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『陰陽師
とはいえ。そもそもは、岡野玲子のマンガの清明が頭にありますので、野村萬斎って、あなた、そんな 剥き卵 みたいな人、出されても………っていう大変、失敬な気持ちがございました。
いや、本当にすみませんでした。このかた、声が通る。台詞回しが巧い。狂言師だけあって、立ち居振る舞いの型が出来上がってる。育ちの良さを窺わせる気品がある。
多少、作り過ぎてる感じと、役の解釈に体温がありすぎて、清明の浮世離れした風情が足りないかなあとは思ったのですが、そこは原作は原作、映画は映画。解釈が別なのは当たり前。まして、平安貴族をこのぐらい、血を通わせて演じられるかたもそうそういないでしょう。まっこと素晴らしいキャスティングです。
↓岡野玲子の清明 ↓野村萬斎の清明


『陰陽師
小説、マンガどちらとも、筋書きのひねりといい、陰陽道の平易な解説といい、日本のロココとも言える、平安京の雅で退廃的な登場人物たちの描き方といい、読むにはなかなかの贅沢品です。特に女性には、かなり美味しい娯楽作品だと思います。
夢枕獏はとても文章が巧みな人で、妙な例えなのですが、化粧が上手い文章を書かれます。小説によっても、文章や語彙をけっこう変えられるかたで、本当に巧妙。あまり作為的な文章が好きではない人には向かないと思うのですが、私なぞは読みやすくて大好きです。




岡野玲子に至っては、平安の、鬼の棲む夜の色まで描き切るぐらいの表現力です。魑魅魍魎(ちみもうりょう)を描くときに、醜悪さや下劣さをエログロ風味で表現するというのはありがちなんですが、それが一切ない。凄絶だけれども、むしろ見入ってしまうほど優美です。




この2つのメディアで展開されただけでも、おなかいっぱいのクオリティなのに、映画とくれば、よほど陰陽師の世界観というのは日本人のツボに入る妖麗さをもっているんでしょう。
夢枕獏の作品以降(陰陽道の作品でヒットという意味では、荒俣宏
↓博覧強記、荒俣宏の『帝都物語』。陰陽道、風水、奇門遁甲、史実、フィクション、乱れ飛んでの大伝奇小説。ほんっとに面白いです。

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とは言いつつも。
この『陰陽師』、話の大本には「陰陽道」、そうして呪という概念があり、古くから言霊や、万物に宿る霊を受け入れてきた日本人以外には、なかなか理解されがたいところがあります。
毎度のことながら、この『陰陽師』も海外のレビューを紹介するつもりだったのですが、今回は結構、ここが悩みどころでございました。
たとえば、原作にある、源博雅の知人の僧侶の元に出た女のあやかし。これには口がないのですが、原因は、僧侶の経文の「如」という字の口の部分が汚れて消えていたため(←ネタバレです。読む場合は選択反転させてください)ということがわかります。これなんか、海外の人には、ダジャレ、子供騙しにしか思えないんじゃないかという…。
しかも、そのせいもあってか、検索しても、夢枕獏の原作小説も、岡野玲子のマンガも、レビューがない。私的には、映画と、原作か小説のどちらかのレビューが読みたかったんですが……。どうやら翻訳が出てないようです。
映画だけのレビューだと、片手落ちなのもありますし、………正直、キャスティングの良さ以外、映画のほうは、個人的には、観ても損も得もないというレベル。
クライマックスが少し唐突に解決しすぎるのと、要所要所の特殊効果があまりにも……情けない。だったら、見せなきゃいいのになあ。見せるだけが「見せる」ことでもないんじゃないのかなあ、とか思ったりしました。
特殊効果で、醜悪さをあますところなく見せつけてくるゾンビより、単純に、暗がりで「顔を隠した誰か」のほうが怖いってこともあるもんです。
実際、米国アマゾンの『陰陽師』の評価は、『陰陽師』の全17件のレビュー中、
5つ星:6
4つ星:7
3つ星:2
2つ星:2
最も役立つと評価されたレビューも4つ星が中心でした。妥当な評価かなあという気がします。
ここはもう、せっかくなので、陰陽道という、海外から観れば、土着宗教的な主題の作品がどう解釈されてるのかを確認するという意味で、次回、海外レビューを何本かご紹介したいと思っています。
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