2009年06月13日

『陰陽師』- 夢枕獏・岡野玲子・野村萬斎 -

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陰陽師』は夢枕獏原作岡野玲子によってマンガ化され、2001年には野村萬斎主演で映画化されました。夢枕獏の原作も、岡野玲子のマンガも私はかなり好きだったため、映画は当時、映画館へ友達と観に行きました。


とはいえ。そもそもは、岡野玲子のマンガの清明が頭にありますので、野村萬斎って、あなた、そんな 剥き卵 みたいな人、出されても………っていう大変、失敬な気持ちがございました。


いや、本当にすみませんでした。このかた、声が通る。台詞回しが巧い。狂言師だけあって、立ち居振る舞いの型が出来上がってる。育ちの良さを窺わせる気品がある。

多少、作り過ぎてる感じと、役の解釈に体温がありすぎて、清明の浮世離れした風情が足りないかなあとは思ったのですが、そこは原作は原作、映画は映画。解釈が別なのは当たり前。まして、平安貴族をこのぐらい、血を通わせて演じられるかたもそうそういないでしょう。まっこと素晴らしいキャスティングです。


↓岡野玲子の清明             ↓野村萬斎の清明

okano.jpg mansai.jpg


陰陽師』は、原作もマンガも、およそ浮世離れした陰陽師、安倍晴明と、お人好しで無骨な抜け作だけれど、雅楽だけは飛び抜けた才のある源博雅が、宮廷を中心に起こる事件を解決するという連作です。考えようによっては、平安京を舞台にした、探偵物の王道とも言えます。


小説、マンガどちらとも、筋書きのひねりといい、陰陽道の平易な解説といい、日本のロココとも言える、平安京の雅で退廃的な登場人物たちの描き方といい、読むにはなかなかの贅沢品です。特に女性には、かなり美味しい娯楽作品だと思います。


夢枕獏はとても文章が巧みな人で、妙な例えなのですが、化粧が上手い文章を書かれます。小説によっても、文章や語彙をけっこう変えられるかたで、本当に巧妙。あまり作為的な文章が好きではない人には向かないと思うのですが、私なぞは読みやすくて大好きです。


陰陽師(おんみょうじ) (文春文庫) 陰陽師 瀧夜叉姫 (上) 陰陽師 瀧夜叉姫 (下) 陰陽師 夜光杯ノ巻


岡野玲子に至っては、平安の、鬼の棲む夜の色まで描き切るぐらいの表現力です。魑魅魍魎(ちみもうりょう)を描くときに、醜悪さや下劣さをエログロ風味で表現するというのはありがちなんですが、それが一切ない。凄絶だけれども、むしろ見入ってしまうほど優美です。


陰陽師 (13) (Jets comics) 陰陽師 (8) (Jets comics) 陰陽師 (11) (Jets comics) 陰陽師 (5) (Jets comics)


この2つのメディアで展開されただけでも、おなかいっぱいのクオリティなのに、映画とくれば、よほど陰陽師の世界観というのは日本人のツボに入る妖麗さをもっているんでしょう。

夢枕獏の作品以降(陰陽道の作品でヒットという意味では、荒俣宏の『帝都物語』のほうが先だったとは思いますが)、実際、多くの陰陽師モノが描かれているのも、その現れかなあと思います。


↓博覧強記、荒俣宏の『帝都物語』。陰陽道、風水、奇門遁甲、史実、フィクション、乱れ飛んでの大伝奇小説。ほんっとに面白いです。

帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫) 帝都物語 [DVD]


とは言いつつも。
この『陰陽師』、話の大本には「陰陽道」、そうして呪という概念があり、古くから言霊や、万物に宿る霊を受け入れてきた日本人以外には、なかなか理解されがたいところがあります。
毎度のことながら、この『陰陽師』も海外のレビューを紹介するつもりだったのですが、今回は結構、ここが悩みどころでございました。


たとえば、原作にある、源博雅の知人の僧侶の元に出た女のあやかし。これには口がないのですが、原因は、僧侶の経文の「如」という字の口の部分が汚れて消えていたため(←ネタバレです。読む場合は選択反転させてください)ということがわかります。これなんか、海外の人には、ダジャレ、子供騙しにしか思えないんじゃないかという…。


しかも、そのせいもあってか、検索しても、夢枕獏の原作小説も、岡野玲子のマンガも、レビューがない。私的には、映画と、原作か小説のどちらかのレビューが読みたかったんですが……。どうやら翻訳が出てないようです。


映画だけのレビューだと、片手落ちなのもありますし、………正直、キャスティングの良さ以外、映画のほうは、個人的には、観ても損も得もないというレベル。

クライマックスが少し唐突に解決しすぎるのと、要所要所の特殊効果があまりにも……情けない。だったら、見せなきゃいいのになあ。見せるだけが「見せる」ことでもないんじゃないのかなあ、とか思ったりしました。

特殊効果で、醜悪さをあますところなく見せつけてくるゾンビより、単純に、暗がりで「顔を隠した誰か」のほうが怖いってこともあるもんです。


実際、米国アマゾンの『陰陽師』の評価は、『陰陽師』の全17件のレビュー中、

5つ星:6
4つ星:7
3つ星:2
2つ星:2


最も役立つと評価されたレビューも4つ星が中心でした。妥当な評価かなあという気がします。

ここはもう、せっかくなので、陰陽道という、海外から観れば、土着宗教的な主題の作品がどう解釈されてるのかを確認するという意味で、次回、海外レビューを何本かご紹介したいと思っています。



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2009年06月01日

外国人が語る「好きな日本映画」

昨今は、『ザ・リング』や『THE JUON -呪怨-』等のホラー映画のリメイクに始まって、『ドラゴンボール EVOLUTION』やら、『AKIRA』やら、先日お伝えした『沈黙』やら、日本素材の映画がずいぶんハリウッドで取り沙汰されるようになりました。
日本映画そのものも、『おくりびと』がアカデミー外国語映画賞受賞したり、『つみきのいえ』が短編アニメーション賞を受賞したりと、賑やかな話題が続いています。


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今日は、海外フォーラムから「あなたが一番好きな日本映画」という話題を。


●好きな日本映画の投票をしないとなって思ったから、やるよ。まずは僕のお気に入りから。

僕は恐怖映画が好きなんだ。わからないけど、見てるときの感じが好きなのかな。なんか楽しい。

好きなのは、『リング(日本版)』、『案山子〜KAKASHI〜』、『いちばん美しい夏』(この映画はカテゴリが違うけど、同じぐらい好きなんだ。)

みんなの好きな映画はどんなの?


●黒澤明だね。『用心棒』みたいな。アニメ映画は入れていいの? 2本、好きなのがあるんだけど。あとは、カンフー映画がすごく好きだね。


●『ワンダフルライフ』。死後の世界にもっていくたった1つの思い出っていう、すごく考えさせられる話だ。
マルサの女』すごくいい。
Shall We ダンス?』気取ってるけど、これもいい。


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●『リング(日本版)』はほんっとに怖かった。ストーリーと演技が巧く調和してて、素晴らしいアジア映画になった。ハリウッド版は必要ないよ。ハリウッドはもう『ヒューマン・キャッチャー』とか『フレディ VS ジェイソン』みたいなくだらない映画に客の金を浪費させてるんだから。


●私の住んでる場所では日本映画を観る方法がないの。たた1つの方法は、i-net。そうじゃなきゃ、買うの。財布は……空よ。

好きな映画は、『バトル・ロワイアル』、『リング』、『プラトニック・セックス』、『GO』、北野武の映画、『Love Letter』、『Laundry [ランドリー]』、『バウンスkoGALS』。

今のお気に入りの1つは『ラブストーリー』なんだけど、これは韓国映画ね^_^;


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●『バトル・ロワイアル』、好きだ。すごいアクション映画だよね。…『リング』と『AKIRA』も好き。


●残念ながらイタリアでは日本映画は何も観れない。知ってる人がいるなら、教えてくれ。


●『バトル・ロワイアル』はオレの大大大大好きな映画なんだ。日本映画はだいたい好きなんだけどね。北野武の映画は特に好きだ。それから、『リング三部作』、『羅生門』、『山椒大夫』。それと、さっきも言ったけど、北野武のは、『Dolls [ドールズ]』と『菊次郎の夏』だね。あと、『AKIRA』。ぱっと思いつくのはこのへんだね。『火垂るの墓』が素晴らしいって聞くけど、どう?


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●北野武の映画は本当に全部、楽しんでるなあ。いつも前作とは違っているんだよね。『カタクリ家の幸福』は、今まで観た中で一番おかしかった映画の1本だね。もちろん、『オーディション』をはじめ、この監督のホラーもの、ヤクザものは少なくとも一度は観ておく価値があるよ。最近、『PAIN〈ペイン〉』と『バウンスkoGALS』を日本のビデオショップから借りたんだけど、両方とも好きだった。2本とも日本の若者のアンダーグランドなサブカルチャーを描いたものなんだ。あ、それから、フジTVのドラマはいっぱい見るなあ。


●黒澤明の『』だね。それから『梟の城』、『SAMURAI FICTION』、『影狩り』。角川の『天と地と』、『五条霊戦記//GOJOE』。


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●『リング(日本版)』、『仄暗い水の底から』、『バトル・ロワイヤル』は本当に好きだよ。『AKIRA』はオレの人生で一番のお気に入りだ。『老人Z』はカッコいい。あとは……『攻殻機動隊』、『オネアミスの翼』、『CYBER CITY OEDO 808』。素晴らしいよ。


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ジブリのいろいろ。特に『火垂るの墓』。


●『ワイルド・ゼロ』は一番のお気に入りの1つ。…幸せ。『鉄男』は変わってるけど、観る価値はあるよ。カッコいい。


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●『火垂るの墓』はホンットに感動するね。お気に入りの1つ。


●大好きな日本映画は、『バトル・ロワイヤル』、『アドレナリンドライブ』、『AKIRA』、『メトロポリス』、『千と千尋の神隠し』、『修羅雪姫』。


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●オレはこうだ。『エヴァンゲリオン』は最高。黒澤明&三船敏郎『用心棒』、『七人の侍』等。『COWBOY BEBOP』、『バトル・ロワイヤル』、『火垂るの墓』、『SAMURAI FICTION』、『たそがれ清兵衛』、『剣心OAV』。


●『仁義の墓場』、『爆裂都市 BURST CITY』、『仄暗い水の底から』、『七人の侍』。


●『戦国自衛隊』。あとは、あまりに多くて思い出せないよ。


●『七人の侍』はきっとすごく楽しめるよ。素晴らしいストーリーのすごくいい映画だし、もし侍の生き方、行動規範を理解してるなら、この映画をきっとリスペクトするはずだよ。


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●『獣兵衛忍風帖』(訳注:北米で50万本近くを売り上げ、非常に評価も高いアニメ)は最低だね。(悪気はない。…ただ、なんていうか……いい、忘れてくれ)。『千と千尋』はすごくいいよね。


●どうして『獣兵衛忍風帖』がだめなのか教えてくれ。キミが好きじゃないか、これがアニメだから、このトピックには相応しくないってこと?


●新しいお気に入りを書き忘れてたよ。『AKIRA』を3週間前に観たんだ。ねじれた筋書きと支離滅裂なキャラクターがすごく気に入った。いい映画だった。観るべき。カッコいいしね。

『獣兵衛忍風帖』は、オレも同じことを考えてたよ。どうして嫌なのかよくわかんないんだけど。アニメだからだめっていうのはどうかな。ここにはアニメの映画も挙げられてるよ。オレも『るろうに剣心』のOVAや『AKIRA』は大好きだ。『AKIRA』はR指定で、かなりシリアスなんだ。オレは、アニメを映画として考えてるよ。アニメでSFやファンタジー映画は作りやすいっていうのもあるし。


●『AKIRA』がそんなに好きなら、マンガを読むべきだよ。すごくながーーーーいマンガなんだけど、絶対に読む価値はある!大友克洋のアートスタイルは素晴らしいよ。それに、映画はマンガの最初の1/4を描いただけなんだ。その後もっと面白くなるのに。『AKIRA』はオレが最初に観たアニメなんだ(Manga UKから最初に出た)。オレの人生で一番好きなものの1つだよ………

●『鉄男』と『鉄男2』を書き忘れてた。最近、『千と千尋』を観たけど、素晴らしかった!『AKIRA』はもう確実に、古典と言えるよね。


●『鉄男』と『鉄男2』、2、3年前に観たな。えっらいカッコよかった。アート・フィルムって感じ。頭が変になりそうだった記憶がある(笑


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●『殺し屋1』、『ソナチネ』、『リング』がお気に入りだね。『鉄男』と『鉄男2』は1991年以降の映画。そんなに古くないよ。オレは2を薦めるな。最初に観たときは、ドキドキしたよ。


●『BROTHER』がすっごい良かった。





ホラーとアニメは強いですなあ、やっぱり。

観ていないものがけっこうあり、『老人Z』と『鉄男』は観てみようかなあ、と。それと、『仁義の墓場』。知らない映画だったのですが、アマゾンにレビューを読みに行ったら、ひっじょーーに面白そうで、これも「観たいリスト」入り。

こういうのを読んでると、いろいろと得した気分になります。



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タグ:海外の評価
posted by gyanko at 21:00 | Comment(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月16日

外国人は侍が好き - 『七人の侍』から『SAMURAI 7』まで その1 -

もう十数年前になりますが、トルコに旅行に行ったとき、現地の通訳のかたといっしょに夜にお茶を飲みに出かけたことがあります。場所はイスタンブール。公園のような場所にあるカフェだったのですが、もう今となっては風景もうろ覚えです。


すでに閉店時間が近づいており、掃除のためなのでしょう、テーブルの椅子が大分片付けられていたのですが、通訳が促すので、遠慮しつつもテーブルに着席しました。
とりあえずのコーヒーの注文の後、ふと見ると、カフェの隅に、若い学生らしい数人が、やはりまだ、しぶとく残っていました。


静まり返ったカフェ。椅子に座り、一点を見つめて、黙り込んでいる数人の若者。彼らが熱心に見ているのは、カフェのテレビに映っている映画でした。
みなテーブルに身を乗りださせるようにして、本当に夢中で見ており、その光景を私は少し感動して見つめておりました。

あぁ、…やっぱり国がちがっても、この映画の面白さは普遍なんだ、と思ったのです。

そのときのトルコの彼らが見ていた映画が、これです。


七人の侍(2枚組)<普及版> [DVD]



今更、私なぞが説明するまでもない、黒沢明の『七人の侍』。
私もご多分にもれず、この映画が大好きです。何度も見ました。そのたびに、やっぱり面白いと思います。3時間に及ぶ長い映画ですが、無駄な部分は一片もなく、むしろ短くすら思えるほど。



ストーリーはご存知のかたも多いでしょう。毎年の収穫のたびに野武士に襲われ、女や米を強奪されていた村が、野武士と闘うために武士を雇うことになります。雇うと言っても、報酬は腹いっぱい白米が食べれるというだけ。

街へとやってきたものの、当然のことながら武士探しは難航します。やっと見つかったのが、志村喬が演じるところの島田勘兵衛です。しかし、これもまたすんなりと決まらない。戦に倦んでいた浪人、勘兵衛がやっと決心するのは、武士探しに奔走する農民をみかねた、同じ宿の人足が恫喝するシーンからです。人足は、百姓が勘兵衛のために用意した白い飯の入った茶碗を突き出し、言います。


「おい。お侍ェッ、これを見てくれッ。こいつはお前さんたちの食い分だ。ところが、この抜け作どもはなに食ってると思う?ヒエ、食ってるんだ。自分たちはヒエ食って、お前さんたちには白い飯食わしてんだ!百姓にしちゃ、精一杯なんだッ!なに言ってやがんでェッ!」


この後、勘兵衛が7人の武士を集める様が、1つ1つ印象的なエピソードを重ねて描かれていきます。中でも、勘兵衛が、「入口に身を隠して、上段に構えろ。あの浪人が入ってきたら、思い切って打ち込め」と言って、勝四郎に木棒を渡すシーンは有名かと思います。(↓ご存知のかたが多いとは思いますが、念のため。選択して反転させてください。)

勝四郎は戸口脇に隠れ、入ってきた武士に迷わず切り掛かります。
浪人はそれを見事、制しますが、農民のためにともに闘ってほしいという勘兵衛の申し出はすげなく断ります。武士の面子が廃るというわけです。
去っていく武士を眺めやりながら、その腕前に、感服する勝四郎。
「先生、惜しい事をいたしましたなあ。あれほどの剣客を」
が、勘兵衛は微笑するだけで何も言わない。

次に入ってくるのが、片山五郎兵衛です。彼は、戸口にすら入らず、立ち止まり、笑って言います。

「ご冗談を」

勘兵衛はそこではじめて、「うむッ」と唸り、膝を打って立ち上がります。



物語はこの「武士集め」の序盤から、最後の、有名な雨の合戦シーンまで、様々なエピソードを展開させながら進んでいきます。もうほんっとうに胸にささるシーンの連続です。ユル・ブリンナーが入れ込み、リメイクを熱望して『荒野の七人』を製作したというのも、さもありなんです。


荒野の七人 アルティメット・エディション [DVD]


この『七人の侍』、リメイクが大ヒットしたぐらいですから、当たり前のことではありますが、海外での知名度も評価も抜群です。わざわざ紹介する必要もないぐらいなのですが、


米国アマゾンのDVD版のレビュー、465件。そのうち、

5つ星:405件
4つ星:28件
3つ星:4件
2つ星:15件
1つ星:13件


さすがでございます。
参考までに、その中で、比較的短めですが、325人中307人が役立つと評価したレビューを。


評価:★★★★★
このDVDの1:33:1という縦横比は正しい!!!!

これがオリジナルの縦横比じゃないっていう理由で、この傑作を買うなって説得されたりする人が出ないように、このことを知らしめておかなきゃならない。このDVDの縦横比、1:33:1は正しいんだ!黒沢明は、50年代後半になるまで、ワイドスクリーン形式で仕事をはじめてはいない。そうじゃないって主張してるヤツは間違ってる。

これは、誰でも楽しめる、本物の5つ★の映画だ。特に、字幕つきの映画を観るなんて思いも寄らない人々に薦める。素晴らしいアクション・ムービーを探している人には、この映画はチャンスだ。これは、あなたがかつて一度観て、そのまま棚で埃をかぶっている『アルマゲドン』ではない。これは、あなたがこの先も、繰り返し繰り返し、観るであろう1本だ。ジョン・フォードとかの西部劇を愛してる人には、この『七人の侍』が西部劇の古典で素晴らしいリメイクになったと言っておこう。アクション映画が好きではなくても、あなたはこの映画に反応を示すだろう。これは、異文化への洞察と、繰り返し観るごとにますます心惹かれるようになる時間といっしょに、正真正銘の人間ドラマを提供してくれるから。

もちろん、すでにこの映画を知っていて、大好きだという人にも薦める。このDVDの映像は、擦り切れたVHSテープであなたが見慣れてきたものより、もっともっとシャープでくっきりしてる。おまけとして、非常に洞察力のある副音声トラックがついていて、これで日本映画の専門家の解説が聞ける。これは、この、あなたの昔からのお気に入りの1つを観る際の、新しい鑑識眼を育てる助けとなるだろう。



こういうレビューを読むと、軽々しく「あ、私も好きですー、『七人の侍』」とか言えない感じすらいたします。おっかなくて。だって、縦横比ですよ? いいじゃん、ちょっとぐらい画面の長さが違ったって……。って思うのが、私のような素人の浅はかさ。



ましてや、こういうかたに、これから書こうとしている『SAMURAI 7』の話なんぞしたら、「………『七人の侍』のリメイク・アニメ? は?」ぐらいの冷ややかな反応をされても不思議ではありませんな。


それでも、このエントリを書こうと思ったのは、『七人の侍』のアニメ版リメイクと聞いて見たアニメ『SAMURAI 7』が、思った以上に面白かったからです。

『七人の侍』を知らなければ、見ることはなかったろう、『SAMURAI 7』。同じ映画のリメイクである『荒野の七人』とはまた土俵が違う面白みがあります。



次回は、この続きです。



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posted by gyanko at 09:00 | Comment(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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