2009年05月11日

海外の評価 - 25年前の日本料理の古典本 -

長いエントリが続いたので、軽めに料理の話を書こうと検索をしていたところ、米国アマゾンでこのジャンルの本にしては珍しく46件のレビューがついている日本の料理本を見つけました。
しかも、46件のレビュー内、37人が★5つの評価。平均点はほぼ満点です。


第10回グルマン世界料理本賞(THE GOURMAND WORLD COOKBOOK AWARDS 2004)を受賞した栗原はるみの『Harumi's Japanese Cooking』が19件、米国フードネットワークで大ヒットした『料理の鉄人』で北米でも知名度が高い森本正治の『The New Art of Japanese Cooking』が25件で、ともに平均評価が満点に少し欠けるところも見ると、この本、このジャンルでは少しだけ飛び抜けている感があります。
それが、この辻静雄の『Japanese Cooking: A Simple Art』です。


英文版 辻静雄の日本料理 [新装版] - Japanese Cooking: A SimpleArt


辻静雄は、辻調理師学校の創立者であり、料理研究家として数々の著書がある人です。渡欧を繰り返し、さまざまな著名なシェフと親交を交わした末に、日本に本物のフランス料理を根付かせ、最後は美食のしすぎによる肝臓の病で亡くなられたと記憶しています。


美食のしすぎ。こう書くといかにも放埒で脂ぎった人生を思い浮かべてしまいますが、この辻静雄という人、まるで修行のようにフランス料理を食べ、真実を求めて一徹に料理の研究に邁進したかたです。フランス料理に殉死したと言っても良い、このかたの壮絶な人生は、海老沢泰久の『美味礼讃』という本に詳しいです。食べるという文化を極めたかたの半生を読めます。興味があられたら、読んでみてください。面白いです。



さて、この『Japanese Cooking: A Simple Art』という本、まずはどんな本なのか。ここで、米国アマゾンによる紹介レビューを挙げたいと思います。


辻静雄がこの本『Japanese Cooking: A Simple Art』を書いた80年代、日本料理は西側社会では実際、ほとんど知られていなかった。序文はM.F.K・フィッシャー(著名なライター、料理の本が多い)によるもので、雄弁にこの辻の古典作品のためのお膳立てをしている。

食べ物、そして食べるという肉体の活動ですら、日本人がいかに異彩を放っているかという点を明らかにしたという意味で、この本は、かつて非アジア人のために書かれた日本料理の本の中でもっとも示唆に富む作品かもしれない。

辻の語り口は明快で教育的だ。彼は、アジア人ではない西洋の読者に実例をもって語りかけ、西洋人の料理の好みと先入観に対する認識をはっきりと示してくる。その認識は、我々が日本人に対してもっている認識をはるかに超えている。

序文(読み飛ばしてはいけない)に続き、鍵となる材料や料理のカラー写真が配されている。そして次の第一章が、日本料理の技術の徹底的な説明、料理の基本的な要素すべての手引きとなる。これらの『レッスン』は、野菜を切ることに始まり、蒸す、焼く、日本風の揚げる、そして寿司の作り方まで網羅している。
レシピは、ベーシックな酢のサラダドレッシング、寿司のシャリ、照り焼きを取り上げている。酢蛸の作り方では、ステップごとの図をすべて入れた明快な説明が書かれている。


第二章は、レシピだけで構成されている。生ショウガ、醤油、みりん、酒、米酢を結集させれば、そのレシピ中の多くを作ることができる。初心者は、美味しいソースに単純に浸けるだけでいい、鶏肉のつくね、照り焼きステーキ、あんかけ豆腐か、軽くてカラフルなアスパラガス・ライスから始めるのがいいかもしれない。

背景の情報、広範囲に亘るレシピ、そして素晴らしい料理の手引きをよりあわせて、『Japanese Cooking: A Simple Art』はいつまでも、シンプルなのに複雑な日本料理を習うのに重要な本であり続けるだろう。−−−−Dana Jacobi(アメリカの料理研究家)



この本、日本料理を包括的に海外に紹介した古典的料理本のようですね。しかも、総ページ数、508ページ。大作だ。これほど詳細な本は海外ではあるいは初めてだったのかもしれません。

すでに評価の確立した古典となると、ここについた40件以上の高評価のカスタマー・レビューもうなづけるというもの。



78人中、78人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★

この本はただの偉大な日本料理の本というだけではありません。広く一般的な意味で、料理本として偉大なのです。単純にレシピを編集しているだけの内容なのではなく、辻静雄はそこに、日本料理独特の料理技術の解説や日本文化への洞察を盛り込みました。そして、もっと重要はことは、彼が、日本料理の理解の仕方、そしてその真価の味わい方に関する価値ある知識を開示してくれていることなのです。


彼は本を2つの章に分けています。最初の章は、食事がどのように作られ、構成されるかという議論から始まり、それから、この本の中でよく使われる材料、道具、技術について説明されています。最後は、様々なタイプの日本の食べ物(それぞれ『タイプ』によって、揚げる、蒸す等の下ごしらえ、料理法がちがう)への基本的な導入となるレシピです。これは、あなたが日本に行けば出会うだろう伝統的な日本の料理のレシピです。


第二章はすべてレシピで、第一章と同じようにタイプ分けされていますが、今度はもう少し複雑で、第一章で習った技術に基づいています。


この本は、初心者やもう少し進んだ人たちが使える本であり、日本料理を愛し、その作り方と正しい楽しみ方を知りたい人々のために必ず役立つ参考書です。



何事にもパイオニアがいらっしゃるんですなあ。
辻静雄、食べるという文化に向き合った哲人が、本気で作った『正統派日本料理』の本。副題に掲げた『シンプルな芸術』という言葉にも、「襟を正してくださいね。日本料理ですからね」という気構えが見えます。

今となっては、少し構えすぎかもしれないのですが、こういう多少、堅苦しくとも、正しい仕事が25年前にあったからこそ、現在、世界中からリスペクトを受けて隆盛を誇る日本料理があるのだろうと思います。


最後に、ちょっと同意ができる、44人中、43人が役立つと評価したレビューを挙げておきます。


評価:★★★★★

もしキミが日本料理を愛しているなら、これはキミのための本だ。レシピの単なるリストという以上に、まさに芸術としての日本料理について解説している。
ただ、不運にも、キミが私のように日本料理に関してズブの素人である場合、この本はキッチンで特に役には立たない。なにより、この本は真の日本料理のために手軽さを犠牲にしてるんだ。どういう意味かっていうと、料理の多くが地方のスーパーじゃ手に入らない材料や道具が必要だってこと。でも、まあ、キミがもし、真の日本料理がどういうふうに作られるか本当に学びたいっていうんなら、これ以外の本は要らないよ。




この、気持ち、わかる。どんなに詳しく書いてあったって、田舎じゃ手に入らないものが使われてたら、素人には意味ないですもんねえ。実に現実的な意見です。

昔、昭和50年代初め、『世界の料理ショー』っていう、いかにもプレイボーイ風のアメリカ人が酒を飲みながら軽快なトークで料理を作るという番組がありまして、大好きでよく観ていたんですが、それもね、「ああ、うまそうだなあ、作ってみたいなあ」と思ったところで、当時の地方じゃ、


オーブン


この時点で無理でしたからね。

探したらございましたので、今日はこの『世界の料理ショー』日本版の懐かしい動画でお別れです。吹き替え、巧いなあ。今でも笑えます。






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posted by gyanko at 02:11 | Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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