中になにが起ころうと、勝とうと負けようと、僕はその結果に責任がある。だから、必死でやって勝ったなら、トーナメントにつながる自分の努力すべてを認めます。負けたのなら、負けを受け入れて、もっとがんばらないといけないんだって思います。

僕以外のなにも、誰も、対戦結果の責任を負うことはできない。それがわかってるから、負けたときに感情的に反応できるような余地が僕にはないのかもしれない。

7) 米国の格闘ゲーム・コミュニティが成長するために、日本から学ばねばならないって感じるものはなんですか?逆に、日本が米国から学ぶべきものは?

大吾
:米国のプレイヤー同士のつきあいをよく知らないので、あまり多くのことは言えないんですが。少し知ってることから言えば、米国のプレイヤーはオープンに前向きにお互いのゲームプレイを批評しあって、コミュニティ全体としてお互いに成長を助けていくべきだと思います。

日本側は、あきらかに、イベントを成功させようっていう責任感や気持ちが足りない。プレイヤーはイベントを人事だと思っていて、支援してこうっていう努力がない。
受身で参加してて、自分たちはトーナメントとは関係がないって考えてる。イベントが楽しいものになるかどうかは、イベントの主催者の責任だっていうふうに。
こういう見方が変わっていって、イベントをコミュニティ全体で創ってくんだっていう感じになるといいなあと思ってます。

8) さっき食べた最後に食べたい食事は?(訳注:すみません、思い切り間違えました…)。

大吾
:ラーメン。ラーメン大好きなので!

9) プロのトーナメントの世界で、今はないけど、こういうのが見たいっていうのはありますか?『ストリートファイター』が、今までファンじゃなかった人を巻き込んでもっと人気が出るようになるには、どうすればいいと思いますか?

大吾
:1つあるのは、もっと多くのプロのプレイヤーが受け取れるだけの対価があればいいとは思います。そのかわり、プロと名がついたからには、プロとして自覚をもたなきゃいけないし、鍛錬もしないといけない。プロの名前にふさわしいレベルのゲームプレイを見せるために必死にやらないといけない。アマチュアのプレイヤーとプロのプレイヤーのゲームプレイがはっきり別物だってわからないとダメです。これはもう、高いレベルの自己鍛錬でやるしかないことです。

10) あなたにとって一番意義があるのは、どのトーナメントで勝つことですか?一番、記憶に残るトーナメントは?

大吾
:EVO。EVOですね。●



コメントは記事についたものと、こちらこちらから。


■今年のEVOが楽しみすぎる!

■素晴らしい答えだ。オレ、大吾が負けても冷静なとことか、敗北をまたたくまに自分のプレイに反映させるところとか大好きだ。NorCal(訳注:カリフォルニアで開催される格闘ゲームトーナメント)で彼が『マーヴル VS. カプコン』をプレイするのを期待してる。

■大吾は、チュートリアル・ビデオを出さないのかな?(コンボの)1フレーム・リンクの繋げ方とかさ。日本語でやってもらって、英語の字幕で!

■彼の態度が大好きだ。オレのハチマキにサインしてほしい!
負けた後になにを考えてるかっていうとこの答えが、すっごくいいね。素晴らしいメンタリティじゃん。つねに成長しようっていう。

■ものすごく尊敬してます。

■クールだよなあ。EVOが待ちきれない。

■西欧人の多くが日本に行くだろ。で、その中には『ストリートファイター』に興味がある人たちもいる。大吾は道場を開いたらどうだろう。西欧人がトレーニングできる道場。

2週間の滞在と道場のトレーニングで2000〜3000ドルで!
大吾が道場を開いてくれたら、オレは道場入りをワクワクして待つよ。

■この質問は、今までの他のインタビューなんかよりぜんぜん良いよ。大吾のライバルたちはみんなこれを読むべき。

■最後の質問に対する答えが好きだ。

■>米国のプレイヤーはオープンに前向きにお互いのゲームプレイを批評しあって、コミュニティ全体としてお互いに成長を助けていくべき

オー、大吾、これが現実になったら、始まって10分でみんな心にキズを負っちゃうんだよ。ノエル・ブラウンのときと同じ状況になっちゃう…。……でも、うん、彼の言うことは100%正しいよね…。

(訳注:ノエル・ブラウンという米国の格闘ゲームプレイヤーが「お前はジャスティン・ウォン(米国の格闘ゲームプレイヤー)のコバンザメだ」的なことを言われ、トーナメント会場で暴力沙汰になり、出入りを禁止されたという、昨今格闘ゲームコミュニティの話題をさらった事件があったようです。こちら)。

■大吾は、日本人はつまんないって言ってるの?(笑。でも、先生、あなたもそんなに大騒ぎするほうじゃないっすよね!

 ■↑つまらんとは言ってない。ただ、オレが日本に行ったとき、やっぱり大吾と同じように感じた。

EVOやStunfestに行ったり、ネットで観客の反応を見てると、確かにEVOって「自分たちのイベント」って感じがする。米国の人間が集まって実現させた「プレイヤーたち自身のイベント」なんだ。

Stunfestだって、主催者だけじゃない、フランスのすべてのゲーマーの集会って感じ。参加者に話しかけると、「今度はオレの国のEVOにこいよ!」なんてしょっちゅう言われるし。

でも、日本はちがう。ホテルに行って、あとはスタッフにいろいろまかせるのに似てる。自分はイベントとは関係ない。盛り上げるのは、イベントのスタッフたちの仕事。つまんなかったら、主催の責任。自分たちは、サービスを受けるただの客なんだ。

■良い質問だけど、短いよ……。

■米国の格闘ゲーム・コミュニティをどうやったら成長させられるかなんて、どうして大吾に聞くのよ?大吾は米国にほとんどいないのに。こっちのことはこっちのやつらにまかせとけって。まあ、こっちの人間たちがコミュニティをどうしようと思ってるのかは知らんけど…。

■大吾は、米国の格闘ゲーム・コミュニティの今の成熟度を過大評価しすぎ。建設的な批評なんて、自我ばっかりデカくて、不安定で、感情的にガキなやつらばっかりのこのコミュニティでは、絶対に無理な目標。

日本のトップ・プレイヤーとこっちのトッププレイヤーの教育の差だろうね、こういうことになっちゃうのは。同じゲームでも、アプローチする人間のメンタリティが大きく2つに分かれるってこと。

野試合で、アドバイスをもらったり、前向きな批評を聞くなんて、オレはもう諦めてる。みんなフレンドリーなアドバイスより、胸をゴリラみたいに叩いて自分を誇示したり、劣等感をじっとり育てることばっかり気にかけてるんだもんな。

 ■↑そーそー。日本人はちがうんだってオレも確信があるね。みんなナイスで静かな人たちだから、周りにいるひとが誰にとっても超助けになるっていう。

 ■↑オレたちは助けあうより、ケンカばっかり。お互いに隠し合うから、ぜんぜん成長がないんだよな。もう助言なんて期待すんの、よそうよ。だって、みんな似たような答えで、実際的にはどうやるのかってなると話してくれない。

次のイベントで米国にきて、オレたちを叩きのめす日本人か韓国人に聞こうぜ。

アメリカ人は成長する気がない。ただ勝ちたいだけ。終了、ってことだ。

■上手くなるために努力すべきだよな。でも、たとえみんなが日本の闘劇(訳注:日本の大規模格闘ゲームトーナメント)やEVOなんかで日本に勝てなくても、そりゃもうしょうがないよ。

日本が『ストリートファイター』世界をリードしてるたった1つの理由。それは、ゲームも人気あるし、アーケードもいまだに人気があるからだよ。

日本は人口が多い(1億2千万)、アメリカに比べて人口密度も高い。ってことは、コミュニティの数も多いから、プロになろうっていう熱心なプレイヤーも多い。学んだり、助けたりできる人たちがまわりにいっぱいいるんだよ。

文化的、地理的条件が日本みたいだったら、こっちのプレイヤーだって、大吾や、Mago、Sakonoko(訳注:どちらも日本のプロ格闘ゲームプレイヤー)ぐらい良かったはずだよ。

 ■↑うん。同意。オレたちは集まるのがむずかしい。しかも、こんな不況時じゃあなあ。

■日本人はすっごく徹底してるし、集中力がある。数学だろうと科学だろうと。

どんな分野だって、批評なしに成長なんてできないんだよ。

大吾はたぶん日本人の行動について話してるんだ。彼は、アメリカに来て、アメリカ人になにが足りないのか知ったんだ。
彼は偉大なる鍛錬の人だ。米国で暮らさなくたって、物事を観察し、分析することはできるからね。

■大吾にこういうくだけた話をさせたのは、MadCatz(訳注:梅原さんが契約しているゲームアクセサリメーカー)の差し金だろうと思う。こうやって、米国のコミュニティに刺激を与えて、ライバル心を燃やさせてがんばらせようっていう。で、これまでのところ、完璧にうまくいってる。マイナス点は、アメリカが勝つっていう楽しみがないってことだけどさ。

Tokido(訳注:日本のプロ格闘ゲームプレイヤー)が『マーヴル VS. カプコン』をプレイしてる動画が米国で最初に話題になったときのこと覚えてるよ。みんな「日本、ガンバレw!オレたち米国のプレイヤーは絶対負けないけどな!ハハハハハ!」ってな感じだった。

でも、蓋開けてみたら、Tokidoはメジャーな米国のトーナメントの『マーヴル VS. カプコン』で優勝しちゃった。とたんにみんな「フェニックス(訳注:Tokidoの優勝時の使用キャラクター)を弱体化しろ!ぎえええええーーー!!!」って…。

ただもう、悲しかったわ…。

(訳注:Tokidoさんは、米国で行われたCommnunity Effort Orlandoで、『マーヴル VS. カプコン3』を含め、『スーパーストリートファイターIV AE』、『ブレイブルーCS』で優勝なさったようです。特に、『マーヴル VS. カプコン3』は、数ヶ月の練習のみで、圧倒的強さを誇っていた米国チャンピオンを下しての優勝)。


↓Tokidoさんが優勝した『マーヴル VS. カプコン3』の決勝戦。
米国に残されていた牙城が崩れた瞬間だったようです。最後に実況のかたが、面目ないよね…と言ってるのが印象的でした。

Grand Final MvC3: Justin Wong vs. Tokido at CEO 2011


■Tokidoは、『マーヴル VS. カプコン』で勝ちまくったからなあ…。『スーパーストリートファイターIV AE』は勝つにしても、『マヴカプ』は下手だろって言われてたはずなのに。
アメリカ人は、ただのクソ野郎どもだったな。ダサすぎる…。なんとかならんのかよ…。

 ■↑言葉使いは酷いが、まあ、間違ってない…。

どっちのトーナメントでも(同時期に、Tokidoさんが参加したCEO、梅原さんとMagoさんが参加したRevelationsが米国で開催。梅原さんは『SSF IV AE』で優勝)、ライブチャットやコメントでアメリカ人プレイヤーに対する惨めな言い訳が溢れてたよ。ゲームバランスについてだとか、日本人が使ってるキャラクターに対する不平だとかさ。

フェニックスに対する文句なんてもう…。フェニックスを使うなら、米国のプレイヤーから了解を取れって感じだったからね。ジャスティン(訳注:米国の格闘ゲームプレイヤーで『マーヴル VS. カプコン』の王者)だってフェニックスさんざん使ってたくせに。
そのうえ、Tokidoは『鉄拳』も入賞したんだぞ?この敗北をどう言い訳したいんだよ?

もう、頼むよ……。


↓Revelationsでの梅原さんとMagoさんの決勝戦。

Grand Final: Mago (Fei) vs. Daigo Umehara (Yun) at ReveLAtions 2011


■6)に対する答えがすごい。

■ふーむ。この人は、物事を深く考える素晴らしい洞察力をもってるのは確かだね。

■これはまさに勝者のトークだ。キャラクターの相性が悪かったときの不平も、怒りもここにはない。

 ■↑敗北をどう扱うかは人それぞれだろう。これが彼のやり方なんだ。でも、みんなが同じじゃない。負けて感情的になるのが悪いことだという風潮があるけどさ。

■CEOとReveLAtionsが終わった今、オレにはアメリカ人としてプライドがあるから、これだけは言いたくない。だが、大吾がプレイヤーとしてまったく器が違う人間だということは、否定のしようがない。

彼の対戦結果に対する考え方はちょっと興味深いと思ったよ。
けど、オレ、彼が(訳注:クールな話ばかりではなく)リアルで誰かとバカな話をしてるのを見てるの、正直大好きなんだ。大笑いする(訳注:ネットに出回っている動画があるようです)。

日本の格闘ゲーム・コミュニティがアメリカほど客を巻き込めてないっていうのも面白かった。オレたちって、ライバル心もあるし、国民性としてアホなこともするけど、あっちよりイベントに参加してたんだな。面白いもんだ。

 ■↑彼、前にも同じようなこと言ってた。オレたちは自分たちでイベントを作る。楽しいから。デカいところに運営を任せたら、面白くなくなっちゃうよ。オレたちのイベントはオレたちでやるんだ。オレたちがやりたいように。

■つまり、基本的に彼は努力家なんだよ。でもって、一生懸命努力してる自分がいるからこそ、感情的にもならないし、言い訳もしない。オレ、この人、好きだ。

 ■↑うん。ショウビズの世界で最も努力する男だろうな。

■良い露出のしかただ。真に成熟した男が話す真のトーク。ノエル・ブラウンの動画を見たあとだったからね。よけいに興味深い体験になったよ。

こりゃもう、住んでる惑星がちがうとしか言いようがないな…。

■大吾を愛し、自国を嫌うやつらの大集合だなあ。

 ■↑大吾の態度やプレイを尊敬でき、かつ自国を愛するって不可能なことなのか?両立するだろ。

■こういうふうに考えられたらなあ……。オレ、負けるとどうしても頭にきちゃうんだよ(泣。

■まさに真の戦士。

 ■↑真の戦士って……(笑。

■>負けたときに感情的に反応できるような余地が僕にはないのかもしれない。

チキショー。氷のような冷徹さだよ。

 ■↑冷徹だが、だから彼は僕のヒーローなんだと思うね。

■賢い答えだわ。米国の連中がみんな大吾みたいだったらね。男らしく、冷静に敗北を語る。くだらない話もせず、負けたやつを辱めもしない。……でも、まあ、みんながトーナメントで大吾みたいな態度だったら、かなりつまらんのも確か(笑。

■この人、大好きなプレイヤーの一人ってすぐに言える人なんだけど、誰か新しい人で彼に迫る人がいてもいいなあとも思う。日本人じゃなくて。EVOじゃ、たいしてチャレンジになってないでしょ。

負けた後に、次のレベルを目指してトレーニングしてる彼が見たいよ。『マーヴル VS. カプコン』で負けて、それでもまた戻ってくるぐらいの男気を彼には期待してるんだ。

■ガイ(訳注:『ストリートファイター』のキャラクター)がインタビュー受けたら言いそうな言葉だなあ。

■大吾を好きでも嫌いでも、とにかく、これは日本人的な考え方だってことは理解しておけ。

日本に住んで3年目だ。ここでは、公衆の面前で感情は見せないように感じる。大吾の場合、トーナメントの場数を踏んでるっていうせいもあろだろうが、文化の差もありそうだ。クールであることってのは、大吾にとっては自然なことなんだよ。

負けても冷静というか、我関せずに見えるかもしれないが、ちゃんと気にはしてると思うな。自分自身に何百万もの問いかけをしてるんだ。

フェデラーだって、決勝戦で同じことをしてるだろう。こっちはゲームだが、心構えは同じなんだ。冷静さと集中力=プロの心構えさ。
オレなんて、対戦の賭けに参加してるとかなると、試合中にバカなことをしたり、冷静さを失ったり、くやしがったりするが、大吾は絶対にそんなことはない。

彼に賛辞を送るよ。自身を冷静に見ることができ、どんな状況でもクール。オレにはできない。



この記事のことで検索していましたところ、日本のプロ格闘ゲームプレイヤーのかたがたがずいぶん増えていて、びっくりいたしました。時代はこうやって変わっていくんですなあ…。



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posted by gyanko at 12:00 | Comment(91) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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