2010年01月11日

海外の反応 -『下妻物語』-

ここのところ、ご無沙汰していたので、映画のアマゾンのカスタマー・レビューを久しぶりに。お題は、『下妻物語』。

下妻物語 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]

『下妻物語』は、嶽本野ばら原作、ロリータ少女とヤンキー娘の友情を描いた2004年の映画。カンヌ国際映画祭と同時開催の、青少年向けコンペ、カンヌJr.フェスティバルで邦画初のグランプリ。フランスでは、邦画としては過去最大約100館で上映されたヒット作です(Wikipedia)。

英語タイトルは『Kamikaze Girls』。一見、ベッタベタですが、存外に作品内容と合ってはいて、これはこれでよろしい気もいたしますが、レビューでは不満の声がちらほらとございました。


そんなわけで、評価の内訳です。46件のレビュー中、
5つ星:29件
4つ星:14件
3つ星:2件
2つ星:0件
1つ星:1件
93%が4つ星以上という高評価。



まずは、17人中17人が役立つと評価したレビューから。
(あらすじ紹介も兼ねており、ネタバレ満載なので、ご覧になる予定のかたは読み飛ばしてください。)

評価:★★★★★ ありがちな、安っぽい生き方ではなく、自分が思うように生きるということ。

近年、私が見た愉快な映画の1本が、嶽本野ばら原作のこの奇妙な映画だ。

夢見る少女、竜ヶ崎桃子は、東京の北、茨城県の下妻、要はド田舎で居心地の悪い思いをしている。彼女は、人目を惹くピンクのロリータ服に身を包み、白いパラソルをかざし、白の厚底靴をはきながら、ここがフランスの華麗なロココ時代(1715-1770)なら、もっと居心地が良いはずと感じている。

この彼女が、この映画の主人公であり、ときにカメラに向かって話しかけてもくる語り部である。

桃子は、祖母、負け組の父親とともに、平屋のみずぼらしい家に住んでいる。彼女の生まれ故郷、大阪湾の北東の海岸沿い、大阪の郊外にある兵庫県の尼崎という、騒々しい安売り天国とは大違いの場所だ。

彼女は、人生に対して個性的な考え方をしている。まず、一つに、値の張るロリータ服を買うために、クラスメイトがトラブルに巻き込まれたと作り話をして、父親の同情を買い、金を引っ張りだすことを平気でする。
人を騙したからって、何だっていうの?私の幸せがかかってるの。気持ち良くなることは悪いことじゃないわ。でも、私の心根が腐ってるのは確か。……自分が幸せになれるなら、そうしろっていう、60年代のメンタリティの再来だ。

一方、白百合イチコ。顔立ちは強面。話口調も乱暴。ときに短気で、レディース暴走族、ポニーテールのメンバーでもある。桃子の上品さには嫌悪を示し、唾を吐く。
そんな彼女が、コピーのヴェルサーチのジャケットがたった2000円で桃子から買えると知って、驚き、感謝する。これが、どう考えてもありえない友情の始まりだった。イチコは、桃子より現実的だし、人々に無関心でもない。言葉にマジ切れすると、桃子にヘッドバッドをかましもする。

イチコは、東京、代官山の閻魔という伝説の刺繍家を探そうとしていた。ちょうど、ポニーテールのリーダー、気性は荒いが品格のある亜樹美が引退することがわかり、イチコは、自分の特攻服に特製の刺繍を入れて、彼女に感謝の意を表したいと考えていたのだ。それには、金が要る。桃子はイチコに無理やりパチンコ屋へ連れ込まれることになる。

原作にはない場面もある。これがあなたの新しい友達よ。そう言って、桃子がキャベツを買い、それをイチコに手渡すというシュールで笑える場面。見なければ信じられないヘアスタイルをした竜二という下っ端のヤクザ。…ヒントは、竜二のニックネームが一角獣だということ。
それから、ヴェルサーチとユニバーサル・スタジオがコラボしたブランド品。桃子の父親が権利を無理して勝手に作った偽造品だ。映画中では、ヴェルサーチやユニバーサル・スタジオという言葉には、ピー音がかぶせられている。
また、日本のウォルマート、ジャスコで買い物をして節約する人々を皮肉る場面もある。チラシのモデルのようにポーズを決め、わざとらしい笑顔を作りながら、「このポロシャツがたったの800円」。桃子は顔をしかめて、「この街の人間は狂ってます」と嫌悪する。

『下妻物語』は、桃子役の深田恭子と、イチゴ役のロシア人とのハーフ、土屋アンナのダイナミックな演技に拠るところが大きい。深田は、スーパーキュートなロリータ服が大変に似合う。彼女の黄褐色の肌とミルクティ色の髪のコントラストは見事だ。子どもっぽい表情も、目を見開く様子も、見ていて楽しい。

土屋は、いつくかコミカルな演技を見せる。深田の気を引こうと、喫茶店、貴族の森でおどける場面。だが、失恋のシーンは、見るものの心を痛ませもする。桃子よりずっと人間らしいのだ。土屋のほうが、明らかに女優として良い。実際、この映画では、深田より多くの賞を勝ち取っている。

多岐に渡るサウンドトラックは、ペトゥラ・クラーク(訳注:60年代イギリスのガール・ポップス歌手)っぽい『Lucie Est Amoreuse』、感傷的なリサ・ローブ(訳注:米国のシンガーソングライター)といった趣の『She said』、ビートの効いたパワーポップ、『タイムマシンにおねがい』。管野よう子の曲は、甘いバイオリンの音から、ラグタイム・ピアノ、フレンチ・カフェ風アコーディオンのメロディーと幅広い。

この映画のもう1つのテーマは、自分にしかないものを見つけるということだ。桃子は、ロリータ服を身に着けていると安らぐし、刺繍に素晴らしい才能をもつ。イチコは土浦のバイクショップでバイクを修理していると幸せ。だが、人にどうしろといわれるのは好きではない。
また、ありがちな安っぽいものより、自身のスタイルを大事にするということでもある。つまり、ジャスコより、代官山のBaby The Stars Shine Brightというブティックってことだ。

『下妻物語』を見て、僕は、日本旅行のときに牛久大仏と下妻を訪ねた。下妻駅の内装は、映画とは違っていた。あの大きなテレビスクリーンはない。だが、桃子が電車を待っていたフラットフォームはそのまんまだった。

『下妻物語』は、おかしくて、突拍子のないカルト・コメディだ。日本好きには、面白いはず。特に、日本の若者やファッションに興味がある人には。

不満点が1つ。どうして『Kamikaze Girls』なんてタイトルにしたんだ?オリジナルのタイトルだと、なにか問題があったのか?

このレビューは、ヴェル○ーチとユニバー○ルの提供でお送りした。●



次は、10人中10人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ 誰が見ても楽しい!

『下妻物語』は、キュートでおかしくて賢くて、目に楽しいゴシックロリータがいっぱい詰まった映画!主役の二人とも、意志が強くて、自立した少女。世の中の動きや、その中でどう生きるかということに、独特の感性をもってる。クエンティン・タランティーノやガイ・リッチー風の撮影方法が好きなら、この映画は大好きになると思います。男性でも女性でも楽しめるし、脇の登場人物もとても楽しい。この映画は誰にでも薦められます。



14人中13人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ 現在、一番のお気に入り映画!

この映画は笑えて、泣けるんだ。超おかしい場面だけじゃなく、登場人物に同情させられる場面もある。最初、この映画を観たとき、完全にハマって、その後、数回観るはめになったぐらい!
登場人物は、好むと好まざるに関わらず、二人の正反対のキャラクターがお互いにどんなふうに惹かれ合っていくのかを見せてくれる。
それと、カンフー映画っぽいスタイルで撮られているね。

この映画は二人の少女の友情を描いたものかもしれないけれど、男だって大好きになるよ。この映画は、絶対に「ほしいものリスト」に入れておいてくれ!!



8人中8人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ 素晴らしい。

二人の、表面上は似ても似つかない少女の話だ。でも、似ているのは、心の奥底ではわかってる。

こうした話は以前にもあったと考える人もいるかもしれない。でも、真実を言おう。あらゆるものは、以前にすでに作られている。ただ、僕の考えでは、これまでこれほどうまく出来たものはなかったと思う。

この映画の奇妙さとバカバカしさの奥底に、10代の少女たちが、大人になりながら、探しているものが垣間見える。…それは、簡単に言えば、みなが友達と呼ぶものだ。

まず、二人の少女がいる。一人は弱く、一人は強い。だが、彼女たちは二人とも聡明で、的確な描かれ方をしている。フリルの桃子は、ロココとロリータのファンタジーの衣の裏に隠れ、無作法なイチコは、突っ張ったしかめっ面の裏に隠れている。でも、二人の少女が見ないふりをし、ときとして、そこから逃げ出そうとしているものとは、この空虚で冷酷な世界で本当の友情を探すことなのだ。

これは、本当に美しく、賢い映画だ。桃子のジャスコの大衆ファッションへの嫌いっぷりや、逃げ出すためのイチコの作り話など、大爆笑の場面もしょっちゅうある。

購入してくれ。試しに一度観てみてほしい。…そうして、小さなニュアンスを楽しむために、繰り返し観て、自分が更なる深い部分に気づけるかどうか確かめてみてほしい。



8人中8人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ 『下妻物語』は、感動するよ!!!

『下妻物語』のことを最初に知ったのは、Yahooグループの日本のロックで。Tommy heavenly6の音楽が、映画のテーマソングだったから。日本のサウンドトラックにどうしてこの曲が入っていないのか、よくわからない。たぶん、Go-Go'sの『Head over Heels』っぽすぎるとか思ったのかな。でも、すごい曲ってだけじゃなくて、この映画にすごく合ってたと思うんだけど。

初めて観たのは、ファンサブ。VCLメディア・プレイヤーのやつしかなかった。字幕を別で開かなきゃいけないっていう、ダッサい、よれよれの。別ウィンドゥで開いて、映画を流しながら、字幕をスクロールして観たんだよ。本当に最悪の映画の観方だったけど、映画はとても良かった。だから、たいした問題だと思わなかった。

この映画には、アニメが挿入されてるのだけど、『セーラームーン』みたいな感じとはちがう。もっと、通常の日本のテレビアニメっぽくて、ものすごく大げさな演出がされてて、これが面白いの。

『下妻物語』は、もうただ、おかしいの一言!でも、同時に感動もする。アニメのシーンは素晴らしいし。
ただ、ファンサブで、たった一箇所だけDVDより良いって思ったところがある。それは、冒頭の場面。アニメで暴走族のリーダーが、「あたしのバイクが火を噴くぜ」って言うところ。DVDの翻訳は、「点火するぜ!(ignite)」って訳してたけど、ファンサブは「火を吐くぜ(spit fire)」って訳してた。……ファンサブのほうが、ぜんぜん鮮やかだし、ドラマティック。でも、このDVDは買わないとだめよ。最初のところだけ、「火を吐くぜ!」って頭で変換して、あとは映画を楽しんで。その後の翻訳は見事だから。

Vizの公式リリースまで半年も待たされちゃった。でも、待った甲斐はあったな。本当はSuncoast(訳注:米国のショッピングサイト)のギフトカードを持ってたんだけど、注文しないとないっていうから、アマゾンへダッシュ。2005年のベスト映画よ!!!お願い、今日、注文して!!!!!



7人中7人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ ファンタスティックな映画!

映画を勉強している学生として、この映画はとことん楽しめた。ばかばかしいお笑いだとか、アクションって以上のものがある。心を楽しませてくれる素晴らしいストーリーってだけじゃなく、びっくりするような様式的な感覚で目も楽しませてくれるんだ。



星1つの最低評価もございましたが、これは映画の内容ではなく、ワイドスクリーンで正常に見れないDVDフォーマットに関してでした(内容に関しては、この映画が大好きだと書かれていました)。

見はじめると、もうそのままついつい最後まで見てしまう映画ですので、週末にでもぜひ。



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posted by gyanko at 21:00 | Comment(35) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月08日

海外の評価 - 日本版『リング』-

今日のお題は、いまだに海外サイト等でも頻繁に話題に上がる『リング』日本版(海外サイトでの「好きな日本映画」というトピックでも何度も挙げられていました。こちらで読めます)。

英語圏では、ナオミ・ワッツ主演のハリウッドリメイク『ザ・リング』と区別するために、日本版は『Ringu』表記です。

日本版『リング』は国内大ヒット作ですが、ハリウッド版『ザ・リング』も米国では大ヒット作で、米国アマゾン・レビューは1069件、日本版にも179件ついています。
双方とも今更、説明の必要もない有名タイトル、テレビ等で観てるかたも多かろうと思いますので、たまには四の五の、前置きは言わずにさくさく参りたいと思います。


リング [DVD] リング2 [DVD] リング0〜バースデイ〜 [DVD] ザ・リング [DVD]


まずは、評価の内訳です。179件のレビュー中、
5つ星:84件
4つ星:53件
3つ星:16件
2つ星:10件
1つ星:16件

76%が4つ星以上の評価です。なかなかの評価です。


最初は、96人中92人が役立つと評価したレビューから。

評価:★★★★★ 『ザ・リング』の元となった驚くほどユニークな日本映画

私は『ザ・リング』が大好きだった。なので、鈴木光司の小説が原作のオリジナル日本バーションを観るのをずっと楽しみにしていた。私としては、特に嬉しかったのは、吹き替えより字幕付きを観れたことだ。字幕のほうが映画の元々の雰囲気を損なわないから。
『リング』も『ザ・リング』も見事だった。両方とも暗く、不気味な映画。似てるが、それぞれ違う。どちらを先に観たとしても、おそらくどちらもお気に入りになるだろう。

『リング』は、ハリウッド版と大変良く似た始まり方をする。二人の少女が、観たら七日後に殺されてしまうという、とあるビデオに関する噂話を室内でしている。最初の犠牲者の叔母はレポーターであり、テープの話を調査し始める。彼女は、謎めいた彼女の前夫に助力を求めるが、すぐに自身の命、前夫の命、そうして気味の悪い彼女の子供の命を守るために、信じられない闘いに巻き込まれたことを知る。両方とも、大筋では、最後まで同じ線上ではあるのだが、このあたりから『リング』は『ザ・リング』とは違いを見せ始める

たぶん、両作の最大の相違点は、得体の知れないビデオテープの内容だろう。『リング』では、ザラザラの画面とシンプルさが、より強いリアルさを与えている。『ザ・リング』に出てくるテープは、これよりかなりギョっとするし、本能的だが、巧妙さでは日本版の勝ちだ。

もう1つの著しい差異は、レポーターの前夫のキャラクターに関してである。日本版では、彼は(彼の息子もある程度は)、ある才能を有している。これはハリウッド版とは違う。筋書きが進むのを助けてはいるが、一方で観る者から、ハリウッド版で展開されたような謎を洞察するという楽しみを奪っている。

『リング』の筋書きはよりコンパクトで単刀直入だ。呪いのビデオの存在を説明する際も、再生による強制的な影響力をあまり洞察しようとはしない。ハリウッド版にあった後半の衝撃的な筋の展開も、日本版にはない。ドラマを締めくくるには、少し効果が薄かったと思う。

しかし、日本版は明らかにより多くの恐怖をもたらしてくる。どうあっても、決して忘れることはできないクライマックス。ハリウッド版では、少女が井戸から這い上がってくる、あの重要なシーンは、とんでもなく気味が悪かった。だが、日本版では、この重要な場面を何度も出してくるし、もっと印象的でもっと恐ろしい。ハリウッド版の前に日本版のこのシーンを観れてたらと思った。いや、十分に恐ろしかった。けれど、何が起こるのか予備知識なしで、あのシーンの衝撃を味わいたかったと思う。ハリウッド版が、ある種の写真のトリックで印象的に見せてくれる場面も、日本版では自然に表現されているのに、もっともっと異常で動揺させられる。

あなたがハリウッド版『ザ・リング』を観て楽しかったのなら、日本版『リング』の購入は絶対に薦める。知識があると、『リング』から受ける衝撃は落ちてしまうだろうが、この2作には十分な差異があるし、最も特別なこの恐怖世界への往復旅行が徹頭徹尾、楽しめるものであることは保証する。
どちらを先に観れば良いかと話し合っているなら、私は日本版『リング』から観ることを薦めたい。非常に気味のわるいエンディングの力より、他に優先したい理由がない限り。
私は、ハリウッド版のより複雑で象徴的な演出や、より深みをもったテープの話に対する背景、追加されたストーリー展開が好きだが、ハリウッド版が筋書きに新しい要素を加えたことで、ハリウッド版をすでに観た人が日本版を見るよりは、すでに日本版を観たことがある人々がハリウッド版を観たほうが興味をそそられるだろうと思うのだ●



次は42人中41人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★★ 『リング』の偉大なる日本版

『リング』は、理由は不明だが、観たものが七日後に殺されるという一本のビデオテープの物語である。

ジャーナリストの玲子はある日、親族の死に遭遇する。十代だった彼女の姪が謎の死を遂げるのだ。原因を辿る糸は何も残されていない。彼女はすぐに、姪の近しい友人の3人が同じ日に死んだことを知る。調べていくうちに、4人の少女たちにある共通点が出てくる。彼女らはみな、不可解な1本のビデオテープを観ていたのである。手掛かりは彼女を、そのテープそのものへ辿り着かせ、好奇心から彼女はこれを観てしまう。都市伝説は、彼女が想像していたよりずっと現実であることが立証される。まもなく玲子は、テープの謎を解読する時間との闘いに立つことになる。

『リング』(家で視聴した)は、視聴者と直結した方法で、「最初から最後まで怖い」という感覚を実現している。どんなふうに? つまり、テレビで観てるのはDVDで、テープではない。なのに、被害妄想が常に恐怖を煽る。
リアルな特殊効果をまばらに使うことで、この世のものとは思えない物語をいかにも本当であるかのように見せている。こんなふうなことを可能にしてるモダン・ホラー映画はほとんどない。
演技は素晴らしいし、台詞、少なくとも字幕用に翻訳されたものは決してくどくない。玲子役の女優は、緊張感のある主役として良い仕事をしているし、主役の男優も(ごめん、名前を失念)、冷静で落ち着いた前夫役として彼女ととても良い対称を成してる。

音楽は骨まで震える。特にメインテーマ(DVDのメインメニューで流れる)。軽く弾かれたギターの弦の、まさに不気味な曲だ。座って、メニューを見ている間、その曲が醸し出す雰囲気といったら、血が凍った。酷く耳障りな音を迸らせることで、恐怖の新しい層を作り上げて、場面を驚くほどの恐怖に陥れているのだ。『リング』はサウンドの素晴らしい使い方で、僕を驚かせてくれた。
極めてシンプル、この映画は可能な限りのあらゆる方法で僕を感心させた映画だ。●



やはり、ハリウッド版と両方を観ている人が多く、比較するレビューが結構、見受けられました。
私もどちらも観ましたが、映像としてはハリウッド版のほうが洗練されてたなあと思います。きれいに撮ってます。ただ、そのせいか、あまり怖くない。『リング』のほうは、……海のような場所に立っている、どこかを指差す不明瞭な人影とか、断片的な映像がかなり怖かったのを覚えています。

小説のほうも、これはこれで怖さが別種でした。「ビデオに入っているノイズの間隔が、人間の瞬きの間隔とほぼ同じ」という下りで不意打ちを食らってしまい、ゾゾゾゾーっと。後に、著者の鈴木光司が「リング」は子供っぽかったというような主旨の発言をしていたと記憶しているのですが、……ホラーって単純な筋のほうが怖いんじゃないですかね。推理小説みたいに理にかなった理由を考え始めたら、怖くなくなってしまう気もします。



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posted by gyanko at 21:00 | Comment(13) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月15日

『陰陽師』- 海外の評価 -

では、昨日から引き続き『陰陽師』です。

『陰陽道を外国人は納得できるのか』。米国アマゾンの『陰陽師』のレビューをお送りします。


陰陽師 [DVD] 陰陽師 2 [DVD]


最初は、23人中21人が役立つと評価したレビュー。


評価:★★★★ 非常にためになる。

この映画を正しく評価するには、『陰陽師』の話がまだ現時点で書き上げられていないということを知っておかねばならない。これは、8世紀の日本の史実(!)に基づいている。登場人物とストーリーは、日本の最古の文献の1つから採られており、登場人物たちは実際に当時、存在し、日常の中でこうした奇跡を起こしていたのだ。

面白いのは、古代の日本の信仰や、宗教的活動を学べることだ。これは、今日の日本人の基礎を理解するのを助けてくれるだろう。
そしてまた、主役の俳優が、日本の最も古いの芸術様式の1つである能の「貴公子」であることも知っておくべきだ。彼の動作が他の俳優たちとまったく違う理由も、この特別な能の技術なのである。

全体として、これは本当に素晴らしい日本映画だ。日本文化の深さと(他文化との)違いを知らしめてくれるという点で、もっと諸外国に紹介されるべきだと思う。



次は、16人中、15人が役立つと評価したレビュー。

評価:★★★★ 一般のほとんどの人にとって素晴らしい映画。

この映画のことを最初に知ったのは、私が陰陽道の宗教的背景について研究していたときでした。安倍晴明の話をいくつか前に読んだことがあったので、米国でこの映画が出たと知ったときは興奮しました。

平安時代に事を発し、この映画は、陰陽師、安倍晴明と宮廷人、源博雅の物語を追いかけていきます。宮廷内での陰謀と登場人物たちの人間関係の話なのです。

これが私にとって面白かった理由は、陰陽師に大きな焦点が当たっているということもありますが、呪文、呪い、予言、護符、経文といった、この伝統の背景へ切り込んでいることです。この映画の中に採られた安倍晴明の言い伝えのいくつかは、本当に嬉しい驚きでもありました。

唯一の不満は、もう少し音質をよくできたはずだということです。DVDの後半の終わりで、音が映像よりちょっと遅れ始めるのに気づいたんです。

他のたくさんの日本映画と同様に、アクションには主眼がおかれていません。このことは、大部分のアメリカ映画とは真逆です。ペースがゆっくりなことや、演技や特殊効果が、アメリカ映画の標準に達していないことに気づく人もいるかもしれません。けれども、この映画は、人物の深い関係と感情はもちろん、豊かな文化に多彩に彩られているのです。

日本の宮廷文化に興味がある人や、魔法信奉者には大いに楽しめる映画です。また、血まみれのシーンに吐き気を覚えない限りは、一般の人々にとっても素晴らしい映画となるでしょう。血の量はさほどではありませんが、おそらく胃の弱い方には向いてないシーンがいくつかあります。



最後は、11人中11人が評価したレビューを。

評価:★★★★ 日本の伝説的物語

安倍晴明は日本史の伝説的人物だ。信憑性のある歴史的背景を伴ったマーリン(訳注:アーサー王伝説で王に仕えた魔術師、予言者)のようなものだ。

陰陽道というのは、広く伝播している科学的理論と中国の神秘主義に基づいた陰陽の妖術で、安倍晴明は実際に存在はしたが、想像上のヒーローでもある。妖狐の子供と噂され、彼は陰陽師として帝に仕え、呪文をかけ、事件を解決するために霊的に正しい方法を助言する。彼の、老獪な敵、陰陽師、芦屋道満は、評判の良い清明を妬み、彼を困窮させ、攻撃しようと画策する。


この映画の陰陽師の解釈では、安倍晴明を魅力的で、ほとんどロックスター並みの人物像にしている。清明は比類なき呪術の使い手であり、神秘的な霊の世界で魔物たちを倒していく。彼の影には常に道尊(道満のかわり。なんらかの理由があるのだろう)の企みがある。

この映画で、道尊は、神聖なる剣を盗み出し、1世紀前の悪霊に身を任すことを画策する。それは、神道と通じながら、悪霊の怒りを宥め、悪霊を都の守り神となすためである。剣を盗んだことで、死人の怒れる軍隊が動きだし、ただ安倍晴明と、彼の屈強な仲間、源博雅が都を護ることになる。

『陰陽師』は、野村萬斎の俳優としての力の見せ場でもある。彼はしばしば能の演者と誤ってクレジッドされるが、実際は狂言という、日本の喜劇の伝統的表現形式の演者である。野村の前作は黒澤明の『』だが、安倍晴明の超自然的血筋をにじませるような、種々の蠱惑的な目線や微笑を含め、『陰陽師』のほうがより素晴らしく、彼の狂言で磨きをかけられた技術を発揮できる場となっている。


偉大な映画というより、『陰陽師』はテレビドラマなのか映画なのかわからないところがある。主なアクションが30分のエピソードごとに分割されているから、テレビのミニ・シリーズとして放映することも簡単にできそうなのだ。特殊効果も、日本の平均的な超自然TV番組と同じレベル。だが、安倍晴明のドラマは別にTV番組になっているところを見ると、どうもちがうようだ。


良い点は、狂言の大袈裟な様式がアメリカ人にとっては二の足を踏ませるものとはいえ、野村萬斎の演技が十分に物語を進めていくところだ。話は、大上段から振りかぶる正当派、それで世界の終焉モノ、これに、このタイプの映画にありがちな美味しい物がいろいろついてる。


改善の余地はあるが、心底、楽しめる映画だ。しかし、時代が示してきたように、安倍晴明の映画化はこれで終わらないだろう。なにしろ、清明の物語は千年以上も語り継がれているのだ。もうちょっとぐらいは続くってことさ。



最後のかたのレビュー、とても共感しました。バランスのとれた、うまいレビューだなあ。おっしゃる通りに、テレビドラマなら納得できる出来。野村萬斎の演技も同感。


ちらっとプロフィールを拝見したところ、この最後のレビュワーのかたは、すでに千件以上のレビューを書き、そのうち91%が、役立つと投票されている強者でした。でもって、6年間、日本に滞在して、日本学の修士をもっておられる。日本では居酒屋の板前をやりながら、ライターもやってらっしゃったようです。


結論といたしましては。
当初は、「陰陽道を外国人は納得できるのか」という視線でやろうと思っていたのですが、スタート自体が見当違いでした。そもそも納得できる人が見る映画なんですな。当たり前か。日本文化に興味がある人が見るという意味では、この映画、海外のほうが評が甘いかもしれません。



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posted by gyanko at 21:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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